第2章-9
エリス
「アスナさん!」
エリスが、必死にバルガンに体当たりをしかける。
エリス
「うっ・・・」
逆に鎧の衝撃でエリスがよろめく。
バルガンが一瞬エリスに目を取られた。
バルガン
「なんだ、お嬢様?」
「そんなに死にてえなら・・・」
「お前から殺してやるよ!」
斧を振るう。
しかし、カイが間一発でエリスを抱き抱え、バルガンの射程外に出る。
エリス
「カイさん・・・」
カイ
「無茶しすぎだ!」
「けど・・・ありがとう」
エリスは少しほっとした様子で、抱き抱えるカイの袖を掴んだ。
アスナも何とか立ち上がり、カイ・エリスに合流する。
アスナ
「ハァ・・・ハァ・・・」
「ありがとう、エリス・・・」
「助けられちゃったわね・・・」
アスナは息を切らしながらエリスに声をかけた。
アスナ
「さすがに・・・」
「剣も魔法も効かないのは・・・」
「やっかいね・・・」
バルガン
「ふん」
カイ
「いい案はないのかよ、アスナ・・・!」
アスナはバルガンを見ながら話す。
アスナ
「そうね・・・」
「!」
アスナはあることに気づく。
アスナ
「カイのあんたの”斬撃を飛ばす攻撃”、あれは・・・」
「かき消されず届いていた・・・」
「そうよね?」
カイ
「ああ・・・」
エリス
「確かにそうでしたわね・・・」
カイ
「けど・・・全然効いてなかったぞ?」
アスナ
「・・・」
「全然効いてない・・・」
(そう・・確かに・・・効いていなかった)
(いや・・・だからこそ・・・!)
アスナの目に光が灯った。
アスナ
「・・・いけるわ」
カイ
「!」
「さすが!」
エリス
「そんな・・・どうやって・・・」
アスナ
「2人とも、聞いて」
ーーー
アスナは何かこそこそ2人に話した。
バルガンはそこ切りかかる
バルガン
「何を考えているかは知らんが・・・」
「無駄だ!」
カイはバルガンの攻撃を剣で受け止める。
カイ
「うっ・・・」
その間にアスナはエリスを抱き抱え距離を取る。
バルガン
「ちっ・・・」
「だりいな・・・!」
アスナ
「カイ、いける?」
カイはバルガンの斧を何とか押し返す。
「!」
カイ
「ああ・・・!」
バルガンが一瞬怯んだすきに、カイはアスナとエリスに合流する。
バルガン
(この小僧・・・!)
カイ
「よし・・・」
「行くぜ・・・アスナ!エリス!」
アスナ
「ええ!」
エリス
「が・・・がんばります!」
ーーー
カイは、集中しバルガンを見据える。
カイの剣が、白く輝くオーラを帯びていく。
カイ
「いくぞ・・・!」
アスナ
(ボルジックの剣を折った時と同じ・・・)
(やっぱりカイの剣は・・・)
(カイの想いに応えている・・・?)
カイは足元の床を叩き割りながら凄まじい勢いで切り込む。
カイ
「うおおおおおお!!」
【無術・白閃!!】
バルガン
「ふん」
「まだ分かんねえのか?」
バルガンは静かに構える。
バキィイイイイン!
と大きな音を立て、カイの斬撃とバルガンの鎧がぶつかる。
身長の低いカイの斬撃は、巨漢であるバルガンの腹の部分の鎧で受け止められた。
ビリビリという衝撃を感じながらも、バルガンは軽い様子で話す。
バルガン
「だから言っただろう?」
「何をやっても無駄だと!」
バルガンの話を聞く間もなく、カイは再度間合いを取った。
バルガン
「懲りん奴だ・・・」
カイ
「まだまだぁ!」
カイは少し後退してから、助走をつけてバルガンに切りかかる。
カイ
「おらあ!」
カイは叫び剣を大上段に構え、先ほど以上に集中して飛ぶ斬撃を放った。
【無術・飛月!!】
三日月のようなシルエットの、飛ぶ斬撃がバルガンに飛ぶ。
バルガン
「バカか・・・?」
「効かねえって・・・」
「言ってんだろ!」
バルガンは余裕の様子で構える。
しかし、それに気にせずアスナが叫んだ。
アスナ
「エリス!」
「今よ!」
それと同時に、背後で魔力を練り上げていたエリスが鋭く声を上げる。
エリス
「はい!」
ビュッツと大きな音を立て、エリスの放った猛烈な旋風が、空中を飛ぶカイの斬撃を包み込んだ。
風は刃がカイの飛ぶ斬撃を猛烈なスピードで後押しする。
アスナ
(さっきは効かなかった飛ぶ斬撃・・・)
(その斬撃は消せなかった・・・)
(でも一度効かなかったが故に・・・)
(そこまで警戒しないはずよね!)
バルガン
「なっ……!?」
先ほどまで余裕を崩さなかったバルガンの顔に驚愕が走る。
暴風を纏った斬撃が再び胸甲に激突する。
今度は弾かれることなく、先ほどカイが切り込んだのと同じ位置の、重厚な鎧を凄まじい力で圧迫した。
バルガン
「ぐ、おおおおっ!」
バルガンの巨躯が初めて後ろへ下がる。
すかさず、アスナが後退したバルガンに距離を詰める。
アスナは、全神経を極限まで集中させる。狙うはバルガンの鎧の”先ほど飛ぶ斬撃を受けた”箇所。
アスナ
(私たち3人の中で、最も1点の破壊力がある攻撃・・・)
アスナ
「——はあっ!」
放たれたのは、アスナが持つ中で技で最も重く、最も鋭い一点突破の回し蹴り。
衝突の瞬間、戦場にキィィィィィンと耳を劈くような高音が響く。
ズキッ!
アスナは回し蹴りをした反動を強く足に感じた。
アスナ
「うっ・・・」
(さすがに硬いわね・・・)
(でも・・・)
(さっきの斬撃を受けた箇所を狙い撃てば・・・)
バキ・・・バキキ・・・
バリィン!
アスナが打撃を入れた一箇所、が砕け散り、バルガンの心臓部へと通じる「穴」が口を開く。
バルガン
「……バカな......」
「くそ.....帝国王から授かったおれの鎧が……」
愕然とするバルガン。
目の前に立つエリスに気づくのが一瞬遅れる。
アスナ
(今しかない・・・!!)
「エリス!!」
エリス
(ありがとう・・・アスナさん)
「はい!!」
エリスは無我夢中で、手の中に集めた風の塊をバルガンに向ける。
エリス
「やー!!!」
エリスの全魔力を込めた風の弾丸が放たれる。
それはただの魔法ではない。カイが道を切り開き、アスナが扉をこじ開けた、その先に捧げる終止符。
【風術・円旋突!!】
螺旋を描く緑の光弾は、寸分の狂いもなく鎧の穴へと吸い込まれた。内部で荒れ狂う風の圧力がバルガンの巨躯を内側から破壊し、光の奔流となってその背中へと突き抜ける。
バルガン
「が……はっ……あ……っ」
絶叫が、吹き荒れる風の中に消えていった。
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