12/12
終章
精霊の王は美しいブルネットの髪と、青空を切り抜いた様な瞳をしているらしい。
普段は精霊樹の根元で深い眠りに付いているが、時折目を醒まし国を巡って祝福を与える。
精霊の王が人間であった頃、精霊の王は聖女として巡礼の旅をしていたと言う。
民衆に寄り添い、その土地の抱える問題を恒久的に解決する術を、聖女がいなくとも、その土地に住む人間が技術を得る事で回る様にしたのだと言う。
それまでの聖女の方法とは異なる手段に当初人々は戸惑ったが、やがて彼女の齎した技術が正しいと知ると深く感謝した。
聖女としての精霊の王を知る世代の人々は、生涯に一度は、感謝を伝えたいと精霊樹を訪れて祈りを捧げる。
その祈りに応える様に、精霊の王は時折国を巡って祝福を与える。
その姿を、国王オリバー二世は何処か物悲し気な面差しで見届けていると言う。
オリバー二世は、
「人間の生きる、精霊から見ればほんの僅かな間。
人間として生きる道も、確かにあったのだ」
と言った。
聖女がどんな人物だったのか。
如何にして、精霊の王へと変生するに至ったのか。
誰もが一度は疑問に感じるが、深くは追求しない。
彼女が心から他者を想い、世界の為に精霊の王となった事だけが、事実として語られている。




