負け組と勝ち組(2)
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グランザニア帝国に備え付けられている敵襲を知らせる鐘の音が鳴り響き渡ったのであった。
慌てて醜小鬼達が武器を手に取り小屋から外に出ると、海からは巨大な海蛇の怪物・シードラゴンが姿を表したのであった。
前世のゲームの記憶などでも、中ボス級か序盤に出てくる難敵であるを知っている転生グミは直ぐ様、港町を捨てて逃げる事を選択したのだ。
今の自分達は醜小鬼程度の力しか持ち合わせておらず、更には底辺の雑魚でたる自覚がある。
あんな強敵相手を相手にできるわけないと一目散に敗走を決めたのであった。
だが、街の外も既に上位種の醜小鬼が高ランククラスの魔物達と戦闘を行っていたのだ。
ベヒーモスとレヴィアタンの取り決めで支配下である魔物達の総攻撃を受けてしまっていた。
既にグランザニア帝国の城下町にいる一番の戦力である醜大鬼の巨人の部隊も巨大な大太刀や大槌等を武器に戦力に向かっていたのだ。
この隙に少しでも生き残る為に森に逃げようとしたが、巨大な鎌切やトロルキングにトロル等に加えて醜大鬼の巨人よりも大型の魔物である巨大な樹木の巨人達が姿を表したのであった。
当然、事態を重く見たオルガーナが前線に立つ事で醜小鬼達の士気を上げようと身なりを整え、武器を取るがシャーロンがそれを拒んだのだ。
「オルガーナ様、それはなりません。貴女様が出れば士気は確かに上がりますが、既に戦力的にこちらのが不利でございます」
「ではどうしろというのだ!?このままでは全滅は目に見えているのだぞ!?」
「マドンナ達は勿論ですが、醜大鬼の巨人の雌を前線から引かせてまた戦力を整えるしかありません。いくら醜大鬼の巨人達といえど、西の魔物の軍勢に太刀打ち出きる程の力があったとしてもこちらも痛手を負うのは目に見えています」
「チッ…!!港街どうなった!?まさかだと思うが…ッ!!!」
オルガーナは港町が見える城壁から身を乗り出して自分の目で確かめたのであった。自身の予想した通りであり、転生者である醜小鬼は逃げてしまっていて元々、喧嘩慣れしている女から産まれた上位種の醜小鬼達のみでシードラゴンを撃退しようと試みたが、既に港街にシードラゴンは上陸して壊滅状態であるというのだ。
オルガーナの自室の窓からでも見える巨大な怪物・巨大な樹木の巨人達が城に向かって決めているのが見えたが、何よりも城下町にいた醜大鬼の巨人達や上位種になった醜小鬼の弓使いや醜小鬼の剣士達が王であるオルガーナの元に近づけさせないように必死に戦っている姿を見てしまった為に【逃げ出す】という選択がオルガーナには出来なかったのだ。
既に港街と農村部は壊滅してシードラゴンと 巨大な樹木の巨人という強敵が城に迫っていた。
現状ではこちらのが数的には有利であるのは間違えないが、力の差がありすぎたのだ。
転生した醜小鬼は何の戦力にもならずに巨大な樹木の巨人に踏み潰されてしまったり、森に逃げ込んだ醜小鬼は巨大な鎌切の鎌先に突き刺されて既に全滅寸前であったのだ。
あの青年の醜小鬼は港町の瓦礫に隙間に小さな身体を活かして何とか生き延びていたが、自分に醜小鬼としての生き方を教えてくれた他の先輩の転生醜小鬼は既にシードラゴンが吐く炎に燃やされてしまったり、逃げ出して矢先に他の魔物に殺されてしまった為に身を隠すしか術がなかったのだ。
青年だった醜小鬼は上手い事、楽なポジションの役職に着けてオルガーナの野望の為に女を犯して数を増やすだけという男として夢のような仕事に着けていた筈であったのに何故こうなってしまったのか瓦礫の隙間で頭を抱えながら思考した。
元々、【幻獣神】と闘うためだとオルガーナは言っていたが、どの世界でも醜小鬼は最弱の魔物であるのは違いは無いのだ。
いくら醜小鬼の魔王という魔王になれると言われてもそこまでの過酷な道を前世でも何も成し遂げられなかった自分達【負け組】にそんな偉業を為し遂げられる訳がないと早々に努力をするのを諦めたのだ。
普通に考えたら向こうだって同じ過ちを繰り返さない様に先手をうってきても不思議ではなかったのだ。
もっと真面目にオルガーナの鍛練を受けていれば、それなりに戦力に慣れたのかも知れないだろうが今となっては後の祭りである。
だが、醜小鬼の成体はどの道50㎝~80㎝程しか無い小柄の体格であるのだ。
相手は10m~15m近くある化け物とどう闘えというのだろうか。 実際に自分よりもデカい筈の醜大鬼の巨人ですら小さく見えてしまい、まるで歯がたたない状態であるのだ。
それはグランザニア城から見ていたオルガーナも同じ心境であったのだ。
もう少しで復讐が出きると思った矢先にこの有り様であるのだ。
確かにシャーロンのいう通りにマドンナと醜大鬼の巨人の雌を何匹か連れて元の隠れ処に逃げることを選択しようと目を数秒だけ瞑っただけであったが、戦況を覆す戦士達が帰還したのであった。




