未来と逢未
未来と逢未は男の子だ。
体が大きくなるにつれて筋肉質なたくましい体になってきた。
走るのも速いし、力も強い。
それで、気持ちの機微に聡く思いやりがあるなんてお母さんの私じゃなくても、褒め倒したくなると思う。
先に生まれた大きな子ども達も今では対等にしてくれている。
女の子達は意識している行動をとるようになった。
体をなめ合ったり、食べ物を運んだり。
男の子は女の子を巡ってけんかしたりもする。
通常、春に生まれた子ども達は冬になる前に大人になる。
つがいを求め、求愛し春にはもう親になる。
生まれの遅い子達はまだ、そこまで心の成長がないのだろう。
求愛の行動をとる異性を意識する様子は今の所まだない。
愛するつがいを見つけて幸せになってほしいと願う。
でも、もう少し子どものままでそばにいてほしいとも思ってしまう。
こちらに来て初めて出来た家族。
記憶を取り戻した私は、その家族とまた離れてしまうことを心のどこかで恐れている。
「拓」
「なあに。ユウ」
思わず漏れた名前に返事が返ってきた。
未来がすりよる。
「ちがうの、ごめんね。なんでもないの」
まだ残る子ども特有の大きな瞳をのぞきこんで頭をなでる。
首に抱きつくようにして届く所までなでていく。
未来が気持ち良さそうに目を閉じる。しっぽがゆらりとゆれて、ときどき私をかすめていく。
逢未も体を寄せてきた。
2人を両腕で抱え込む。
きゃっきゃとはしゃぐ2人の暖かい毛並みに顔を埋めて、大きく息を吸い込んだ。




