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六節 やられちゃいました 

 意識が目覚めたときに、俺の視界には石レンガの天井が映っていた。


《確か、白騎士と修行をしていたよな?》


【不様に負けよって】


《あれ?俺、負けたの?》


 途切れ途切れの記憶を呼び起こす。




 クリスが修理した白騎士と手合わせをすることになって、俺は修行場へ戻った。


「一郎、鎧の力をしっかりと見せてくれ」


 キーアは純粋に楽しみという感じで言ってくる。


「まあ、頑張るよ」


 俺はちょっと気乗りしない返事をした。


《おい、また名前を叫べばいいのか?》


 改めてリベラルに鎧の使い方を聞く。


【たわけ。あれは復活の為に呼ばせただけだ】


《じゃあ、どうすればいいんだよ》


 冷たいリベラルについキレてしまう。


【〈神器一体、着装〉だ】


 俺は、どこかのヒーローが変身するときに叫ぶようなセリフに戸惑ってしまった。


《マジで?》


【さっさと叫べ】


 リベラルから有無を言わせない指示が出る。


《わかりましたよ》


 半ばふて腐れて叫ぶ。


「〈神器一体、着装〉」


 周囲が激しい閃光に包まれる。


 一瞬閉じていた目をスッと開けると、俺は白銀の鎧を身に纏っていた。


「何度見ても神々しいな……プっ」


《キーアさん。今、笑いましたよね?絶対笑ったよね?》


 恥ずかしさがこみ上げてくる。


「一郎さん。では開始しますよ」


 クリスも白騎士のメンテナンスを終えたらしく、こちらに確認をしてきた。


「ああ。俺は大丈夫だ」


「一郎様。全力でいかせてもらいます」


 白騎士はしっかりと戦闘態勢に入っている。


「よし。修行の成果を見せてやる」


 俺も気を取り直して気合を入れた。


「では、……始め!」


 一瞬の静けさの後、キーアの力の入った号令が飛ぶ。


「てぃや~」


 俺は身長差を逆手に取り、巨体である白騎士の懐に潜り込む。


「はぁ!」


 全力でボディへとパンチを叩き込んだ。


 ドーン。


 やった!っと思ったが、白騎士は崩れ落ちなかった。


「こちらの番です」


 その一言を聞いて、俺の意識はすぐになくなってしまった。




《最後はどうなった?》


【白騎士とやらの正拳突きを真正面から受けて吹き飛ばされた】


《そうか。まいったな》


 俺は自分の不甲斐なさに、右腕で目を覆い落ち込む。


【まだ完全に封印は解けていないからな】


《は?》

 

【だから、まだ不完全だと言った】


 思わずベッドから起き上がる。


《どういうことだ》


【鎧にはマナが宿っていない】


 リベラルは淡々と説明した。


《マナって何だ?》


【大地に宿りし生命エレルギーだ。その欠片がエナジーストーンと呼ばれている】


 慣れたつもりだったが、RPG設定に混乱してしまう。


【あの鎧はマナを取り込むことによって全力が出せる】


《それを早く言えよ》


 俺は、またもリベラルにキレた。


【以前のお前には無理だったからな】


 リベラルは全く悪びれることもなく答える。


《どうすればいいんだよ》


【言っただろう。健全な肉体にこそ、健全な鎧は宿ると】


 つい数日前の言葉を思い出す。


《じゃあ、もっと鍛えればいいのか?》


【いや、十分だ】


 あっさりと下されたお許しに拍子抜けしたが、気を取り直す。


《おし。そのマナを手に入れに行こうぜ》


【いいだろう。だが、今日は寝ろ】


「痛ぁ!」


 会話に夢中になっていたが、俺の肉体は傷だらけだ。


【お前は戦闘民族じゃないからな。まずは休養だ】


 珍しくリベラルが優しい気がした。


《わかったよ》


【素直だな】


《だって、健全な肉体にこそ、健全な鎧は宿る。だろ?》


【ふ。口の減らない奴だ】

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