私の復讐が始まった話
すいません、なんか違うなと思い少々書き直しました。
ご迷惑おかけしてます。
パチッパチパチ……
私の目の前で、私が生まれてから今まで過ごしてきた家が燃え崩れている。
突如として街の上空に現れたいくつもの巨大な魔法陣、そこから降りかかる災厄によって街の全てが抵抗する間もなく滅ぼされてしまった。
燃える家の前で、へたり込むたった一人の少女の少女を除いて
どこを見てもあるのは炎だけ、いつもならここから見えていた学校も焼け落ちたのか今は見えない。
両親も家の中で燃えていた。
二人の遺体は同じ家の中でも離れたところで燃えていて、普段の二人の仲の悪さを表しているようで場違いにも笑えてしまった。
家族も友人もみんなみんな焼け死んでしまった。理想という名の檻に私を閉じ込めていた番人達が、私を繋いでいた檻が、鎖が焼けて灰になっていく……
ふと燃える音以外の………………そう、笑い声のようなものが聞こえた気がした。声の聞こえる方向を見ると丘の上に人影が見えた。
普段なら見えるはずの無い距離、しかし天賦の才によって無意識のうちに魔力によって強化された彼女の五感によって丘の上の人物を捉える。聞こえてきていたのは笑い声なんかではなく泣き声だったようだ。
あの人は…………
「あはは、はははは、はははははははははははは」
そこに居たのは通っていた学校で何度か話したことのある先輩だった。そう学校の先輩、彼との関係値に名前をつけるならこれ以上のものはない。いや、なかったというほうが正しい。なぜなら今日その関係は変わったのだから。
私の生まれ故郷を火の海に変えた極悪人?
いいえ、この場所に思い出なんて無いもの
私の両親を殺した仇?
あんなモノにそこまでの価値はないわ
私を慕っていた友人や街の住人を殺した虐殺者?
友人?街の住人?顔も覚えてない人達なんて元々存在しないのと同じよ
だったらなに?彼は私にとってどんな人なの?
決まってるわ……
「うふふ、ふははは、はは、ははははは、あははははははははは」
笑いが止まらない、何もかもつまらないと思っていた私の人生にこんな欲望が生まれるなんて!
「愛しい人……あの人が欲しい」
丘の上にいるあの人に向かって手を伸ばしても届くことはない。それは物理的な距離だけでなく魔力も知力も何もかもが足りていない。
【天才】誰もが私をそう称し、確かにそう分類されるだけの能力が私には確かにある。
だけどそんなものではあの人には届かない。
【唯一無二】天から授かっただけのもので、自ら極地へと上り詰めた彼に追いつけるはずもない。
あの人は学校で初めて見た時から異質だった。感じられる魔力は底が見えないほど深く濃ゆい。それなのに、何処にでもいる学生のように振舞っている様は傍から見たら異常と言わざるを得なかった。生まれて初めて感じた自分以上の狂気と底知れなさ。
丘の上で私と同じように狂気に染まった高笑いをしている彼。でも私とは真逆の心持ちなのに同じ行動を取ってしまっている。
「お揃いだね。先輩」
だけど、そんな次元の違う世界に住まう彼が、矮小な私と同じ行動をしている事に心臓が激しく胸を打つ。
どうせ私はここにいたってあそこで燃える肉と同じ道を辿るだけ。だったら、せめて私はあの愛しき先輩の目の前で、彼の手づから殺されたい……
「今、行きますから……」
へたれこんでいた足に鞭を打って立ち上がる。
あの人のいる丘までそれなりの距離を進まなければならない。
そもそも先輩がなぜこんなことをしたのかはわからない。だけど理由なんて私からしてみれば粗末な事だった。
家に帰れば毎日両親は喧嘩して、その当てつけのように私の成績に口を出して、それぞれの理想を押し付けてくる両親。
学校に登校すれば、見た目だけで擦り寄ってくる下品な猿に、私の学校全体からの評価にあやかろうと近づく馬鹿な女に、演じた私を私らしいと言い放つ自称親友達。
誰も彼もが、私を理想という名の檻に閉じ込める番人だった。だけど彼は一夜にしてそれら全てを真っ赤な炎へと変えた。
それだけが今の私にとっては全てだった。
燃え盛る炎を魔力で掻き分けてなんとか昨日までの道と照らし合わせて道なき道を進んでいく。
先輩は、私が来たらどんなリアクションをしてくれるだろうか
面倒に感じながら私を焼き払うのか
狂気じみた笑いを響かせながら私の命を薙ぎ払うのだろうか
虫を見るように、興味を持たないまま潰されるのかな?
あの人のするかもしれない、色んな表情を想像しながら未来を夢を見る。
でも、先輩が私を認識した上でとる行動ならどんなことになっても素敵な未来だわ。
そうして、愛しい未来を想像しながら辿り着いた丘の上で私を待っていたのは絶望だった。
「せ、んぱい…………?」
丘の上に立つ先輩の周りには、奇妙な黒い霞がかかっており、表情は疎か顔も所々しか見えない。
しかもその霞は強烈な香りを放っており、まるで自分の男だと独占する香水臭い女のようだった。
霞は自由気ままに先輩の身体中を舐めまわすように移動している。
霞の一挙一動が不快感を際立たせる。
今すぐに先輩にまとわりつく霞を吹き飛ばそう。そう考えた私の動きが止まる。
霞が揺れ動き、そのお陰でできた隙間から先輩の瞳が見える。しかしそこには何も映ってはいなかった。
体にまとわりつく黒いモヤも目の前に立つ私も、街を飲み込む真っ赤な炎も何も映してはいなかった。
私は、先輩に見てもらった上で殺されたかった。蔑んだ目でも無視を見るような目でも涙を流した目でも、見てくれるならなんでも良かった。その為に、ここまで来たのだから……
先輩の右手がこちらに向かって動く。
殺される。
…………結局同じだった。私がここに来る道中、歩く度に踏みつけてきた肉塊達と変わらない死に方。
どうして勘違いしてしまったのか、ここに来た程度で私のことは見てくれるなんて……
先輩に恨みはない。むしろ申し訳なく思う、こんな地獄みたいな世の中に先輩だけを残してしまうことを。
だけど、先輩にまとわりつく霞だけは許さない………………死んでも呪ってやる……
せめて私を殺す先輩の姿を脳裏に焼き付けようと瞬きも忘れ先輩だけを見つめていると、先輩の口が小さく開く。
あぁ、どんな魔法を唱えるのかな?
火かな?いやいや、一人を殺すだけなら風の方が効率いい。それとも敢えての水?
なんて……馬鹿なことを考えてしまった。時間が経つのが遅く感じる。これが噂に聞く死に際の現象だろうか……なんてことまで考えられてしまう。
あれ?
違う。体感時間は変わっていない。先輩の後ろで燃える街はきちんと今も燃え広がっている。
なら止まっているのは先輩?
その瞬間、霞の隙間から先輩の瞳にほんの一瞬だけ私が映ったように見え私の心臓が高鳴った。
ただ、次の瞬間先輩によって高鳴らされた心臓は先輩の言葉によって止められてしまった。
「僕を殺したいだろう。そんな君にチャンスをあげよう。十年後起きる大戦、それを制すという僕の望みがかなったなら、君に僕の命を捧げよう」
……………………………………………ッッッ!!
止まってしまった心臓が何とか動いてくれたお陰で、呼吸と思考を取り戻すことができた。
プレスティッシモの如く高鳴る心臓のおかげで脳にも血が回り思考が加速していく。
い、いえ、今はその話は置いておきましょう。それよりもかなり重要なことを先輩は言いました。
「十年後起きる大戦、それを制すという僕の望み」
十年後、ここがかなり大事な所だ。他にも先輩の今の発言から引っかかるところはあったものの、つまり私はこの後十年という時間を先輩の隣に居られる権利を貰えただけでなくその後、先輩の命に関われる権利さえも貰えたということに他ならない。
先輩が何をしようとしているのかも、この霞が何なのかも分からないがそれだけの時間があれば十分だ。
高速に回転する思考が進むべき道を指し示す。
十年、この時間を使って私はなんとしてでもこの気色の悪い霞を先輩から取り除いて、先輩を私だけの物にする。
うふ、うふふふ、ふふふふふふふふふふふふ
まさか、こんなことがあるなんて。
意図せず願ってもいなかった権利をを手に入れてしまい心の中で笑いが止まらなくなる。
今の先輩の言葉から、きっと先輩の中では私が貴方を憎んでいると思っているらしい。それはとんでもない勘違いだけど、今はその勘違いが私にとって大いに役に立つ。
「本当に、先輩の望みがかなったら先輩の命は私のものになるんですね?」
「あぁ、そういう契約だからね。全てが終われば僕の命は君のものだ」
「分かりました。それじゃあ話してくれるんですよね?これからなんのために何をするのか」
「もちろんだ。着いてきたまえ」
再度しっかりと契約を確認した後、私は先輩の差し出していた手を泣く泣く無視して歩く先輩について行った。
初めての先輩との尊い触れ合いが霞越しなんて絶っっっっ対嫌!
私に先輩の事を無視させた罪はどう償ってもらおうかしら………………
そんな風に先輩の背中にまとわりつく霞に呪いの視線を送りながら、私の新たな人生はこの日始まった。
「先輩……逃がしませんからね………………」
早く一話の後の話が書きたいので、そこまではダイジェスト的な感じで書いていこうかなと考えています。
気に入っていただけた方はブックマークやリアクション、感想をくれるとやる気が上がるので助かります!!
遅筆ではありますが、頑張って書いていきたいと思いますのでよろしくお願いします。




