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婚約破棄されたので、王宮を出て制度を作り直します ~王国の財政を握っていたのは私でした~  作者: 月守いとは


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第96話 段階的透明

 内陸代表との会談から二日後。


 ハルフェン本部では、新たな設計案がまとめられていた。


『簡易公開モデル(仮称)』


 完全公開とは別の、段階的枠組み。


 ・最低限の財務健全性指標

 ・主要取引履歴の要約表示

 ・外部監査による年次確認

 ・負担軽減型の簡易入力様式


「完全な三層表示ではありません」


 ヴァルドが説明する。


「ですが、信用の土台は示せる」


 アルノーが付け加える。


「参加は任意」


「だが、市場は“参加意思”を評価する」


 エリシアは資料を読み込む。


 透明性は二択ではない。


 全面か、非公開か。


 その間に、段階を作る。


「公開は基準になった」


「ならば、基準に段差をつける」


 単純な緩和ではない。


 信用形成の入り口を広げる。


「負担は?」


「王国補助を限定的に」


「長期的には、自走可能」


 沈黙。


「批判は出ます」


 ヴァルドが言う。


「甘い、と」


「出るでしょう」


 エリシアは頷く。


「だが、排除よりは包摂」


 数日後。


 王宮で設計案が提示される。


 レオンハルトは資料を一読し、言う。


「基準を下げるのではないな」


「入り口を増やすだけです」


「最終目標は完全公開か」


「はい」


「だが、到達速度は各地域で違う」


 王子は小さく息を吐く。


「政治的には難しい」


「中心都市から不満が出る」


「自分たちは努力した、と」


「努力を否定しません」


 エリシアは静かに答える。


「だが、努力できる環境は平等ではない」


 沈黙。


「公開は平等ではない」


 王子が言う。


「だが、機会は広げられる」


 エリシアは頷く。


「制度は完成しません」


「常に段階です」


 承認が下りる。


 簡易公開モデルは、試験導入へ。


 ハルフェン。


 内陸代表へ通知が送られる。


『参加希望があれば、支援チームを派遣』


 港の灯りは安定している。


 中心は強くなった。


 次は、外側を支える番だ。


 透明性は、広がる。


 強制ではなく、段階として。

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