先手
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一方で、【獣王の試練】で満身創痍になりながらも試練を乗り越えたミックスは未だ眠ったままであったが、砂漠の国・アルバーナの女王であるナスターシャがアルバーナの魔力を持った者達がミックスの戦斧の備え付けられた魔核に魔力を貯める役割を担うといい魔力を流し込んでいく事にのり戦斧に備え付けられた魔核には、膨大な魔力が含まれている状態であったのだ。
だが、リザーナは中々目覚めないミックスを心配して魔力回復薬と回復薬を口移しで体内に送り込みながら、自分の魔力を少しずつ送る事でミックスの治癒を少しでも助けようと必死であった。
既にミックスが深い眠りについてから3日は立っていてるが、一向に目覚める気配が無かったのだ。
「ねぇ、メルディア何でミックス起きないのかな?」
「んー…おそらくは肉体的な疲労よりも精神的な疲労に慣れてなかったせいやろうな…」
「精神的な疲労になれてないってどういう事?」
「ミックスはんは強すぎて今まで身体的ダメージは受けても、精神的な余裕はあったんちゃうんかな?
ミノアの大迷宮で300年も負け知らずで、リザーナはんの為に魔力をあげて強くなったけど、今まで自分以上の格上と戦闘した試しがないちゅーのは強敵と戦う上で必要やからな。
あくまでもうちの考え方やから当たっとるかわからんけどな?
【獣王の試練】で初めて戦いの中での己の弱さを痛感してそれでも戦わきゃならん。精神的な辛さは結構しんどいもんやからな…」
メルディアの言葉にリザーナは【獣王の試練】の洞窟の前でローガンに言われてた事を思い出していたのだ。圧倒的までの力の差を見せつけられた事の無いミックスが始めて自分よりも圧倒的な強者に出会した際に死への恐怖を乗り越えて背中に背負っているものの重圧に耐えられるかと言っていた事の意味がようやく理解することが出来たのだ。
自分はミックスを地上に出しただけでそれ以外は全てミックスが助けて頼りになる存在に成ってくれていたが、リザーナ自身がミックスの重みになってしまっているのではないかと俯いてしまうと、メルディアはそんなリザーナの様子をみてため息をついた。
「リザーナはん、ミックスはんの重荷になっとる何て思ったらあかんで?」
「…けど、ミックスの気持ちをちゃんと考えた事が無かったから。
いつも助けてくれて強くて頼りになるのが、ミックスだったから私のせいで追い詰めちゃったんじゃないかって…」
「…そんな事はねぇよ。リザーナ… 」
「お?気付いたな~♪うちは外で出とるわ~♪」
目を覚まして起き上がったミックスを見つめると、メルディアは気を利かせて酒樽から出て、穴蔵から出ていってしまった。
リザーナは起き上がったミックスの腹に飛び込んできたので胡座をかいて膝にのせるとリザーナはミックスに対して涙ながらに謝罪をしてきたのだ。
試練の時にローガンに言われた事を理解してミックスがこれから背負って護らなければならないものは全て自分の我が儘から始まったことであり、ミックスに負担を掛けているだけで自分は頼ってばかりで迷惑ばかり掛けていると涙ながら話し始めたのだ。
だが、ミックスはリザーナにそんなこと無いと言いきったのであった。
リザーナが与えてくれた背負うものには金貨や宝石よりも価値があり、身体を張って意地を通してでも護る価値があるものだと伝える。
「大体、お前がいったんだろ? もっと強くなって俺がリザーナの大事なものを護ってやれくらい強くなってやるっていってくれってよ」
「…なんで?私はミックスの重荷になってない?いつも迷惑ばかり掛けてるのになんで…」
「あー…何時からは忘れたが、リザーナの為ならって思うようになってからそれが当たり前になってたからな。
多分だが、思っている以上に俺はリザーナが大事になって好きになったんだと考えてる。
だから、無茶だろうが何だろうがやってやろうって気になるんだろうな。俺は単純だからな!! 」
「ミックス…」
リザーナはミックスと唇を重ねると、メルディアは洞窟の影から見守っていたのをミックスは見逃さなかったが、弄るわけでもなく、今後の方針が決まったらしいので1度、カルディア城にきて欲しいと連絡がきたというとミックスは普段通りに酒樽とリザーナを持ち上げてガルディア城へ向かったのであった。
城につくと、目覚めたミックスの身体を皆が気を使ってくれたが、大丈夫だと伝えて今後の方針を尋ねるとベヒーモスの大陸の魔物の軍勢とレヴィアタンの海の魔物の軍勢で東の帝国に宣戦布告をすると言うものであったのだ。
東の帝国には港町がある為にそこに住み着いてしまった醜小鬼は海の魔物が、帝国の城の周辺はベヒーモスの魔物の軍勢と万が一に備えて、産み出した怪物・黄金の三首持つ蛇を東の渓谷に配置したままの先制攻撃を仕掛けるというものであったのだ。
ひとつき後には東への総攻撃が始まる為、もしも魔物達がやられてしまった時は戦争になる事を覚悟しなくてはならないと気を引き締めさせたのであった。




