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明日は  作者: 白い花びら
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アシュの話

 「あの者のおかげでアルは助かったのですね。」

 「はい。話は、」

 「聞いていました。純粋な親切ではなかったとはいえ、結果として命を救っていただいたことにかわりはありません。」


 アルはジークのベッドで休んでいるそうだ。

 目を覚ましたら、温かいスープを作ってあげよう。


 「ユウ様はどちらへ行かれるのですか?」

 部屋に戻るのではないとわかって聞いている。いつもと違う、王子を務めていたときの顔だ。


 「宰相の部屋に。アシュの話をもっと良く聞きたくて。」

 「話を聞いて手を貸すおつもりですね。」

 「うん、何が出来るかわからないけど、知らないふりはできないから。」

 

 ジークはだまって私の顔をみつめる。


 真剣な表情をしているときのジークはおとぎ話に出てくる王子様みたいだ。

 輝く金髪に蒼い瞳。切れ長の目元はするどく、薄い唇がひきしまると凛々しい。今ははずしているが、腰に剣を履き、白馬に乗る姿はまさに王子そのものだった。

 残念な行動をひいても、おつりがくる。

 私は今までこの人をちゃんと見ていなかったことに気がついた。


 「私もお供しましょう。」






 宰相の部屋も広い。

 文官達と相談したりするかららしい。壁一面に資料や本が詰め込まれている。

 

 2人は窓の近くに座っていた。


 「国民はもとは5万ほどいたか。今は2万程度だ。こことは違って草食のものが多い。身体も俺のような小さなものからここで言う子ども達くらいまで。

 その分多産なんで食料はどんなにあっても困らない。」

 「なるほど。」

 「冬を越すためには他にも生活物資を人間の国から買い求める必要があるんだ。売れるものか交換出来るものを見つけるか作るしかない。できたら、それも援助して欲しい。」

 「人間の国にとって価値のあるものですか。」

 「あの、私も質問しても良いですか?」

 「どうぞ。」

 「カモウ国はどんな生活をしていますか?人間との交易は具体的には何を?」

 「ああ、もう、ほとんど人間と一緒だ。家に住み、畑や家畜を育てて生活をしている。家畜は主に羊と蚕。毛を刈って売る。蚕の繭からは貴重な絹がとれるから高価で売れる。

 変化したものが細かい作業をし、人間との交渉をしていた。

 変化出来ないものも出来ることを手伝うが主に食べ物を集めることくらいか。」

 「では、この国ではどうですか?この冬だけ住みうつることはできますか?」

 「ああ!?ううん、どうだろう。いけるか?肉食のいる国は危険がいっぱいだろ?だが、食べ物がつきればそれこそ命はないし。ううう。寝床が草でも、土でも、昔はそういう暮らしだったって聞いたことあるし。でも、女どもはうるさそうだし。・・・。」


 ぶつぶつとつぶやき出したアシュを横目に私たちは視線で会話する。

 (単純に移り住んでもらって食べ物を分け合うのはむずかしいかもしれません)

 (身体は小さくても食料はたくさん必要なんだ)

 (人間生活からサバイバル生活かあ。確かに女子どもにはつらいかも)

 

 「話は大体わかりました。我が国の状態をしっかり把握してから検討します。しばらく時間をください。」

 「ありがたい。よろしくお願いします。」


 文官を呼び集める宰相の部屋を出ると、アシュを連れて部屋をうつる。

 ジークの部屋はアルが眠っているから、私の部屋に連れてきた。


 土の上、干し草に埋もれて子ども達と3人で寝ていたところに今は木で組まれた大きなベッドがある。マルクが作ってくれた。

 カラスが持ち帰った一つしかないベッドはジークに使ってもらっていたから。


 生活しやすいように、テーブルも椅子もかんたんなクローゼットもマルクが作ってくれた。窓辺にはいくつかの植物も植えてある。

 私のそばに残ってくれた精霊達が過ごしやすいように。


 テーブルにはいいにおいのする花が生けてある。

 暖炉の火を大きくしてお湯を沸かす。


 ハーブに似た草で作ったお茶をいれると、さわやかな香りが広がって落ち着いた。


 「なあ、あんた、人間なのになんでここにいるんだ?」


 アシュは私が神の御使いと呼ばれていたことを知らない。


 「この国に救ってもらったの。

 だから、恩返ししたくて手伝ってる。」

 「ふうん。じゃあ、あんたは?」

 「私もだ。私の敬愛するこの方のそばにいるためにこの国の役に立ちたいんだ。」

 「人間の国から来たんだろう。辛くないのか、こんな生活。

 人間ならもっと楽してうまいもの食べて楽しく生きられるんじゃないのか?」

 「そうかもしれないね。でも、私はこの国の生活が気に入ってるの。がんばれば頑張っただけ皆が喜んでくれる。大好きなものたちの力になれるって、凄く幸せなんだよ。」

 「へええ、そんなもんかなあ。」

 「ユウ様の美しい心に私は・・・私は・・・」

 「ジーク!!アル、アルの様子見てきて!今すぐ!!」

 「はい、行って参ります。」


 よし!なんとかごまかせた。


 「あんたさあ、へんなヤツだな。」

 「変?」

 「普通、他人のためなんかじゃなくて、自分のために頑張るもんじゃねえの?

 俺はそうだなあ。うまいものは独り占めして腹一杯食べたいし、めんどくさくても自分が生きるためだから働くんだ。誰かが俺のためにうまいもの持ってきてくれるなら一日中遊んで暮らすぜ。」

 「ふふっ。アシュこそ言ってることとやってることちがうんじゃない?」

 「ああ?」

 「だって、アシュは変化して国を出て行けたのに、こうやってこの国にやって来ているじゃない。食べ物どころか命をかけて。」

 

 アシュは絶句し、動かなくなった。

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