第59話 循環か淘汰か
採決前夜。
公開枠組み会議室には、まだ灯りが残っていた。
大半の参加者は帰ったが、
中央の卓に二人だけが向かい合っている。
エリシア。
カイ。
「あなたの指数は、よく出来ている」
カイが静かに言った。
「効率を否定していない」
「否定する必要はありません」
エリシアは答える。
「効率は強い」
「だが、足りない」
短い沈黙。
「あなたは、淘汰を恐れている」
カイは言う。
「いいえ」
「では、何を守ろうとしている」
エリシアは、ゆっくりと答えた。
「循環です」
カイの目がわずかに細まる。
「淘汰は直線です」
「循環は円です」
「直線は速い」
「円は続く」
静かな応酬。
「私の父は、崩壊した」
カイがぽつりと言う。
「淘汰が遅れたせいだ」
「遅れたのではありません」
エリシアは言った。
「隠されたのです」
沈黙。
「公開があれば、
崩壊は防げたかもしれない」
「ええ」
「だが、公開があっても、
効率がなければ破綻する」
「ええ」
二人は、初めて同時に肯定した。
「だから私は、最適化を選ぶ」
「だから私は、時間を組み込む」
カイは問いを投げる。
「失敗確率の高い団体を、
いつまで待つのですか」
「待ちません」
即答。
「改善速度が鈍れば、指数は下がる」
「淘汰は起きる」
「はい」
「では違いは何だ」
エリシアは、はっきりと言った。
「猶予です」
制限即断ではなく、
改善評価を挟む。
「挑戦が消えると、市場は縮む」
「縮小は効率的です」
「衝撃に弱い」
視線が交差する。
「あなたは強さを求める」
「あなたは持続を求める」
カイは、淡く笑った。
「強さなくして持続はない」
「持続なくして強さは残らない」
外では、港の灯りが揺れている。
「明日、決まります」
カイは言う。
「ええ」
「あなたの指数が採用されれば、
効率は遅くなる」
「ですが、壊れにくくなります」
長い沈黙。
やがて、カイが立ち上がる。
「私は敗北を恐れません」
「私も」
「重要なのは、制度が進化することだ」
エリシアは、静かに頷いた。
「ええ」
淘汰か、循環か。
答えは、明日出る。
第4章の緊張は、頂点に達した。
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