二節 捕まっちゃいました
《何で縄で縛られているんでしょうか?》
【お前が間抜けだからだ】
《誰が間抜けだ!》
俺は、新しく来た異世界でも妖精にツッコミをする自分に溜息をもらす。
この状況を説明するのに難しいことはなかった。
単純に罠にはまったのだ。
《何で抵抗しちゃだめなの?》
俺はリベラルに言われ変身を解いていた。
【ジパングの民は気難しく信頼を築くことが容易ではないからだ】
《昭和の頑固親父みたいだな》
コツコツと足音が聞こえてきた。
「おい、立て!」
木で作られた牢屋の鍵を開けながら中に入って来た兵士が命令してくる。
「へ~い」
「何だ!その態度は!」
俺の態度に苛立った兵士が手を上げようとした。
「やめないか」
振り上げられた兵士の手が静かな声とスラッとした細長い手に止められる。
「大樹様」
大樹と呼ばれた男を見た兵士は、片ひざをついて頭を下げた。
「勇者様、数々の非礼をお詫び致します」
兵士から視線をこちらに移して大樹は丁寧に謝罪をしてきた。
「へ?」
異世界に来て恒例になってきている置いてけぼり現象で声が裏返ってしまう。
「主君が待っておりますゆえ」
縄を解かれた俺は大樹の案内に従って歩き始めた。
「勇者殿、我が家臣が失礼した。誠に申し訳ない」
時代劇に出てきそうな殿様がこちらの顔を見るなり詫びてきた。
「いや別に。それと一郎と呼んでください」
勇者と呼ばれることに慣れない俺は遠慮がちにお願いをする。
「それならば良かった。それで一郎殿はどうして我らが世界へ?」
「先代勇者の武器がこの世界にあるということだったので」
畳の上に正座をしている足に痺れを感じつつ質問に答えた。
「そうか。草薙の剣をお探しでしたか」
殿様の顔は一気に険しくなる。
「何かまずいことでも?」
営業マンとしての経験が嫌な胸騒ぎを感じさせた。
「実はですね。剣を祀っていた神殿が邪心族に襲われまして」
大樹が殿様に代わって説明をする。
「邪心族?」
「人間の亡骸にとりついた鬼のことでございます」
鬼と聞いて背筋がぞくっとする。
「じゃあ、剣は奪われたんですか?」
何とか自分を落ち着かせ現状を確認した。
「いえ、神殿は占拠されましたが、聖気のおかげで剣は無事のようです」
「そうですか」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
「よし、善は急げってことで」
足の痺れで一瞬ふらっとしたが、何とかふんばり立ち上がった。
【めずらしく前向きだな】
意外という感じでリベラルがつぶやく。
《まあな。考えても始まらないし》
単純に名刀の存在に興奮して落ち着かないだけとは言えない。
「では、私もお供致します」
大樹も続いて立ち上がった。
「よろしく。では、お殿様。失礼します」
俺は軽く会釈する。
「ああ。ご武運を」
殿様に見送られ城を後にした。




