第70話 相互透明性協定
帝国からの正式回答が届いた。
『条件付きで相互透明性協定を受諾』
会合室に、静かな緊張が走る。
条文は慎重だった。
・主要三産業の依存率公開
・港湾収支の四半期報告
・中規模団体資本耐性の統計共有
・緊急時開示の相互同意制
完全公開ではない。
だが、片側だけでもない。
「対称です」
ヴァルドが確認する。
「ええ」
エリシアは静かに頷く。
共同管理案は、
この協定と同時発効が条件となった。
つまり――
一方的な侵食はできない。
帝国も、自らの構造を晒す。
王宮・調印式。
レオンハルトとイグナーツが並ぶ。
「透明性は、理想ではない」
王子が言う。
「均衡装置だ」
イグナーツが応じる。
「均衡は、抑止になる」
署名が交わされる。
筆が止まった瞬間、
港の鐘が鳴った。
ハルフェン。
公開記録板に新項目が追加される。
『相互透明性協定・発効』
帝国側データが表示される。
王国と同じ形式。
比較可能。
市場が動く。
帝国の港湾依存率も、
実は偏っている。
中規模資本耐性は、
王国より低い分野もある。
「……均衡ですね」
アルノーが呟く。
完全な勝利ではない。
だが、一方的ではなくなった。
イグナーツは、去り際に言う。
「あなたは、防御を覚えた」
エリシアは答える。
「公開は、防御にもなる」
「だが、覚えておいてください」
イグナーツの声は静かだ。
「透明性は、常に緊張を伴う」
彼は去る。
夜。
港は明るい。
だが、以前と同じではない。
公開は国内制度から、
国際均衡装置へ進化した。
エリシアは、記録帳を閉じる。
『第5章前半結論:
透明性は武器にもなる
だが、対称にすれば抑止になる』
第5章は、均衡を得た。
だが、物語は終わらない。
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