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十節 また死に掛けました


 修行の場となる洞窟は当然ながら闇に包まれていた。


「私から離れないでくださいね」


 霞が持つロウソクの灯りを頼りに歩く。


「ああ」


 十五分は歩いただろう所で霞は歩みを止めた。


「ここです」


 着いた場所には数段の階段と不思議な光に照らされた台座らしきものがあるだけだった。


「こんな狭い場所で修行するの?」


 どう見ても、とても動き回れそうにない。


「正確にはここではありません」


「どういうこと?」


「あの台座から異空間へ行き、そこで修行します」


「何か理由があるんだよね?」


 わざわざ異空間へ行くワケを訊く。


「その異空間は鎧の力を封じ込める仕掛けがしてあります」


「また厳しいことするなぁ」


「先代も花月忍術との修行には苦戦したと聞いています」


 天才と思っていた先代も苦労したことにちょっと嬉しくなる。


【覚悟しろ。あの異空間では私の力は使えない】


《お、久しぶりに話したな》


【私が出ると鎧の影響が出やすくなるから、大人しくしていただけだ】


 妖精も気を使うらしい。


「では、よろしいですか?」


「ああ」


 俺は階段を上り、台座に手をかざした。


「異空間には一体だけ魔物がいます。それを倒せば戻れる仕組みです」


「おし!」


 俺は両頬を叩き気合いを入れる。


「では、始めます」


 そう言うと、霞はスイッチの役目らしき石壁に触れた。


 少し経って台座を照らす光が輝きを増して俺を包み込む。


「眩しい……」


 その激しい光に目をつむってしまった。




 目を開けると、草薙の剣が眠っていた場所に似た所に立っていた。


「ここなのか?」


 周囲を見渡そうとした瞬間、何かに切りつけらる。


「何だ?」


 とっさに避けたものの、肩に少し傷を負ってしまった。


「しゅ~」


 周囲に青白い炎が灯り、狼男のような魔族が現れた。


「こいつが修行相手か」


 俺は癖で変身しようとしてしまう。


「そうだったな。生身でやるしかいんだった」


 気を取り直して、狼男に向かい合った。


「がおおおおお」


 俺は叫びながら襲い掛かってくる攻撃を寸前でかわす。


「このくそ」


 何とか急所は避けつつも、俺の体はどんどん傷を増やしていく。


《集中しろ。一撃でいいから、こいつを仕留められる打撃をするんだ》


 必死に自分に言い聞かせ、イメージを膨らませた。


「ぐおーーーーー」


 こっちの都合などお構いなしに狼男の攻撃は襲い掛かってくる。


「ごほ……」


 動きが鈍った俺は避けきれず腹部を鋭い爪に貫かれた。


 地面が血で真っ赤になる。


「しゃ!」


 狼男はトドメを刺すため爪を引き抜き、今度は心臓を狙ってきた。


「痛てえだろうが!この野郎ーーーーー」


 ギリギリでボクシングのクロスカウンターもどきが決まる。


「があ!」


 わずかに狼男が後ろに仰け反った。


「おーーーーー」


 生体エレルギーで強化された俺の拳が突き刺さる。


「……」


 呻き声すら発せず狼男は塵となって消えた。


「二代目……なめんなよ」


 俺もそこで力尽き倒れてしまう。


「やべえ。体動かないわ」

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