八節 日本に戻って来ました
もう死ぬかと思ったそのとき、輝く光の球が刀を受け止めていた。
「リベラル、無駄な足掻きをするな」
黒兜は鬱陶しいなという顔をしている。
「こいつはお前とは違う。ここで死なせるわけにはいかない」
《リベラルもこいつのことを知っている?》
俺はおぼろげな意識の中、二人のやりとりを見ていた。
「今のお前では私は止められまい」
黒兜は態勢を立て直し、両腕で振り上げた刀を再び振り下ろす。
「精霊をなめるなよ」
光の球は人の形となり、交差させた腕の防具で刀を受け止めた。
「お前、こいつの為に死ぬ気か?」
「言っただろう、こいつは死なせないと」
お姫様のような容姿をした女戦士が黒兜と対峙している。
《リベラルって女だったの?》
こんな状況に合わない疑問が浮かんでしまっていた。
【私は女だ、馬鹿者!】
死に掛けているのに精霊といつも通りのケンカをする。
「寂しいがお別れだ」
黒兜がゆっくりとこちらに歩みだす。
【一郎、短い間だったが楽しかった】
《リベラル?》
こちらに振り返ったリベラルは魔法陣で俺を取り囲んだ。
【巻き込んで悪かったな】
《おい、リベラル!》
【さらばだ】
母親に抱きしめれるような心地よさに俺は眠ってしまう。
「〈トラベルワープ!〉」
リベラルが呪文を唱えると一郎の姿は光となって消えてしまった。
「勇者が生きていても、お前が消えてはお終いだな」
フフフっと黒兜は笑っている。
「私がいなくても、一郎ならお前に勝てるさ」
リベラルの姿は光の塵となって天に昇っていく。
「まあいい。あの世で俺が世界を破壊するのを見物していろ」
「何でも思い通りにいくと思うなよ」
そう言い残し、リベラルは完全に消えてしまった。
「ハハハハハ。私を止められるものなどいないさ!」
「ま、眩しい……」
カーテンから差し込む光で俺は目覚めた。
「一郎?私のことわかる?」
「夕か?」
「このバカ!」
俺に怒っているのは同い年の幼馴染だ。
「俺、戻って来たのか?」
「何言っているの。散々心配掛けといて」
どうやら自分の世界に戻って来たらしい。
「どうして病院に?」
俺は体中に包帯を巻かれ、病院のベットに寝ていた。
「路上で倒れていたそうよ」
「そうか。今っていつ?」
「六月。半年もどこにいたの?」
「わからない」
とても異世界にいたとは言えない。
「先生を呼んでくるわ」
夕は軽く零れた涙を拭いながら病室を出ていった。
《あれって夢じゃないよな?》




