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ミックスにとっての価値の変化

**********************


満身創痍の身体で立ち上がったミックスは戦斧(バトル・アックス)を杖代わりにして何とか立っている状態であった。

今の自分にこの怪物は倒せる訳がないのにそれでも挑もうとするのか脳が理解していなかった。

既に心が折れ掛けていたミックスに圧倒的な強さを誇る三本角の怪物に勝てる見込みなど処にも見当たらないのにだ。

だが、身体は未だに怪物に立ち向かおうと武器を構えるのであった。

そうさせるのはミックスの脳内に微かにだが、リザーナの声が聞こえた気がしたからだ。

ミックスは永らく【ミノアの大迷宮】の財宝を守護をする怪物として産まれ財宝を護る為だけに戦い生きてきた魔物であった。

何年も何百年も変わらずの生活を続けていた。迷宮にいる魔物を食らい、財宝を護るという使命を果たす為に訪れた冒険者達と戦うだけの日々がミックスにとっての当たり前でありにちじょうであったのだ。

だが、魔物であるミックスにとって金貨や宝石は価値のがわからないものであった。

しかし、財宝を護る事で強い冒険者と戦える事は唯一の娯楽としての価値だと感じていたのだ。

どうして自分がそこまでして価値のわからない財宝を守護しなくていけないのか理解できなかったが冒険者達と戦えるモノ程度の認識でしかなかったのだ。

だが、リザーナがミックスの前に現れてから始めて財宝の価値を知る事が出来る切っ掛けがうまれたのであった。

自分が守護をしていた金貨や宝石類は人間の街や国で暮らす上では必要なものであり、衣食住や自分の評価に繋がる代物であるとメルディアから学んだ。

それがミノアの大迷宮には莫大な価値があり、それを守護する為に護っていたのだと金貨の価値を地上に出てから知り、冒険者達が命懸けで挑んできた理由が少しだけ理解できた様な気がした。

だが、ミックスはそれ以上に大事なモノをリザーナから多く貰ったのであった。


始めて出会った時にいきなり武器を捨てて土下座まで金貨や宝石を貸してくれと懇願してきたエルフはリザーナが始めてであった。

それどころか借り為に身体を差し出そうとして更には同族を侮辱する様な発言をしてまで金貨を借りようとしてきたリザーナに最初は興味がなかった。


ミックスにとって金貨や宝石はあくまでも自分が冒険者達と戦う為の利用価値のあるものと認識するようになっていたのだ。

戦う気が無いのなら少量の金貨を投げ渡して帰らせた方がいいと判断したのは大量にあるうちの一部を渡しても問題はないと思ったからだ。 だが、結局はリザーナは地上に戻る事が出来ずに部屋に戻ってくると喚き散らかしてこちらの戦意を失わされたのも始めてであった。


そして、自分に金貨を渡した事により守護者としての役割を放棄してしまった事に気づいたが、守護者として護るほどの価値を金貨や宝石に感じたとか今まで1度もなかった。

ただ強い冒険者達が金貨を求めてやってきて戦えるだけのモノという認識であった為に命を掛けてまで何故護らなければならないのはリザーナに尋ねられるまで考えた事もなかったのだ。

迷宮から出た事のないミックスにリザーナは自分を養う為に仲間にならないかと申し出たのだ。


確かに、ここで挑戦者を待つよりも外に出て、自分よりも強い魔物や冒険者と戦いとそう思いリザーナの申し出を受け入れようとしたが、既に勝手に腹の上で気持ち良さそうに眠っていたのはいい思い出である。

そして、いつの間にか、それが当たり前の様になっていたが、迷宮から地上に出て異種連邦国(マーレ・ジーニアス)で冒険者になってからもリザーナはミックスに様々な困難を与えてくれたお陰で迷宮にいたときには違い退屈せずに済んだ。

そして、異種連邦国(マーレ・ジーニアス)の専属冒険者パーティーになり、屋敷を手に入れたミックスであったが、永らく暗くて狭い迷宮で生きてきた事により、折角手に入れた屋敷暮らしになれなかった。

結局は魔物らしくダンジョン作成で自らの寝床を作り上げそこを根城にしていた。

だが、リザーナも屋敷の自室で寝たのは最初の数回だけでそれ以外は常にミックスと一緒にいてくれたのだ。

何よりもリザーナがミックスに与えてくれたのは金貨よりも価値のある仲間や気のイイ連中と会わせてくれた事だ。

確かにリザーナがリリスの呪いのせいで苦しんでいたのを知ってからミックスはいつもリザーナがリリスの力を使いこなせる様に目茶苦茶不味い魔核(コア)を食べ続けてリザーナが持っている呪いをリザーナ自身の力にするための努力をしてきていた。

気がつけば、ミックスの中心にはいつもリザーナいてそのまわりに支えてくれる人がドンドン増えていき価値のある仲間や友人と巡り合わせくれたのだ。

ミックスが醜小鬼(ゴブリン)達によって生み出された魔物であるは間違えのない事実であった為醜小鬼の魔王ゴブリン・ディザスターミノアより強い醜小鬼(ゴブリン)によってリザーナの大事なモノを人をこの手で壊してしまうのを恐れてしまい弱腰になってしまったが、リザーナは例え、どんな無茶でも乗り越えて護ってくれる漢だと激怒されてしまった。

今のこの状況を見たらリザーナはなんというだろうかとふっと考えてしまったのだ。

情けない。 元々は自分よりも強い魔物や敵と戦う為に地上に出てきたのだ。

ただ今は守護者としての護りたいものにはちゃんとした価値がある大事だから護りたい。

リザーナが与えてくれたモノは金貨よりも価値がある。


それを脅かす驚異から護れなければミックスは自分自身を許すことが出来なかった。

みっともなくてもダサかろうとも例え自分よりも圧倒的な力を持った怪物相手であっても諦める訳にはいかない理由が今のミックスの背中にはあるのだ。

難度も打ちのめされて倒されても何度でも立ち上がってこの試練を乗り越えなくてはならないのだ。

戦斧(バトル・アックス)を手に取り、立ち上がると構えて立ち向かう姿勢を見せると護るモノの為に勝つと心に誓ったのだ。

外でリザーナが自分が困難を乗り越えて帰ってくると信じて待っている。 ガルディアで仲間達が信頼してくれている。 立ち向かうのにこれ以上の理由は必要はない。

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