四節 攻めに出ることにしました
「数で押せ!敵はたったの一人だぞ」
指揮官は怒声を張り上げる。
「おおおおお」
グルス兵ちは声と動きを揃え前へ前へと進む。
「大和流〈烈風閃空斬〉!」
激しい竜巻から無数の風で形成された斬撃が放たれる。
「ぎゃーーーーー」
次々とグルス兵が風の刃に切り刻まれていく。
「もう一週間以上も戦っているのに減らないな」
一刀の修行で成長したとはいえ、敵の物量作戦に疲弊していた。
【これしきでだらしないぞ】
リベラルのお決まり文句が聞こえてくる。
《だけどな~さすがにしつこいって》
新兵器をあっという間に潰され、大将も一太刀でやられたグルス軍は本気を出してきた。
どこから湧いてくるのか、様々な魔族や獣で攻めてきたのだ。
俺が何回撃退しても翌日には万の軍勢で攻めてきた。
《どうにかしないとマズイな》
いくら強くなってきても人間には限界がある。
【ならば、知恵を借りればいい】
いつも自力でやれと言うのに珍しい発言をしてきた。
《そうだな》
俺は助言に素直に従うことにした。
「敵の拠点を潰しましょう」
クリスはスッと作戦を提案する。
「潰すのはいいとして、拠点はどこにあるか知っているのか?」
「そこは抜かりありませんよ。この一週間で偵察してましたから」
自信満々でクリスは説明を始めた。
「グルス軍は魔術を応用した技術で本国から直接で進軍してきているようなんです」
予想を上回るものに俺は驚きを隠せない。
「ちょっと待ってくれ。それって勝ち目低くないか?」
手の平をクリスに向け、俺は頭を抱えた。
「今までは物資の関係か、何度か撃退すれば軍は退いていたのですけれど」
「それが今回はなかなか退かないわけか」
説明を聞いてさらに気が重くなる。
「だけど、心配御無用ですよ」
クリスはオモチャを手にした子供のようにワクワクした顔をしていた。
「どういうこと?」
「小型偵察機で調べた結果で装置の場所は何とか掴めたんです。それを壊滅させられれば何とかなると思います」
「そういうことなら一郎さんに任せときなさい!」
解決策が具体的になってきたことに気持ちが晴れてくる。
「でも、一つ問題が……」
流暢に説明をしていたクリスは急に口ごもってしまう。
「何だよ」
上がっていた気分を下げられ、俺は軽く拗ねた。
「グルス帝国へワープする時間を稼ぐのと、撃破したあとの帰還です」
テンションが上がって見落としていたことを理解する。
「時間のことは心配するな」
いつから聞いていたのか、カミシアが部屋に入って来ていた。
「もう大丈夫なのか?」
「私のことは大丈夫だ」
戦闘民族は相変わらず回復が早い。
「この前は遅れをとったが、やられたままで終わるものか」
今までになく覚悟を決めた顔をしていた。
「当たり前のことなんですが、装置が壊れればワープは閉じてしまいます」
「それはそうだよな」
「なので成功したとしても、敵の本拠地に取り残されてしまいます」
《うん。すごい孤独というか自殺行為だよね》
「まあ何とかなるだろ」
心の声は出さず、楽観的な態度を見せる。
「一郎さん、大きくなったというか何か変わりましたね」
クリスの言葉にちょっと嬉しくなった。
「いろいろあったからな」




