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082 奪われた声援

「はあっ、はあっ、はあっ……」


 残されたのはスキルを撃って息のあがっているナオと、致命的な被害を与えるところだったスキルを無事にいなし終えたクバロットの二人だけだった。


「ちゆちゆぅ、お前の本気は伝わってきたぜ。だが、今ので確信した。お前は実戦経験が足りない。こんな人の多い場所であれほど広範囲のスキルを使ったらどうなるかなんてすぐにわかることだ。まあ、それを考える余裕がないまでに追い込んだ俺の責任でもあるがな」


「はあっ、はあっ、ろっちんだって、使ったじゃないか」


「【スターライト】のことか? よく考えろよ。あれは空から下に向けて撃っただろ。お前みたいに観客を巻き込むようには撃っていない」


「そ、そう言えば……」


「俺には状況を考えた上で、お前を御する余裕がある。だがお前にはそれが無い。どうだ? 俺との差が分かるか?」


「たまたまそうなっただけだ! そのことで君が俺より強いとか、ちゃんちゃらおかしいよ。勝負は最後までたっていたものが勝つ。だから、そうなるまで殴り続ける。そして最後までたっているのは俺だ!」


「負け惜しみだな。次に同じ状況が起こったら、お前はまた同じことをするだろう。自分が勝つために観客を犠牲にしてな。それが本当に強者と言えるのか?」


「うっ……」


「反論できまい。それはお前が弱いからだ。その弱さゆえに何かを得るには何かを捨てなければならない。お前は教え子を取るために観客を捨てたのだ」


「た、確かに……。俺は今も全力で戦っている。そうじゃなければろっちんに勝てないからだ……。戦いながら教え子たちか観客か選べって言われると……」


「俺なら両方取れる。お前とは違って強いからだ。そしてお前は俺と違って弱い。選ばなければ何も得ることはできない。そしてお前は教え子を選んだ。なに、それは悪いことじゃない。力なきものの必死な生き様だ」


「俺は……弱い……」


「そうだ。お前は弱い」


「だから選ぶことしかできない……」


「そうだ。お前が選ぶのは観客か? それとも教え子か?」


「俺が選ぶのはもちろん教え子だ! たとえ観客を犠牲にしたとしても、あの子たちは救って見せるっ!」


 今までの困惑した表情も声も見当たらない。

 決断を押し通してやるいという、威勢が良く会場中に響き渡るほどの強い声。


『さて、見事にクバロット選手の話術にハマってしまったたクランク先生ですが、観客たちの声は好意的では無いようです。ちょっと聞いてみましょうか』


赤毛のスキル開拓者(レグ・ベリル)っていやあ、俺たちの国の顔と言ってもいいんだが、まさかあんな自分勝手なやつだったなんてな』

『自分の事しか考えてない典型的な脳筋武芸教師って感じ? 自分の子供はあの先生のクラスには入れたくないなって思っちゃいますね』

『帝国の皇帝ってかっこいいのね。立派な為政者の風格があるわ。まだご結婚なされてないのかしら。私、立候補しちゃおうかな』

『そう言えば、うちの王子も根暗そうだし、帝国のほうがこれから栄えるんじゃないか?』


『らっざーな、らっざーな、らっざーな!』


『ここにきてラザーナコールです。クバロット選手にとってはアウェーのはずが、一瞬にして雰囲気を逆転させました!』


「そ、そんな……」


 会場の変わりように驚きを隠せないナオ。

 

「どうだちゆちゆ、お前が築き上げてきたものを奪われる感覚は。まだこんなもんじゃないぞ。お前は俺にボロボロに負けて這いつくばり、そして教師の地位を失い、俺に特進クラス(ヴァルキュリア)を奪われるのだ。ハーッハッハッハ!」


 格闘戦をしかけるクバロット。心が揺れるまま、それに応戦するナオ。


「ぐっ!」


 心の揺らぎが、動作の精密さに現れ、拳が、蹴りが、肘内が、ナオの体にめり込み、ダメージを与えていく。


「そら、そら、そらそら!」


 ナオも反撃を試みるが、中途半端な反撃は逆に隙へとつながり、さらに多くのダメージを呼び込んでしまう。


『らっざーな、らっざーな、らっざーな!』


 そんな様子に観客たちは大声援を送る。

 すでにナオは悪役。その悪役が正義のヒーローであるクバロットにやられている様が心に大きな満足感を与えているのだ。


『先生、負けないでください!』


 そんな中、唯一のナオ側から応援の言葉が上がった。

 もちろん勝手にマイクを奪ってのことだ。


『たとえ、この会場の全員が敵に回ったとしても、わたくしは先生の味方ですわ』


 そのマイクはメルの手からリクセリアに移る。


『あっ、ズルイですよリクセリア様、私だって味方ですから』

『……リクセリアとメルが敵に回っても……最後は私だけは先生の傍にいるから……』

『ちょっと、アゼートさん! どうしてわたくしが敵に回ることになってるのかしら!』

『そうですよ、ここは三人が団結して先生を応援しないと、ほら、先生、負けないでーって!』

『……それじゃあだめ……』

『なんでですか! 三人じゃだめなんですか?』

『……そうじゃない。……応援の内容が駄目……。……負けないで、じゃない。言うならこう……』

『どう?』

『せんせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 勝ってぇぇぇぇぇぇぇぇ!』


(アゼートの声! あの子がこんなに大きな声を出すなんて!)


 寡黙なアゼートが腹の底から絞り出した声は、観客はおろか、今まさに戦いの中でボロボロにされている最中のナオの耳にも入った。


(かなわないな。あんな風に教え子から言われたら……どんなに相手が強くても、どんなのボロボロでもがんばるしかないだろう?

 そうだ。ちょっと会場の雰囲気に流されてしまってただけだ。たとえ会場の全員が敵に回っても、俺には大切な教え子たちがついてくれてるんだ!)


「何をニヤついているんだよ! 気持ち悪いなっ! そら、これでとどめだっ!」


 十分にナオを痛めつけて、もはや反撃の余力を奪ったと判断したクバロットはとどめの大技を出すために空高くに跳躍する。


(!! このチャンス、逃すわけには行かないっ!!)


 クバロットに続いてナオも宙へと跳んだ。


 先ほど最強の技は軽々と破られた。あれ以上の技をナオは持ち合わせてはいない。


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お読みいただきありがとうございます。

技も知恵も超一級のクバロットにいいようにやられるナオ。

だけど彼はまだ終わらない。なぜなら主人公だから!

さあぶちかませ、あの技を! 次回をお楽しみに!

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