九節 鎧が暴走してしまいました
「何が起こっているんだ」
一郎が放つエレルギーによる凄まじい風を堪えながらカミシアは叫ぶ。
「どうやらエレルギーが上昇し過ぎて制御出来ていないようです」
クリスが一郎の観測データを見ながら答えた。
「このままでは世界が消し飛ぶぞ」
一郎のエレルギーはどんどん広がって大地を破壊していく。
「うぉーーーーー」
【一郎、しっかりしろ!】
完全に意識を失っている一郎にリベラルが必死に呼び掛ける。
【仕方がないか】
リベラルは僅かに制御出来るエレルギーで人型になった。
「カミシア様、何かこちらに向かって来ます」
クリスが望遠鏡でリベラルに気付き報告する。
「おい、協力しろ」
カミシアの前に数秒足らずでリベラルが現れた。
「誰だお前は?」
武器に手を掛け、警戒しながらカミシアがリベラルに問う。
「私はリベラル。細かい説明は後だ。一郎を救うのに協力しろ」
リベラルは早口でまくし立てて話す。
「何か方法があるのか?」
カミシアはとりあえずリベラルの話を聞くことにして先を促した。
「私が合図を出した瞬間に白騎士の全エナジーを一郎にぶつける」
「そんなことしたら、どんな現象が起きるかわかりませんよ」
リベラルの言葉にクリスは反論する。
「このままではこの世界どころか、あらゆる異世界が滅ぶんだぞ!」
リベラルもクリスに鬼気迫った顔で言い返す。
「それに白騎士もそんなことしたら……」
「クリス様、私なら大丈夫です」
クリスのパソコンから白騎士が通信で会話に入ってきた。
「白騎士……」
「私の命はクリス様に救って頂いたものですから」
「わかったよ。サポートは任せて」
クリスは涙を拭いながら言った。
「では、頼んだぞ」
リベラルはエレルギー体になり、一郎の体へと戻る。
「白騎士、量産型と連動して一郎さんを取り囲むんだ」
覚悟を決め、クリスは白騎士に指示を出す。
「了解です」
白騎士は十体の量産型を従えて一郎を取り囲んだ。
「きゃっ」
激風に飛ばされたクリスをカミシアが踏ん張って受け止める。
「私が支えているから集中しろ」
「わかりました」
「うぉーーーーー」
【一郎、この馬鹿者が】
言葉とは裏腹にリベラルは何が何でも一郎を助けたいと願う。
【準備はいいか?】
クリスの頭にリベラルの声が響く。
《いつでもどうぞ》
【ではいくぞ!】
一郎の体が閃光に包まれ、強力なエレルギーが爆発した。
「白騎士!」
クリスの叫びとほぼ同時に白騎士と量産型のエレルギー砲が放たれる。
嵐のような風の中心で互いのエレルギーがぶつかり合う。
「白騎士!」
光りがおさまってすぐにクリスは走り出す。
「おい、クリス」
カミシアもすぐに後を追いかけた。
「一郎!」
「一郎さん!」
「う、あ、あ……」
まだはっきりとはしていないが、ぼんやりとカミシア達の呼び掛けに一郎が答える。
「白騎士、ありがとう」
そう言ったクリスの右手には白騎士の唯一残ったメモリーチップが強く握られていた。




