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「……ちょっと、柴翊さいよく様! いくらなんでも話が急すぎませんか?」


私が目を白黒させている間に、柴翊様の後ろから、一人の少女が凛とした足取りで進み出てきました。


その姿は、かつて「小広成しょうこうせい」と謳われた弓の名手・花栄かえい様、そしてその息子である花逢春かほうしゅん様の面影を、驚くほど鮮やかに受け継いでいました。


陽だまりの護衛、花陽の参戦


少女は私の前に来ると、弾けるような笑顔で深々と頭を下げました。

「今日からこちらでお手伝いをさせていただきます、花陽かようです! 柴翊様より、父(逢春)からの言付けを預かって参りました。……今日からは、**『ねえさま』**とお呼びしてもよろしいでしょうか!」


お嬢の独り言

「……ねえさま、なんて。

私、ずっと一人っ子で、周りはおじさんたちばかりだったから……。

こんなに可愛くて、それでいて腰に下げた小弓がただならぬ威圧感を放っている妹ができるなんて、夢にも思わなかったわ。

柴翊様の話によれば、お父様の逢春様は『今はまだ名乗れぬ重大な任』があるとかで、柴翊様に娘を託して、風のようにどこかへ消えてしまったらしい。


……まったく、花家の男たちも、燕青おじさんに負けず劣らずの『浪子』なんだから。


『ねえさま、事務仕事から炊事洗濯、そしてお嬢様に近づく不逞の輩の掃討まで、何でも仰ってください。今日から私は、ねえさまの影であり、盾ですわ!』


驚いたのは、その手際よ。

陽ちゃんは店に入るなり、散らばっていた文房具をあっという間に整理し、小大しょうだいさんの削りカスを魔法のように片付け、さらには奥の厨房から、生薬の香りを邪魔しない絶妙な塩梅の薬膳粥を炊き出してきたの。


『……完璧だわ。燕青おじさんの弟子たちより、ずっと頼りになるかもしれない』」


柴翊様の「粋な計らい」

柴翊様は穏やかに微笑みながら、一枚の鍵と図面を机に置きました。


「蓮華、燕青。印房のすぐ近くに、古いけれど立派な邸宅を用意した。君たちが安心して暮らせる場所だ。陽もそこに住まわせる。……燕青、お前もたまには宿代を浮かせて、家族としてそこに腰を落ち着けたらどうだ?」


燕青おじさんは、珍しく照れ臭そうに鼻を掻きました。


「……柴翊の旦那、相変わらず気が利きすぎるねぇ。お嬢、良かったな。陽に美味しい夜食を作ってもらえるぜ」


お嬢の独り言

『おじさん、他人事みたいに言わないでよ。あんたもそこに住むなら、少しは家計を助けなさいよね!』


陽ちゃんは、私の袖をきゅっと掴んで、嬉しそうに目を輝かせている。


『ねえさま、今夜は新しいお家でお祝いですね! 外出の際は、私が弓を持って一番前を歩きますから、安心してお仕事なさってください』


燕青おじさんが外の闇を払い、陽ちゃんが私の日常と背後を守る。

柴家の邸宅という、新しい『砦』を手に入れた私たちの暗躍は、これからさらに加速しそうね。


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