六節 初陣しました
目の前には万を超える黒い鎧を着た騎馬隊と魔獣の軍勢がいる。
「グギャー」
「ガォォォォォォォォー」
「シャーーーーーーーーーーーーーーーー」
戦場に敵軍の凄まじい迫力の怒号が響く。
「あれと戦うのか」
俺は勇者としての覚悟を決めたものの、初の戦場に緊張していた。
【自信を持て】
リベラルから一言の激励が飛ぶ。
《と言ってもな。やっぱりドキドキするよ》
つい弱音を吐いてしまう。
数日前にグルス帝国進軍の報せが届き、砦の守りは慌てて固められた。
「情けないが、お前が頼りだ」
鋼の弓矢と大剣を手にしたカミシアが真剣な面持ちで口にする。
「任せとけ」
俺は精一杯に強がってみせ、ごまかすように両頬を平手で叩いて気合を入れる。
常に戦時体制とはいえ、本国の援軍は間に合わなかったので戦力差は大きい。
「弓隊!構えーーーーー」
族長であるキーアが始まりの合図を出す。
「放て!」
晴天の空に弓矢の雨が降り注ぐ。
「騎馬隊!突撃ーーーーー」
号令を聞き、弓矢の雨にひるまず進軍してくる敵軍へ皆駆け出した。
「ふ~」
大きく深呼吸して、俺はゆっくり息を吐く。
「はあ!」
気合いを声に乗せ、光となって大軍の中心に飛び込んだ。
俺はクリスが加工してくれた大剣を振り抜く。
「キシャーーーーーーーー」
いくつとわからぬ魔獣の悲鳴が耳に張り付く。
「せいや!」
次々に俺は敵を打ち倒していった。
「一郎に続け!」
戦士長であるカミシアは自慢の俊足で後に続く。
「あいつを叩け!」
戦況を打開すべく、黒騎士の大将らしき戦士が指示を出した。
俺めがけて黒騎士たちが一斉に襲い掛かる。
「一郎!」
カミシアが叫ぶ。
キーンと剣を弾く音がした。
「白騎士、サンキュー」
目の前には人が三人は隠れられそうな盾をかざす白騎士がいた。
「いえ、必要なかったでしょうが」
「いいや、よくやった。後は任せろ」
俺は大剣で起こした波動の一撃で黒騎士たちをなぎ払った。
かなりの黒騎士の軍勢が弾け飛んだが、敵軍の勢いは止まらない。
《これじゃキリがないな》
【マナを剣に込めろ。あの技で打開できるはずだ】
リベラルの言葉で俺は思い出す。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~」
集中して俺は必殺技を繰り出した。
「〈斬空一閃!〉」
バキバキと音をたてて剣は崩れたものの、巨大な斬撃によって敵軍は一瞬で壊滅した。
「オ、オーーー」
あまりの威力に呆然としていた女戦士たちだったが、すぐに歓喜の声をあげた。
「やったな」
カミシアが俺の肩を叩く。
「痛い痛い」
「ははははは」
俺のリアクションに大きく笑うカミシアの声が広い戦場に響いた。




