奇襲 3
先ほどの悲鳴は庭園から聞こえたものだ。
庭園にたどり着くとダリアの花々の中央でリリーがだらりと体を垂らし短髪の男に捕らわれていた。
「リリー様!?」
エレノアの胸がひゅっと鳴り悲鳴に近い声で叫んだ。
最悪な事態が頭をよぎる。
「ご安心なさって。眠っているだけですわ。」
蠱惑的な声に振り向くと扇を口元に当てゆったりとした仕草でイザベル妃が姿を現した。
明らかに何か知っている様子にエレノアは鋭い眼差しでイザベル妃を睨む。
「……ご説明いただけますか?」
エレノアの様子にイザベル妃は愉快そうに声を漏らす。エレノアはその様子に不快そうに眉をひそめた。
「なにか?」
「この状況で全て悟っていただけないかしら」
イザベルはゆったりとリリーを抱える短髪の男の元へと近づく。
「この小娘の命は私たちが預かっているのよ」
「リリー様をどうなさるおつもりで?」
イザベル妃は奥義をぴしゃりとたたむと口元に添えほくそ笑む。
「そうねぇ、ここで殺すのもいいわね。この白い喉を切り裂いて……
もしくは、先ほどのような魔獣の群れに放り込むのもいいかもしれないわね」
イザベル妃はほっそりとした指を無抵抗なリリーの首元をつーっと触れる。
「やはり、貴女があの魔獣を離宮に招き入れたのですか」
「ふふ。いい実験結果が取れてあのセドブルも満足するのではないかしらね」
「……」
「あら。あまり驚かれないのね」
つまらないわと呟きイザベル妃はわざとらしくため息をつく
ヘリオスが復活派と繋がっている時点でイザベル妃と復活派にも繋がりがあると既に察していた。
それよりも今はリリーの安全を確保することが先決だ。
「何がお望みですか?」
「魔族の王クロ様のところへ行っていただけないかしら?」
隣町へ行って来いというような軽さでイザベルは言い放った。
「行ったらリリーは解放していただけますか?」
「……殺さないであげるわ」
「なっ?!」
つまりは殺さないがリリーは解放しないといことだ。
エレノアが抗議の声を上げようとした時だった。
「お待たせいたしました。」
ゴスロリに身を包んだ憎き仇であるメリッサがリリーたちの元へ姿を現した。
「既に王宮の方に魔獣と魔人を放つ用意が完了いたしましたわ」
「ご苦労。王宮に魔族が既に待機していますわ。貴女が私共についていくとおっしゃるなら考えて差し上げますわ。どうしますの。エレノア=ハーヴェイ?」
イザベル妃は傲慢な笑みを浮かべる。
「……いくわ」
エレノアには頷く以外の道は残されていない。
目を閉じると最後に心配そうにこちらを見るルークの顔が頭に残り心のうちで謝った。
ごめんね。ルーク




