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三節 突入しました


「そう言えば、何で突然解放してくれたの?」


 俺は聞きそびれていた疑問を口にした。


「ある予言が残されていたからです」


「予言?」


 お馴染みとなってきたRPG設定を自然と受け止められるようになってきている。


「剣奪いし邪が現れんとき、古の勇者が異なりし世界から来たれり」


 大樹は古文の授業をする教師のように暗唱をした。


「これはジパングにある言い伝えです」


「そんなのがあるんですね」


「その伝説と同じ鎧を着た勇者が捕まったと聞き、大変慌てました」


 俺は自分の胸に手を当てる。


「ふ~ん。鎧様のおかげですな」


 独り言をあえて声に出して言ってみた。


【皮肉ですか勇者様】


《さあ~何のことでしょう》


 いつもの皮肉合戦をしたところで話を戻す。


「邪心族って元々は人だったんですよね?」


「ええ、そうです」


「その人格は残っているんですか?」


「私は出会ったことはないですが、頭領と呼ばれるものは人格が残っているらしいです」


「残っているなら何で人間と戦うんですか?」


 質問攻めに嫌な顔をせず、大樹は答えた。


「頭領は罪人しかいないからでしょう」


 大樹は少し悲しい表情になって説明を続ける。


「生きている頃から他人を傷つけることを何とも思っていなかった人間ですからね」


「死んでも変わらないもんなんですね」


 俺も何だか切ない感情を覚えた。


「おい、馬をここへ」


 城門まで着いたところで大樹は馬番に命令をする。


「は!」


 返事をした馬番は二頭の馬を連れてやってきた。


「一郎殿、どうぞ」


 先に馬上に跨った大樹は俺にも乗るように促す。


「じゃあ遠慮なく」


 勧められるまま馬上に跨る。


【必要あるのか?】


 リベラルが訊いて来た。


《鎧は疲れるからね。戦うまでとっとかないと》


【軟弱者】


 何度聞いたかわからない台詞を無視して馬を動かした。




「あれが神殿ですか?」


「ええ」


 俺と大樹は神殿から少し離れた草むらから様子を探る。


「思ったより少ないですね」


 外から見る限り数匹しかいなさそうだ。


「一匹の能力が高いので」


「じゃあ、行ってきます」


 すっと俺は立ち上がる。


「え、正面から行く気ですか?」


「はい」


 大樹はあまりに平然とした顔の俺に驚きを隠せないでいる。


「危険です」


「でも、どっちみち倒さないとね」


 自分でも不思議と落ち着いていた。


【変わったな】


《戦で魔物を蹴散らして自信がついたのかな》


 俺は改めて気持ちを整える。


「よし!行きますか。神器一体、着装!」


 もう恥ずかしさを考えないようにした台詞を口にして変身する。


「おお、これが勇者の鎧……」


 あっけにとられた大樹を残し、閃光で目をつぶっている鬼の集団に俺は突入した。

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