表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたので、王宮を出て制度を作り直します ~王国の財政を握っていたのは私でした~  作者: 月守いとは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/95

第73話 攻めない戦い

 多国間透明性協議が始まった。


 王国。

 ノルトラント帝国。

 西方連邦。

 南海公国。

 東境同盟。


 五カ国が、同じ形式の統計を卓上に並べる。


 依存率。

 資本流動。

 港湾集中度。

 中規模団体耐性。


 かつては機密だった数値が、

 今は比較可能だ。


「攻撃は可能です」


 カイが小声で言う。


「だが、反撃も可能です」


 公開は侵入口でもある。


 だが、対称化すれば――


 攻めれば自らも晒す。


 それが抑止になる。


 会議室。


「帝国は輸送依存率を分散中」


「王国は中規模耐性を引き上げ中」


 互いに改善計画を提示する。


 競争はある。


 だが、破壊ではない。


「攻めない戦いですね」


 ヴァルドが呟く。


「攻めれば自分も痛む」


 エリシアは静かに言う。


 相互依存。


 それは、戦争を不利にする構造だ。


 夜。


 イグナーツが報告を受ける。


「五カ国間での資本移動は安定」


「極端な流出入は減少」


 彼は淡く言った。


「均衡が機能している」


 ハルフェン港。


 灯りは以前よりも落ち着いている。


 熱狂ではない。


 だが、持続している。


 エリシアは記録帳に書く。


『透明性は、攻撃を難しくする』


『攻めない戦いは、最も強い』


 多国間透明性枠組みは、正式に発効した。


 名称は簡潔だ。


『公開連携協定』


 理念は単純。


 ・対称公開

 ・段階的開示

 ・依存分散義務

 ・緊急時協議条項


 完全な平等ではない。


 だが、片側優位でもない。


 市場は即座に反応した。


 投資は複数国に分散。

 極端な依存は減少。

 短期利益はわずかに下がる。


 だが、変動幅は縮小。


「利益は減りました」


 商会連合理事が言う。


「ですが、破綻確率も減っています」


 マリアンが応じる。


 均衡は、派手ではない。


 だが、崩れにくい。


 王宮。


「これが最適解か」


 レオンハルトが問う。


「最適ではありません」


 エリシアは答える。


「現時点での均衡です」


 最適は変わる。


 構造は揺らぐ。


 だから、公開は続く。


 イグナーツは去り際に言った。


「帝国はこの均衡を尊重する」


「尊重が続く限り」


 それが現実だ。


 信頼は永遠ではない。


 だが、構造は残る。


 港の夜風は穏やかだ。


 公開は、港から始まった。


 婚約破棄のあの日、

 エリシアは何も持っていなかった。


 ただ、設計だけがあった。


 今。


 公開は国境を越えた。


 王国の制度だったものが、

 多国間の均衡装置になった。


 だが、完成ではない。


 均衡は、常に揺れる。


 依存は再び集中する。

 資本はまた動く。

 国家は利を求める。


 それでも。


 公開は残る。


 選択として。


 王宮の回廊で、

 レオンハルトが静かに言う。


「あなたを追放したことを、後悔している」


 エリシアは首を振る。


「必要な出来事でした」


 あの破棄がなければ、

 設計は生まれなかった。


「これからも続けますか」


「はい」


「完成はしませんから」


 王子は微かに笑った。


 港の灯りが揺れる。


 公開は正義ではない。

 理想でもない。


 だが、選択だ。


 選び続ける限り、

 制度は進化する。


 第5章・了

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ