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顧飯店の至福、英雄の余韻を噛みしめて
「……本当にもう! おじさんったら。あれだけの死線を越えて戻ってきて、趙長官への配り物まで済ませたと思ったら、今度はどこへ消えたのかしら」
私は、顧飯店の磨き上げられたテーブルで、黄金色に輝く蒸し鶏を前に、呆れ顔で笑いました。
お嬢の独り言
「……でも、いいわ。
公孫勝様のお弟子さんたちが語ってくれた、あの高麗での凄まじい『義』の物語。
それを聞き届けた後で、こうして顧大嫂おば様の孫娘たちが守る本店の、一点の曇りもない滋味に向き合うのは、何よりの贅沢だわ。
美林様、愛蘭。
私たちは、このしっとりとした鶏の身を、おじさんの英雄譚の最高の肴にしましょう」
陽ちゃんは、名を聞くだけで涎が出ると言っていた通り、至福の表情で蒸し鶏を頬張っています。
お嬢の独り言
「……おじさん。
あんたが風のように動き回るたび、この臨安には新しい火が灯る。
その火を絶やさず、誰もがひれ伏すような壮大な物語に書き上げるのが、代筆屋の務め。
戻ってきたときに、自分の有名人ぶりに腰を抜かすあんたの顔を拝むために。
今はこの蒸し鶏を英気に変えて、私の筆に、あんたの背中に負けないくらいの鋭さを宿らせるわよ」
陽ちゃんが、「ねえさま、おじ様が戻られたら、この蒸し鶏の美味しさをどうやって自慢しましょうか!」と、肉汁で唇を光らせて笑いました。




