援助
アシュの話をまとめ、王の間で話し合う。
国に招くことも出来るが人間に近い生活を送っているカモウ国民は過ごし辛いだろう。
変化する者が少なくても生活には支障がないだろうから、食べ物を分けることにした。
保存のきく山のお芋や山菜をお城の貯蓄分の半分とジークの持ってきてくれたヤギを半分。あちらにも家畜はいるそうなのでやぎの餌やお世話は心配いらないそうだ。物資と交換していい。
ジークの荷物をつんできた荷車と大きなかごに乗せて騎士達が運んでいくことになった。力自慢の騎士達がほとんど出る。
アシュは何度も礼を言って狼の背につかまった。
雪が深くなる前にと、次の朝あっけなく旅立って行った。
しらなかったことにできないと。力になってあげたいと思った。
だけど、この国の獣達の冬が厳しくなってしまった。
雪の中では、作物を育てることも、山菜を探すことも難しい。
冬はどのくらい寒さがきびしいのだろう。春はいつまで待てばやってくるのだろう。
「ユウ様、大丈夫ですよ。」
ジークが自信たっぷりに言うから、なんだかおかしくて。
心が軽くなる。
皆で力を合わせて乗り切ろう。
ジークがとても頼もしく見えて、ちょっとまぶしい。
「うん、そうだね。ありがとう!」
私が笑顔で答えた途端、うろうろとさまよう目と大げさに振る手。
あわてる様子はやっぱりいつものジークで、あの恥ずかしい行動をとられる前に私は逃げ出した。
アルはやっと目を覚ました。
消化のいいように小さく切った山菜とお芋と豆のスープを食べてもらう。
アシュのことは話していない。
それよりも、話さなくちゃいけないことがたくさんあるから。
「アル、私は国には帰らない。ユウ様とともにいると誓ったからだ。
ユウ様は御使い様ではない。だが、他の者達は納得しないだろう。だから、御使いはもういないと伝えにいったのだ。
もし、お前が国にユウのことを報告したら、どうなるかわかるだろう。
頼む、ここで見たことは胸に秘めておいて欲しい。」
ジークは正直に事情を話したし、私も自分のことを包み隠さず全部伝えた。
もし、国に連れ戻されたとしてもなにもできないし、この国でやるべきことがたくさんある今ここを離れる気はないと。
アルは静かに話を聞いてくれた。
そして、一言わかったとうなずいた。
アルは2日も経つとベッドから起きて歩き回れるようになった。
フクロウさんに送ってもらえばマルクの村まで半日で行ける。そこから馬車を使えば安全に帰れるだろう。
なのに、アルはここにいたいと言う。
狩りでもつりでも何でもするからおいて欲しいと獣達に頼み込み、とうとうみんなを説得してしまった。
「ああみえて、言い出したらきかない所があるのです。」
「ふふっ。経験談ありそうですね。」
「はい、それはもう。私が8歳のときからの付き合いですからもう10年共にいますから。」
「ジーク様、私の悪口言っていましたね。」
ひよことヤギの餌やりと、小屋の掃除をしながら軽口を言い合う。
アルもマルクみたい。あっという間にみんなにとけ込んだ。
よく気がついて手を貸してくれるので親しみやすい。
侍従といっても、剣も学問も友に学んだ乳兄弟なので、ジークとはとても気安い。
はじめは私の隣にいるジークとだけ話すみたいなよそよそしい感じだったけれど、だんだん仲良くなれたと思う。
自分のことやジークのことを話してくれるようになった。
アルは公爵家の次男で、10歳のときから城にあがりジークとともに成長した。
家族とは会うことはあっても、親しい気持ちは持っていないと言う。ジークのために勤勉に励み、少しでも役に立ちたい一心で生きてきたんだそうだ。
ジークは子どもの頃から利発で何をやってもすぐに習得してしまう優秀な王子だった。
いつかジークが王としてヨルジャン国をおさめるときにそばに仕えるのが夢だったけれど、王子でなくなってもジークを崇敬する気持ちに変わりはないと胸を張っていた。
そんなアルだからジークの心のうちはよくわかるのだろう。
ときどき残念なくらい威厳が崩れさる言動について聞いてみた。
「ジーク様は王妃殿下を5歳のときに亡くされています。妃殿下はとても信心深い方で毎日教会で祈りを捧げておられました。ジーク様も一緒でした。
ジーク様は妃殿下のことをとても慕っておられました。だから、妃殿下の望んだ立派な王子でいることに努力は惜しまなかったし、民の幸せを守るのは自分の使命だと考えていたのです。
ジーク様は毎日妃殿下に神の御使いの話をしてもらっていたそうです。多分ジーク様にとって一番幸せな思い出です。
そのまま妃殿下亡き後も、ひたむきに王子として振る舞ってきました。
なのに、数年前からの異常気象や天変地異は誰にもどうしようも出来ない状態でした。王子は本当に心を痛め、なんとかしようと懸命でした。
国の憂いから救ってくれた貴方に傾倒してしまったのは自然なことだったのでしょう。
そして、多分、妃殿下亡き後初めて心動かされた存在が貴方なのです。
卵から孵ったひなが初めて見た者を親だと思い込むように、貴方を慕いそばにいたいのだと思います。
貴方を慕う心は王子としてのあり方とは全然別のもので、ジーク様も多分戸惑っているはず。
でも、貴方と関わるときのジーク様はとても幸せそうで。おかしな言動はありますが、私は良かったと思っているのです。
だから、多少のことは目をつむってあげてください。
そして、ジーク様をよろしくお願い致します。」




