第参弁
「……」
退屈そうな大きな瞳がこちらを見つめている。
「アンタも食うか?」
「いらない」
眉間にシワを寄せて、少女が答える。
「毎日、毎日。飽きもせずによく食べてられるわね、毒がある実なんかを」
俺は柘榴を齧りながら、
「タダで、しかも盗む面倒が無いんだ。俺にとってこれ以上の物は無いね」
もう聞き慣れてしまった少女の悪態に答え返す。
柘榴寺に柘榴を食べに行くという、何とも奇妙な日課が続いて一週間。
空腹感は今も変わらずだが、こんなに食い繋げたのはこれが初めてだ。
そのことは、取り敢えず良しとして。
一つ、気になることがあった。
あまり、考えてはいけないと頭では思いつつ…
それでも、寺からこちらを見つめる少女の不可解さに疑問を持った。
それは、この気の強い少女が毎日、いつでも、この寺にいるということ。
そこまでは、まぁ百歩譲って良しとして、
問題は、少女が゛全くその場から動いた様子が無い゛ということ。
いつも、空腹で寺の柘榴の木を駆け登れば、低い塀が眼下に見えて、
少し先の、寺の正面の回廊に少女が座って居るのが見える。
不機嫌ながらも少女が話かけて来るので、たわいない話を少しして。
けれど、その間も少女は身じろぎせず座って居る。
まるで鎖でそこに繋がれているみたいだ、と思った。
人形みたいに美しい姿勢のまま。
少女は、その場から動くことをしない。
「………」
俺は開きかけた口を閉じた。
問い掛けようとした疑問を言うべきではないと思った。
お互いに、干渉するべきじゃない。
孤児と華族じゃ、あまりにも住む世界が違いすぎる。
第一、少女がどうなろうと俺の知ったことではない。
他人を思う程の余裕など、俺には無いのだから。




