旅のはじまり
「ユウ様、御足は傷みませんか?よろしければ私の腕に」
「だっ、大丈夫だから!ジーク、本当に。大丈夫です!」
「なあ、ユウ。あれ、あの木になってる紫の実、なんっていうんだろうな。食べられるかなあ。俺、ちょっととってくる!」
「マルク!あんな遠くの木、道に迷っちゃうから!って、もう見えない。」
「ユウ、ぎんちゃん、てつだう!」
「しばらく、ここで休憩しましょうか。マルクが帰ってくるまで。」
「うん、そうだね、アル。」
「ユウ、あそこの木の陰にユウの好きな花咲いてるよ。見に行こう!」
「うわあ、嬉しい!逢未は探し物の天才ね!」
「ユウ、俺の手つかんで、木の根に足を取られて転びそうだから。」
「ありがとう、未来。行こう!」
「ユウ様、お供いたします。」
「すぐそこだから。お供はいりません!」
マルクに誘われたあの日、答えることなんてできなかった。
だけど、森や国の様子を見たいと言ったマルクがしばらく滞在する間に皆との出来事があって、私も一緒にいきたい気持ちがふくらんできて。
未来が帰ってきた。
あの日のことは忘れられない。
私たちの部屋で未来は人間に変化してみせた。
銀色の長髪、蒼い切れ長の目、背は見上げる程高く腕はがっしりとしていてたくましい。
一瞬拓を思い浮かべてしまった。
全然別人なのに。
「ユウ、俺はずっとユウと一緒だよ。ユウがどこに行っても、人の中で暮らしたくなってもずっと一緒にいられるように、アシュに教えてもらったんだ。
もう絶対1人にしない。ユウが思い出した話を聞いたときからずっと決めていたんだ。
俺はユウを絶対1人にしないって。そのためならどんなこともやり遂げるって。」
「未来・・・。未来!」
ぎゅうっと抱きつくと未来のにおいがした。
土とお日様のにおい。
未来がそおっと抱きしめ返してくれる。
「へへっ。抱きしめるってうれしいな。変化頑張って良かった。」
逢未も未来の気持ちを知っていた。
未来がいない間私を1人にしないようにしてくれていたのも、2人で相談したことだったらしい。
逢未も未来に教えてもらって変化の練習を始めた。
「僕だってユウのそばにずっといるよ!あたりまえじゃない。ちょっと待っててね。僕もすぐ変化出来るようになるからね。」
宣言通り、すぐに逢未も変化出来るようになってしまった。多分苦労したんだろう、未来はちょっとすねた。
逢未も長髪銀髪で未来とよく似た顔。でも、顔つきが知性を感じさせる気がする。どこを見ているかわからない蒼い瞳は心まで透かしてみられるよう。とても静かだ。
身体は、未来と並ぶと少し小さく細身。でも、節だった大きな手は男の人だと意識させられる。
逢未も私を抱きしめて喜ぶから、3人でぎゅうぎゅう抱き合った。
それから、国の人たちにも変化の仕方を伝えて、(やはり誰でも出来るわけではなかったが)変化出来る者がでてくると、私たちの見よう見まねで木工をしたり、料理をしたりする。
変化すると家畜達も怖がらないので、お世話も手伝ってもらえるようになったり。
念願の羊毛刈りも皆でやることが出来た。
アシュの国も変化出来る者がまた増えてもとの生活を取り戻しつつあるみたい。
「やっぱり羊は全・・・半分返して。そのかわりいろいろ教えてあげるよ。」なんて言いにきた彼は、良い笑顔の北狐宰相といろいろ話し合いをしているらしい。
きっとこれから交流しながら、協力しあえる関係を続けていけるだろう。
「変化出来るようになったのですから、人間の高い技術を利用しない手はありません。他にもまだまだ未知のことがありそうですね。
ユウ、貴方もこの国の一員なのですから国のために出来ることは手伝っていただかないと。」
北狐宰相は切れ長の目元が鋭い、小柄で中性的な男性に変化した。やけに色っぽい流し目で私をみつめるから、ドキドキしてしまう。
変化はしないと言ったライオン国王は相変わらず眠そうに「好きなことをやりなさい。」と笑ってくれる。
そして、マルクがいよいよ旅を始めようと皆に言った日、私は一緒に行くことを伝えることができた。マルクはとても喜んでくれた。
もちろん未来も逢未も一緒だ。
「当然です。」
「よろしく御願いします」
ジークとアルも同行することになっていた。
当たり前の一言で。
知らない世界を知る旅はわくわくする。
銀ちゃんがつれて行きたい所をあれこれ教えてくれるので長い旅になりそう。この世界はとても広いらしい。
「ここは貴方の国です。いつでも帰ってきてくださいね。」
皆が見送ってくれた。
大切な人の幸せは私の幸せ。
だから、私は自分の幸せをたくさん積み重ねて大切な人を幸せにしたい。
これからの私たちの幸せな旅に思いを馳せる。
確かに今幸せをかみしめながら。
完
これから楽しい旅がやっと始まります。
胸きゅんの恋愛エピソード(これが一番書きたい)や物語の謎も解明していきたいです。
しばし、時間を挟んで続きを投稿したいと思っておりますが、きりがいいので完結にします。
ここまで読んでくださってありがとうございました。




