ゴブリンとの一騎打ちVSジョセ(2)
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ミックスの持つ戦斧に魔力を吸い取られジョセは唖然とした表情を見せた。
仮にも【醜小鬼の魔術師の王】になる前から得意魔法である爆発魔法を吸収されてしまったからだ。
前の世界でもミノタウロスは中ボスを担う魔物という立ち位置であるが目の前にいるミックスは魔王クラスであると唾を呑み込んだ。
(厄介な斧を所有しているが距離さえ取れば、刃を振り下ろされる事は無いだろう )
「そう俺は甘くねぇよ。 石弾ッ!!! 」
ミックスは得意な土魔法で石を浮かせてジョセに攻撃を仕掛けるが、ジョセも素早く魔法陣の壁で飛んでくる岩から身を護ったのであった。
厄介な事にミックスは土魔法と炎系の魔法を魔力として吸収することができる為にジョセに取っては相性が悪いのは明らかであった。
だが、ここで引き下がる訳には行かないとジョセは手に持っていた杖を逆さに持ち直してキースお手製の仕込み杖から剣を取り出した。
(まさか、隠し技を速くも披露する羽目になるとはな…ドルトンのような剣技活かした魔闘法とか違う俺のオリジナルの魔闘法である… )
「何だ…?あの枝みたい剣は?あんなのでミックスの硬い体毛や筋肉を貫けると思ってるのか? 」
「…ミックスはん!!油断したらあかんで…?」
「戦闘中に声掛けてくるお前らに言われたくねぇし言われねぇでもこの威圧感は何かあるだろがよ… 」
ジョセの持つ仕込み杖の剣先の細さにエレーナは思った事をそのまま口に出すと、魔力探知に優れたメルディアがミックスに気を引き締める様に指示を出す。
既にミックスも両手で戦斧の柄の部分を両手で握りしめて攻撃に備えていたのだ。
だが、それすらも無意味であったのだ。
気が着いた時にはミックスの左脇腹の横を通り去っており、傷口が氷漬けになっていたのだ。
「なんだ?今の剣技は…?レオーネ殿は見えたか?」
「いや、見えはしなかったが、恐らくは剣術の突きに特化した型なのは間違えないだろう… 」
大剣を扱うゴリガンとレオーネはジョセの剣術を目の前で見ていたが目で捉える事ができなかった。
何よりもあの頑丈の毛と筋肉の鎧で覆われているミックスの身体に傷を着けたことに動揺が起こったが、メルディアは冷静であった。
「ミックスは~ん。その氷魔法は傷口から拡がっていくタイプの魔力込められとるでぇ~ 」
「はぁ!?コイツ初っぱなに赤の系統魔法を使ったのに何でも青の魔法を使えるんだよ!?」
本来ならば魔物や獣人の体内に流れる魔力を元に魔核の色が決まり使える魔法が変わってくるのだ。
実際に魔力量が少ない種族は魔闘法等何らかの方法で魔力を剣身に集中させて使い、日々の鍛練で地道に伸ばしていく方法と魔物や魔獣が持つ魔核を喰らう事により身体の魔力を増やす方法が存在し、ミックスは後者側の方法を選んだ身である。
それはジョセも同じであるが、異世界人であり転生した為に赤と青の魔核を持つ特異体質な醜小鬼であったのだ。
そこに引かれたオーグレスのシャーロンはジョセに赤の炎系統で攻撃力と破壊力のある爆発魔法と使い方によって様々な手法が取れる氷魔法を伝授し、醜小鬼の魔術師に進化した猛者であった。
そして、更なる力を得るために北の山脈でキースに教え込まれたのが、剣術の突きと氷魔法と身体強化魔法で素早さと掛け合わせたオリジナルの魔闘法であるのだ。
メルディアの助言通りに傷口から氷結した部分が拡がり初めて体温を低下されて弱らせる事のできる技であるためにミックスは拳を固めて傷口部分の氷を叩き割るとそこから流血し始めたのだ。
「 中々厄介な技を持ってやがるな…流石はミノア以上の怪物の醜小鬼って所か? 」
「 怪物に怪物と言われても俺は何も思わんぞ…? 氷漬けして仕舞わなくては俺の勝ちは無いようだからな…」
「頭の切れる醜小鬼だな。 リザーナよりも賢そうだな… 」
「こらー!!!相棒を愚弄するな~ッ!!! 」
流石は幻獣神達が脅威だと恐れられたミノアと並ぶ醜小鬼であり、強さもだが、相性の悪さなども考慮しての発言ではあったのだ。
それは魔力を込める膨大な量と全身から覚悟を感じ取ることが出来たからだ。
恐らくは次の一撃で決めてくるつもりであろうとミックスは察していた。
「俺の最大魔力を込めたこの魔法をどう攻略する!?幻獣神ミックスよッ!!絶対零度ッ!!! 」
「どう攻略するも何も…ミノタウロスは正面突破で破壊するのみだぜ? 大地の大爆砕斧ッ!!!」
地を這って竜種をも氷漬けにしたもうひとつの得意な氷魔法を土と炎の合成魔法で打ち砕かれてしまったのだ。
次にはどうするのかと身構えていたミックスであったが、ジョセは天を見つめると溜め息を吐き出してゼウスになんと自ら降参宣言を申し出したのであった。




