表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたので、王宮を出て制度を作り直します ~王国の財政を握っていたのは私でした~  作者: 月守いとは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/30

第15話 真似された改革

 王都の会議室は、久しぶりに活気づいていた。


「港湾効率化の成功例を参考にする」

「補助金制度を簡略化し、物流を一本化する」

「現場判断を減らし、数値基準で管理する」


 机の上に並ぶのは、聞こえのいい言葉ばかりだ。


 第一王子レオンハルトは、集まった官僚たちを見渡し、満足そうに頷いた。


「ようやく、前に進めるな」


 それは、彼なりの決意だった。

 エリシア・フォン・ルーヴェルがいなくとも、王国は変われる。

 そう示したかった。


 宰相ヘルムートは、資料に目を落としたまま口を開く。


「……この改革案は、どこまで理解した上で作られたものですか」


「結果が出ているではないか」


 王子は即答する。


「シュタインベルクでは、港湾が立て直された。

 数字も揃っている」


「数字は、切り取ればいくらでも整います」


 宰相の声は、低かった。


「背景となる制度や、人材の配置は――」


「時間がない」


 王子は言い切った。


「民は結果を求めている。

 遅れは、象徴の価値を下げる」


 その言葉に、誰も反論できなかった。

 象徴。

 それは、王子が最後まで手放せない概念だった。


 改革案は、即日で通達された。


 港湾、倉庫、地方の流通拠点。

 すべてに、新しい基準が導入される。


 ――“効率の低い工程は、切る”。


 数日後。


 地方都市レイデルの倉庫では、混乱が起きていた。


「この基準だと、うちは回らない!」

「人員が足りないんだ!」


 現場監督が声を荒げるが、通達は変わらない。


「基準を満たさない場合、補助金は停止する」


 理由の説明はない。

 ただ、数字だけが突きつけられる。


 そこへ、王国監査局の若手監査官――クレア・ミルトンが訪れていた。


「……基準値の算出根拠が、不明瞭です」


 彼女は、資料をめくりながら眉をひそめる。


「この地方では、地形条件が違う。

 同盟港と同じ数値を当てはめるのは――」


「決定事項です」


 役人は、淡々と答えた。


「例外を作れば、制度が崩れる」


 その言葉に、クレアは言葉を失った。


 制度は、守るためにある。

 だが、誰を守る制度なのか。


 夜、王都に戻ったクレアは、机に向かい、報告書を書き直していた。


『改革案は、制度設計の一部のみを抽出したものであり、

 現場条件への配慮が不足している』


 それは、あまりにも正直な文章だった。


 翌朝。


 その報告書は、差し戻された。


『感想ではなく、数値で示せ』


 短い一文だけが、赤字で書き添えられている。


 クレアは、深く息を吐いた。


 ――同じだ。


 エリシアがいた頃と、何も変わっていない。


 その頃、ハルフェン。


 エリシア・フォン・ルーヴェルは、港湾データの更新を眺めていた。


 数字は、相変わらず完璧だ。


「……王国が、動き出しました」


 ヴァルドから届いた簡単な報告。


 エリシアは、少しだけ目を閉じた。


「そうですか」


 止めるつもりはない。

 止められる立場でもない。


 だが――


 帳簿の余白に、短く書き込む。


『王国:模倣改革開始

 理解度:低』


 それは、警告でも批判でもない。

 ただの記録だ。


 制度は、真似できる。

 だが、思想までは真似できない。


 その差が、どこで露呈するのか。

 それを、彼女は静かに見届けようとしていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ