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十節 賢者の石を手に入れに来ました

「ハルさん、まだ歩くの?」


「うるさい」


 俺の文句をハルは一言で斬り捨てる。


「暗いし、寒いし」


 洞窟の中を松明を持って俺は歩いていた。


「地下なんだから当たり前だろうが」


 またもハルにバッサリと斬り捨てられる。


「そうなんだけどさ」


【お前は黙って歩けんのか】


 今度はリベラルに怒られてしまう。


《だってさ》


【そういうことだから、鎧を抑えられんのだ】


《はいはい。そうですね》


 いつもの小言に俺はふて腐れた。


【これでは賢者の石は難しいな】


 究極解放を制御する為、俺は賢者の石と呼ばれる神器を探しに来ていた。


《でもさ、何で賢者の石のことを教えてくれなかったんだよ》


【出来れば使いたくはなかったんでな】


 そう返事をするリベラルの声は暗い。


《何だよ、命でも獲られるってか?》


【命ではない。生体エレルギーだ】


 冗談のつもりが、同じようなことを告げられてしまった。


《おいおい、物騒だな賢者の石》


【そういうことだから、軽率に使うなよ】


《了解》


「そろそろ着くぞ」


 大きな石造りの扉の前でハルは立ち止まった。


「ここが大賢者の間か」


「ちょっと下がっていろ」


 ハルはブツブツと呪文を唱え始める。


 呪文をハルが言い終わると、扉の両脇にそびえ立つ石像の目が赤く光った。


「行くぞ」


 真っ暗闇の中へハルは歩き出していく。


「ちょっと待ってくれよ」




「ここだ」


 ハルの言葉を聞き周囲を見回したが、真っ暗な闇に浮かぶ松明が見えるだけだった。


「〈マジックイルミネーション〉!」


 ハルの呪文で、一気に広間を無数の火が照らす。


「すげえ、古代遺跡みたいだ」


 周囲の壁はエジプトみたいな絵や文字がビッシリと刻まれている。


「一郎、あの魔方陣に立つんだ」


 ハルは言いながら広間の中央に大きく描かれた魔法陣を指差した。


「わかった」


 俺は言われるまま魔法陣の中に立った。


「ではいくぞ」


「偉大なる賢者達、我が導きし者を理の入り口へと誘わん」


「おお、眩しいな」


 輝きだした魔法陣に包み込まれ、俺は意識を失った。




「一郎、起きなさい」


 聞き覚えのある声が俺を呼ぶ。


「こ、ここは。あなたは美神さん?」


 目覚めると、俺の前には精神世界で出会った美神が立っていた。


「お久しぶりですね」


「じゃあ、ここは精神世界?」


「いえ、違います。ここははざまの世界です」


「間?」


「ええ。賢者の石は魂を消滅させてしまうので、無の場所にしか存在出来ないのです」


「じゃあ、何で俺もあなたも消滅しないの?」


「あなたは鎧の力で、私は神の端くれなので」


 ニコッと笑う美神がとてつもなく大きく感じられた。


《リベラルさん、賢者の石は使えるの?》


【鎧と一体に出来れば、他への影響は防げる】


《ならいいけど》


「では、試練を始めましょうか」


 美神に促され、俺は真っ白な世界を歩き出した。

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