第二十九話「断罪の広場」
ルーセル王国の王宮広場で、公開裁判が行われた。
私はそれを、カイゼル様が手配した水晶の鏡型通信装置で見た。
グリフィス長官は、膝をついていた。
かつての高圧的な面影はなく、震える手で衣を握っている。
「グリフィス・ラルディン。光神殿長官。聖女能力記録の改ざん、結界崩壊の隠蔽、冤罪による聖女の追放——以上の罪状についてを認めるか」
「……っ、これには事情が……」
「証拠は全て揃っている。弁明は後でいい。まず、認めるかを問う」
長官は口を噤んだ。
国王の代理人が、もう一枚の書状を広げた。
「なお、追放されたルナ・アーシェルは、正式な調査により『最高位の浄化聖女』と認定された。今後は名誉回復の手続きを——」
「……っ!」
その瞬間、長官の顔が変わった。
「あのような出来損ないが最高位……?! ありえない! あれは台所仕事しかできない……!」
「……台所仕事『しか』できないのではなく、台所仕事をしながら国全体の結界を支えていた、ということです」
代理人が静かに返した。
広場が、静まり返った。
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鏡の向こうで広場が騒めく中、私はそっと装置の前を離れた。
「……ルナ」
カイゼル様が後ろにいた。
「見ていたか」
「……少しだけ」
「……どう感じた」
「……なんとなく、長い時間が終わった気がします」
カイゼル様は何も言わなかった。
でも、そっと、私の隣に並んだ。
それだけで——十分だった。
第二十九話 完
お読みいただき、ありがとうございます!
グリフィス長官の「台所仕事しかできない」という言葉を、代理人があの一言で返すシーン……スカッとしましたか?
ルナちゃんが静かに「長い時間が終わった」と感じる場面、私がこの物語で一番好きなシーンの一つです。
次回からいよいよ第三幕です!お楽しみに!
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