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第十二章 失敗3

 無言で暗闇を見つめる。

 暗闇にだんだん目が慣れてきて先が見通せる――なんてことなく。中は完全なる闇だ。華英は迷うことなく、壁際にあるスイッチを入れた。これも自分の部屋と同じ位置。LEDダウンライトにぱっと光が灯り、中を照らす。園も華英の行動に文句は言わない。

 床に積み重なったダンボール箱と大量の服が目についた。チラと手前の蓋が開いたダンボールに指を引っ掛ける。大学で使う資料だろうか。教育、指導、という文字が目に付いた。教員でも目指しているのだろうか。冗談じゃないと蓋を閉じる。

「物置」

「違うね」

 一言二言言葉を交わし、すぐに灯りを消す。ダンボール箱をひっくり返せば、なんてやっているより、生活空間をひっくり返した方がてっとり早いであろう。

 時計を確認する。六分になろうとしているところ。プラスして計十一分。

 やや焦る。

 踵を返し、先程は通り過ぎていた部屋の扉に指を引っ掛ける。少し、ほんの僅かな隙間が開いていた。そのまま指を手前へと動かした。きいと音が鳴る。ここも闇。しかし、先程より中が雑然としていることだけは伝わってくる闇。その証拠に、ところどころ電子機器だと思われる赤ランプが灯っていた。待ち構えていた闇を拭いさらうべく、電灯のスイッチを入れる。灯りに誘われ、華英と園は部屋へと導かれていく。


 ベッドを半分覆う群青の掛け布団と茶色い薄い毛布。ぽっかり穴が空いている。


 真ん中に黒い簡素なガラステーブル。


 底に付着した汚れが目立つガラス製の小さな灰皿。


 閉じられたパソコン。無骨なデザイン。地元、よく寄っていた事務所のと同じメーカー。


 化粧品の数々。高そうなデザインばかり。


 毛足の長いグレーのラグマット。


 光っていたのは電源タップ。スマホの充電器が伸びている。


 ここにもダンボール箱がひとつある。サイズは先程の物よりも小さく蓋は閉じられている。


 床に半分程中身の入ったコーラのペットボトルがある。蓋は閉じられている。


 脱ぎ散らかされた衣服がこんもり。山ふたつある。


 プリンター。埃が目につく。


 コピー用紙の束がふたつ。埃が舞っているのが目につく。


 どの部屋も同じ、スライド式のクローゼットがある。扉は開いている。


 マネキン人形。けれど人としての息吹を感じられる。


「?」

 違和感に通り過ぎた視線を再び戻した時には、既に園が床に倒れていて、『一応用心の為に』『絶対いらないから』と、散々ふたりでやりあったクロスボウは相手の手中にあった。


「おひさ」


 敵だった。

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