一節 ジパングに来ました
《ええ~と、リベラルさん。ジパングとおっしゃいました?》
【ああ】
《ああ。じゃあねえし!》
いつものツッコミが炸裂する。
《あ~頭痛い。マジで飲み過ぎたな》
【そうならないと来れないからな】
《昨日もそうだけどさ、何でそんな飲むのにこだわるわけ?》
俺はこめかみをマッサージする感じでつかみつつ訊いた。
【お前の異次元航海能力を引き出す為だ】
《異次元航海能力?》
初めて聞く単語に綺麗なクエスチョンマークが浮かび上がる。
【お前がいた世界、カミシアたちの世界、そしてジパング。異世界は無限だ】
《おいおい。そんな小説でもあるまいし》
RPGばりの世界観にちょっと置いてかれ気味になっていた。
《じゃあ、最初も酒飲み過ぎたから異世界に来たってこと?》
【そうだ】
《まあ、何となくは理解できたわ》
おちおち二日酔いも出来ない自分の能力にげんなりする。
《でもさ、二日酔いなんて何度もしてきたのに、何で今更?》
【今までは封印のせいで私の力が足りなかったからだ】
《どういうこと?》
俺の中で疑問が止まらない。
【二日酔いでお前の能力が開放されても、私がゲートをつなげなければ飛べないのだ】
《ゲート?》
【映画とか小説とかで良く言うだろう。異世界同士はゲート、つまり門のような入り口でつながっている】
《妖精が映画とかって説明するのね》
妖精からの思わぬ言葉に妙に現実味を感じてしまう。
《で、この世界に武器があるってことでいいのか?》
【そうだ】
《いやいや、そうだだけじゃなくて、もっと情報をくれよ》
【先代の勇者が使っていた武器は元々ジパングのものだ】
リベラルはゆっくり語る。
【先代もお前と同じで異世界を旅が出来たからな。この国一番の鍛冶屋に剣を鍛えてもらったんだ】
《じゃあ、先代はカミシアたちの世界の人間じゃないのか?》
【そうだ。先代もお前と同じ日本育ちの人間だった】
俺は、今更ながら知った事実に少し驚いた。
【では探しに行くぞ】
《って言ってもさ、どこに行けばいいの?》
ふと思った疑問を口にする。
【とりあえず鎧を着るんだ】
《わかったよ。神器一体、着装!》
俺は言われるがまま変身した。
【集中しろ、剣にあるマナが共鳴するはずだ】
《そんなことが出来るのかよ》
ますますRPG感が増していくなと思いつつ、目を閉じて集中する。
パーンと、何かの光がきらめくのを感じた。
「おお、すげえ」
思わず声が出てしまう。
《じゃあ行きますか》
俺は少しタメをつくり、勢いよく飛び出した。




