六節 ボロボロになりました
俺はクリスがくれたスマホに似た機械を頼りに移動していた。
《日も暮れてきたし休める場所を見つけないとな》
すっかり周囲は暗くなってきたので手頃な場所がないか探す。
【気を付けろ。ここは敵の本陣だからな】
リベラルから警戒を促される。
《ああ》
かなり用心しながら探した結果、何とか休めそうな洞窟を見つけた。
「はぁ~よっこらっせ」
オヤジくさいセリフを吐きながら腰を落とす。
《しかし、あのゴルザって奴は強かったな》
少し落ち着いたことで強敵のことを思い出した。
【グルス三大将軍の一人だ】
《グルス三大将軍って何?》
敵の勢力図がわからないので率直に訊いてみる。
【グルス王に次ぐ実力者で、先代勇者に深手を負わせたこともある】
《マジ?》
自分が戦った相手の実力が思った以上に高いことに混乱した。
だが、もう一つ俺は気になってしまう。
《ちょっと待てよ。あいつ何歳なの?》
【魔族の中でも魔人は消滅するダメージを与えない限り死ぬことも、まして老いることもない】
《マジか~》
RPGの難関クエストにぶち当たった気分になる。
「まあ考えても仕方ないし、寝よっと」
俺はいつものように開き直って横になった。
「ふぁ~」
【まったく緊張感のない男だな】
朝からリベラルの小言を聞かされる。
《さあて、出発しますか》
気持ちのいい日の光を浴びながら背伸びをしていたら矢が突然飛んできた。
「お、あぶね」
寸前に殺気を感じた俺はすれすれでかわす。
「今日はちゃんとお相手してもらいますよ」
「げ……」
つい昨日会った顔にゲンナリした声を出してしまった。
「そんな嫌な顔しないでくださいよ。ゴルザはショックです」
あまりのチャラさに三大将軍なんて大層なものか疑ってしまう。
「悪かったよ」
何故か俺は敵に謝っている。
「ああ、逃げても無駄ですよ。周囲は我が精鋭部隊に囲ませていますから」
《さっきの矢はそいつらか》
「しぇやーーー」
おふざけモードから一転、ゴルザの猛攻が襲ってきた。
「はあーーー」
瞬時に変身して俺も反撃をする。
「ふ~。やはり勇者は伊達ではありませんね」
ギリギリの攻防を繰り返した後、ゴルザはスっと距離を取った。
「ちょっと本気を出しますか」
そう言ったゴルザは周囲に紫色の邪気を纏い、角が生え、鬼のような外見に変わった。
「あまり美しくないので好きじゃないんですよね」
少しテンションが下がった顔をしてゴルザは刀を眺めている。
「じゃあなるなよ」
「そういうこと言っちゃダメでしょ!」
いきなり真剣な顔に戻ってゴルザは攻撃を再開した。
徐々に押されていき、まともにボディブローを喰らってしまう。
岩壁に叩きつけられた俺は思いっきり血を吐いた。
《これはマズイな。本気でヤバイわ》
結構なダメージを負いながら必死に立つ。
「では、そろそろ天に旅立って頂きましょう」
チャラチャラした顔は一切なく、本気の構えでゴメザはこちらに向かっている。
《仕方ないな》
俺は奥の手を使うことにした。
「神器一体!完全解放!」
久しぶりの黄金状態に軽く興奮してくる。
「く、それは何ですか!」
黄金の眩しさに片目をつぶりながらゴルザが叫ぶ。
「俺の切り札だよ」
「そんなこけおどし」
「時間がないからな、すぐに終わらせてもうらぞ」
だが、言葉通りにはいかなかった。
十分以上経っても決着はつけられず膠着状態になる。
「その程度ですか」
余裕ぶっているがゴルザもかなり疲弊していた。
【いくら大和流で鍛えたとはいえ、これ以上は命に関わるぞ】
《ああ》
俺は一度距離を取り、剣道の中段に構えを直す。
「大和流、覇道砲!」
「おおおおお」
完全開放でいつもの五倍以上の大きさになった球体状のエレルギーがゴルザを飲み込む。
ゴルザはキラーんと星のように彼方へ消えていった。
《やったか?》
あまり手ごたえはなかったが一応リベラルに確認する。
【いや、生命エレルギーは消えていない】
《やっぱりか》
完全解放を解いて俺はその場から逃げた。
何とか敵軍を突破した俺は滝の裏側にあった洞穴に隠れる。
《完全解放でも逃げるのに精一杯か》
【まだまだだな】
こんなときでもリベラルは変わらない。
【とりあえず休め。俺が結界を張って時間を稼ぐ】
《わかった。遠慮なく休ませてもらうよ》
リベラルの言葉に安心して俺の意識はすぐに落ちてしまった。




