五節 敵地に侵入しました
「じゃあ行ってきます」
俺はカミシアたちに出発の挨拶をする。
「気をつけろよ」
いつも強気なカミシアが心配した顔をして言ってきた。
「ああ」
互いに少し見つめ合う。
「うんうん。想い合う男女。いいですね~」
クリスが世話好きおばさんみたいに頷いていた。
「誰が想い合う男女だ!」
カミシアの鮮やかなゲンコツがクリスに決まる。
「イタタ……。無事に帰ってきてくださいね」
いつもひょうきんなクリスまで心配顔だ。
「大丈夫だって。なんだかんだ幸運の持ち主ですから」
俺は不安を押し殺し笑顔を見せる。
「お前に武運があらんことを」
キーアはいつもの凛々しい顔で拳を突き出してきた。
「おう!」
キーアの顔に安心して気持ちが落ち着く。
「今度こそ行ってきます」
俺は開いた城門から勢い良く飛び出した。
「では、我々も後方支援に向かうぞ」
「おーーー」
キーアの号令に兵士たちも気合いを入った声で返す。
敵の陣地近くと思われる場所に着いた俺は、クリスお手製の小型レーダーで周辺を探る。
「うーん。この辺のはずなんだけどな」
【確かに魔族のエレルギーを感じる】
リベラルのセンサーも敵の気配を察知した。
《まずいな。早く見つけないとカミシアたちの被害が増えてしまう》
俺がゲートを見つけるまでグルス軍を引き付けてくれる作戦になっている。
あせっているとレーダーが近くに反応を示した。
「お、キタ!」
俺は急いでゲートの予測ポイントへ走り出す。
場所に辿り着くと、魔族たちの援軍が続々とゲートから出てくるところだった。
「くそ。あんなにウジャウジャと」
魔族を撃退しようと立ち上がろうとしたとき、リベラルに呼び止められる。
【馬鹿者。作戦通りに行動しろ】
装置を破壊し敵地を無事に脱出する為には極力見つかるわけにはいかない。
《そうだったな》
流れが途切れた瞬間に俺は辻風の舞でゲートに飛び込んだ。
暗闇を突き抜けると、広大な場所に出た。
「着いたのか?」
敵地に侵入したことによって鼓動が速くなっているのを感じる。
【早く装置を破壊しろ】
今日はいつにも増してリベラルの口数が多い。
《わかっているよ》
俺は言われるまでもなく装置を破壊しようと近づいた。
「おっと、これ以上は困りますね」
全く気配を感じさせず目の前に敵が現れる。
俺は瞬時に距離を取った。
《何だこいつは?》
突然現れた敵に驚いてしまう。
「これを壊されると僕の立場なくなっちゃんですよ」
キザな風貌と口調で目の前に長身の男が立ち塞がる。
「どうも初めまして。グルス帝国第三将軍のゴルザと申します」
男は軽い口調とは裏腹に強いプレッシャーをこちらに感じさせてきた。
【気を付けろ。こいつは只者じゃないぞ】
リベラルの言葉に緊張感が高まる。
「では、お一つ手合わせ願います」
ゴルザは小太刀を両手に持って向かってきた。
シュ、シュ、シュ。
両刀による無数の攻撃が襲ってくる。
「どうしました?勇者とはこんなものですか!」
今までの敵とは段違いの強さに必死になってしまう。
「さあ!さあ!さあ!」
気持ち悪く高笑いをしながらゴルザは攻撃を繰り出してくる。
「くそ」
辻風の舞で加速しているはずなのにかわすので精一杯だ。
【避けれないのなら受け止めればいいだろう】
《受け止めるって言ったってな》
【守りを固めろ】
リベラルの言葉で術を思い出した。
「神器!〈鋼城〉」
鎧が鋼で包まれる。
俺は足を止め仁王立ちになった。
「降参ですか!」
ゴルザの刀が鎧に刺さる。
パキーン。
「馬鹿な」
刺さったかと思ったゴルザの刀がバキバキに砕け散っていた。
「倍返しだ!」
俺は力を込めて草薙を振り上げる。
「オーマイガー」
俺の一撃をまともにくらったゴルザは装置に激突した。
ドゴーン。
衝撃で装置は爆発する。
瞬く間に部屋は炎で囲まれていく。
「やられました。今日のところは勝負はおあずけにします」
まともに一撃を喰らったはずのゴルザは平然と立ち上がり炎の中に消えていった。
【一郎、何をしている。早く脱出しろ!】
リベラルに促され俺は外に飛び出した。
《とりあえず、装置は破壊出来たな》
城から離れた峠から俺は燃え盛る炎を見つめる。
【安心するのは早いぞ。グルス領を脱出して成功だからな】
《ああ》
俺は休む暇なく駆け出した。




