↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/90

十一節 新しい大賢者が誕生しました


「このままでは皆が倒されてしまう」


 クロウは必死に装置に魔力を注ぎ込む。


「私の魔力では……くそ!」


 自分の不甲斐なさにクロウが悔しがる。


「相変わらずね」


「お前が何でここにいる」


 部屋の入り口にハルが立っていた。


「シールドが解除されたから、大賢者様が心配になっただけよ」


 ハルはツンデレ女子のように言い返す。


「そんなとこに立っていないで手伝え」


 クロウは苛立った声で叫ぶ。


「言われなくてもそのつもりよ」


 ハルも苛立ちながら魔力も注ぎ始める。


 二人の魔力で一気に装置のエレルギーが満タンになった。


「シールド展開!」


 クロウが装置を起動させる。


「よくやったな」


 一郎がテレパシーで呼び掛けてきた。


「いえ、私は大したことはしていません」


「お前は頑張ったよ」


 謙遜するクロウを一郎が褒める。


「あいつのおかげです」


「あいつ?」


「そうなんです。お前も何か言え……」


 クロウが話し掛けようとしたが、いつの間にかハルはいなくなっていた。




「大賢者様には会っていかないのか?」


 誰にも気付かれないように森へ入ろうとしていたハルに声を掛ける。


「私はあの城にいるべきではない」


 そう言うハルは寂しそうな表情をしていた。


「戦わないことがそんなに悪いことなのか?」


 俺は歩きながらハルに近づく。


「それだけじゃない」


「死んだ仲間のことか?」


「ああ。聞いたのか」


「クロウが怒っていたよ。あいつは力を持っているくせにって」


「力か……。力があってもな」


 今度は不甲斐なさに悔しいという顔をしている。


「一郎様、大賢者様が!」


 クロウのうろたえた声でテレパシーが聞こえてきた。


「わかった。すぐに戻る」


「どうかしたのか?」


 俺の表情に察したハルが訊いてくる。


「いいから一緒に来い」


「ちょ、ちょっと待て」


 俺は戸惑うハルの腕を取り城へ向かった。




「ハル!」


 クロウは不安を隠しきれなかったのか、顔を見た瞬間に名前を呼んだ。


「大賢者様、しっかりしてください」


「ハル……。来てくれたのですね」


 長年の負担で大賢者の肉体は限界を超えていたらしい。


「もちろんです。大賢者様の危機とあらば」


「では、頼みを聞いてください」


「何なりと」


 息も絶え絶えで話す大賢者の手をハルがギュッと握る。


「後を継いでください」


「それは……私には荷が重過ぎます」


「いえ、あなたには十分な資質があります」


「ですが」


 俺の隣でクロウは複雑な表情をしていた。


「クロウ、近くに」


「はい」


 呼ばれたクロウはすぐに側に駆け寄る。


「あなたにも後を継いでほしいのです」


「え?」


 思わぬ言葉にクロウは戸惑う。


「どういうことですか?」


「二人で助け合いなさい」


「わかりました。ハルを支えます」


「違います。二人とも大賢者となるのです」


「そんなことは前例がないことです」


「時代は変わるものでしょう」


「ですが」


「頼みましたよ」


 最後の言葉を遺し、大賢者は息絶えた。


「大賢者様!大賢者様!」


 クロウは涙ながらに何度も呼び掛ける。


「クロウ……」


 そんな泣き叫ぶ姿にそっとハルは寄り添う。


《今は三人だけにしよう》


【お前にしては気が利くな】


《いつもだよ》


 精霊と口喧嘩しつつ、俺は部屋を出た。




 大賢者様が亡くなって一週間が経った頃、出発する俺の為に宴が用意された。


「じゃあ、二人とも頑張ってな」


「お前もな」


「お前とは失礼だぞ」


「いいだろ別に」


 ガミガミと怒るクロウにハルはふて腐れた。


「ははは」


 そんな二人を見て、笑い転げてしまう。


「それよりも酒だ」


 誤魔化すようにハルはワインに似た酒を俺に差し出す。


「まったく」


 やれやれという感じでクロウは呆れた顔をした。


「ははは」


 何だかんだ息が合っている二人を見て、また笑ってしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。