一節 本国に呼ばれました
「どうだクリス」
「いや~飛ぶのって気持ちいいですね」
「そうだろ、そうだろ」
俺はクリスを背中に乗せ空を飛んでいた。
《子供向けアニメのヒーローみたいだな》
【遊んでいていいのか?】
《別に遊んでないから。クリスが研究の参考に乗せてくれって言うからさ》
【のんきなものだな】
《いいんじゃない。たまにはさ》
お決まりの小言を淡々と受け止める。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
クリスを降ろして俺は腰を伸ばす。
「参考になった?」
「ええ。でも、単純に楽しかったです」
「なら良かったよ」
無邪気に笑った顔にドキッとしてしまう。
「じゃあ、以前話していた実験に付き合って頂けますか?」
「ああ」
「では行きましょう」
「一郎さん、準備はよろしいですか?」
「いつでも大丈夫」
「実験開始します」
さっきまでの幼い雰囲気から一転、真剣な声でクリスは合図を出した。
「亜空間発生装置作動」
装置の台座に立っていた俺を激しい電流が包んでいく。
「おお」
思わず声を上げてしまう。
「出力上昇、順調です」
研究員がクリスに報告する。
「よし、そのまま上げて」
「了解しました」
さらに俺を包む電流の勢いが増していく。
「亜空間発生まで三、二、一、発生しました」
研究員の言葉を聞いたと思ったら、俺は広大な野原に立っていた。
「ここは?」
「私の装置で発生させた仮想空間です」
「仮想空間ねえ」
「一郎さん以外は、実体ではなくエレルギー体の敵しかいません」
「お~し、思いっきりやれるな」
「さすがに全開で鎧の力を出すのは厳しいですけど、それ以外であれば耐えられます」
「これで修行に集中できるわ。ありがとうクリス」
「いえいえ。お礼を言われる程でも」
今まではリベラルからレクチャー受けてのぶっつけ本番が多く、この発明はありがたい。
「クリス。さっそくお願い出来るか?」
「わかりました。まずは白騎士でやってみましょう」
「おう!ガンガン行こう!」
何だかテンションが上がって声が明るくなる。
「では開始します」
「くぁ~疲れた」
俺は台座に汗びっしょりになって寝てしまっていた。
「どうぞ」
「サンキュ」
クリスに差し出されたドリンクをゴクゴクと音を立てて飲む。
「さすがに生身で白騎士百体はきつかったな」
「でも、それに勝つのは勇者様って感じです」
「ギリギリだったけどな」
「ここにいたか」
「キーア。何かあった?」
ちょっと渋い表情だったので、心配して訊いた。
「実は、本国がお前を連れてこいと言っている」
「俺はかまわないけど」
「そんな気楽なものじゃないぞ」
「どうして?」
「王族の連中は勇者の力を警戒している。何か企みがあるはずだ」
キーアは眉間に皺を寄せる。
《異世界でも政治みたいなことってあるんだな》
【お前の世界程ではないだろ】
《そんなに酷いか俺の世界って?》
【違う種族からの脅威はないが、その分人間同士の争いは深いな】
《確かにね~》
人間みたいなリベラルの物言いに何となく納得する。
「どちらにしても行かないとマズイだろ」
たぶん、俺が行かないとキーアの立場は危うくなるはずだ。
「すまない」
「いつ出発する?」
「一週間以内に来いと言われた」
「わかった。明日、出発しよう」




