十一節 新しい大賢者が誕生しました
「このままでは皆が倒されてしまう」
クロウは必死に装置に魔力を注ぎ込む。
「私の魔力では……くそ!」
自分の不甲斐なさにクロウが悔しがる。
「相変わらずね」
「お前が何でここにいる」
部屋の入り口にハルが立っていた。
「シールドが解除されたから、大賢者様が心配になっただけよ」
ハルはツンデレ女子のように言い返す。
「そんなとこに立っていないで手伝え」
クロウは苛立った声で叫ぶ。
「言われなくてもそのつもりよ」
ハルも苛立ちながら魔力も注ぎ始める。
二人の魔力で一気に装置のエレルギーが満タンになった。
「シールド展開!」
クロウが装置を起動させる。
「よくやったな」
一郎がテレパシーで呼び掛けてきた。
「いえ、私は大したことはしていません」
「お前は頑張ったよ」
謙遜するクロウを一郎が褒める。
「あいつのおかげです」
「あいつ?」
「そうなんです。お前も何か言え……」
クロウが話し掛けようとしたが、いつの間にかハルはいなくなっていた。
「大賢者様には会っていかないのか?」
誰にも気付かれないように森へ入ろうとしていたハルに声を掛ける。
「私はあの城にいるべきではない」
そう言うハルは寂しそうな表情をしていた。
「戦わないことがそんなに悪いことなのか?」
俺は歩きながらハルに近づく。
「それだけじゃない」
「死んだ仲間のことか?」
「ああ。聞いたのか」
「クロウが怒っていたよ。あいつは力を持っているくせにって」
「力か……。力があってもな」
今度は不甲斐なさに悔しいという顔をしている。
「一郎様、大賢者様が!」
クロウのうろたえた声でテレパシーが聞こえてきた。
「わかった。すぐに戻る」
「どうかしたのか?」
俺の表情に察したハルが訊いてくる。
「いいから一緒に来い」
「ちょ、ちょっと待て」
俺は戸惑うハルの腕を取り城へ向かった。
「ハル!」
クロウは不安を隠しきれなかったのか、顔を見た瞬間に名前を呼んだ。
「大賢者様、しっかりしてください」
「ハル……。来てくれたのですね」
長年の負担で大賢者の肉体は限界を超えていたらしい。
「もちろんです。大賢者様の危機とあらば」
「では、頼みを聞いてください」
「何なりと」
息も絶え絶えで話す大賢者の手をハルがギュッと握る。
「後を継いでください」
「それは……私には荷が重過ぎます」
「いえ、あなたには十分な資質があります」
「ですが」
俺の隣でクロウは複雑な表情をしていた。
「クロウ、近くに」
「はい」
呼ばれたクロウはすぐに側に駆け寄る。
「あなたにも後を継いでほしいのです」
「え?」
思わぬ言葉にクロウは戸惑う。
「どういうことですか?」
「二人で助け合いなさい」
「わかりました。ハルを支えます」
「違います。二人とも大賢者となるのです」
「そんなことは前例がないことです」
「時代は変わるものでしょう」
「ですが」
「頼みましたよ」
最後の言葉を遺し、大賢者は息絶えた。
「大賢者様!大賢者様!」
クロウは涙ながらに何度も呼び掛ける。
「クロウ……」
そんな泣き叫ぶ姿にそっとハルは寄り添う。
《今は三人だけにしよう》
【お前にしては気が利くな】
《いつもだよ》
精霊と口喧嘩しつつ、俺は部屋を出た。
大賢者様が亡くなって一週間が経った頃、出発する俺の為に宴が用意された。
「じゃあ、二人とも頑張ってな」
「お前もな」
「お前とは失礼だぞ」
「いいだろ別に」
ガミガミと怒るクロウにハルはふて腐れた。
「ははは」
そんな二人を見て、笑い転げてしまう。
「それよりも酒だ」
誤魔化すようにハルはワインに似た酒を俺に差し出す。
「まったく」
やれやれという感じでクロウは呆れた顔をした。
「ははは」
何だかんだ息が合っている二人を見て、また笑ってしまう。




