挫折とリザーナの祈り
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ミックスが3本角の怪物に圧倒的な強さを目の辺りにしている頃、リザーナは中で何が行われているのかをベヒーモスに尋ねるがいい辛いのかローガンに助けを求めて説明をさせたのであった。
ローガンは表情を変えず、本来の姿であるベヒーモスの姿した怪物が試練の番人として待ち構えているが並大抵の魔力や武力では到底太刀打ちできる相手ではないと説明をしたのだ。
そして、今のミックスの強さを誇っていても、到底勝てる怪物ではないとハッキリと言い放ったのだ。
ローガンの言葉にムッとした表情でミックスが如何に強い魔物であるかをリザーナはムキになって反論するが、ローガンは表情をまったく変える様子はなかった。
リザーナが言いたいことを言い終わるのを待ち言い終わるのを待っていてからローガンはゆっくりを口を開いたのだ。
「はぁ… それは自分よりも『格下』の者にしか挑まれた事がしかないからだ。
実際に『ミノアの大迷宮』は我々エルフ族にしか最奥部に辿り着けない構造になっているのだ。
その為、魔法耐性にも優れた毛皮を纏い、物理攻撃にも強いミノタウロスが守護者として選ばれたのだ。
普通のエルフ族は魔力には優れているが、力は非力だ。
ゆえに、ミノタウロスから放たれる怪力の一撃は耐えられない。
守護者として選ばれたのにはそれなりの理由があるのだ」
「そ、それは…けど、地上に出てからも強い魔物を倒したんだよ!?」
「強い魔物か…ミックスが倒してきたのは同等かそれ以下のレベルの魔物や獣人が殆んどの筈だが?」
「えっと…そ、それは…えっ!?なんで見てないのにそんなこと変わるの!?」
「ミノアの怪物・ミノタウロスが地上に出てからずっと監視して見ていたからだな!!」
リザーナとミックスが【ミノアの大迷宮】から地上に出てからベヒーモスもローガンがずっと見ていたというのだ。
無論、理由はエルフ族が祀る女神・アルテミスから女魔王・リリスの力を持ったリザーナと【ミノアの大迷宮】の怪物・ミノタウロスが手を組んで醜小鬼の魔王ミノアのように世界侵略をするのでは無いかと疑っていたからだ。
だが、リザーナに振り回して不運な目に合わされ守護していた金貨や財宝が同族の借金という形で使われた際にシャーロンは頭痛がしたと溜め息をついた。
その後も監視を続けていたが、北の山脈での上位飛竜の襲来の際に恐れていたリザーナのリリスの力が覚醒した事により警戒を強めていたというのだ。
「だが、ミックスは魔力が足りず前のリリスのような驚異にはならないと思っていたのだが…」
「まさか、魔物の魔核 を多量に接種してリリスの力に相応しい魔力をつけるとは予想もしていなかったのだ…」
「ふふ~ん。ミックスは私の最強の相棒だもん!! だから【獣王の試練】だって乗り越えられるもん!!」
「確かに、ジズ様やレヴィアタン様に認められたのは私も認めているのは事実だ。
だが、自分よりも圧倒的な強者が目の前に現れた際にミックスが乗り越えられるかが、この試練の難題なのだ。
自分よりも圧倒的な存在にミックスは出会った事が生まれてから1度、レヴィアタン様から向けられた威圧感しか無いのだ。実際に戦った事はないのだ。
つまりは圧倒的な力を持つものを前にして死への恐怖を乗り越えられるか。
そして、戦士として背負うものを重さを理解しているのかが試練を乗り越えられるかの鍵であるのだ」
リザーナはシャーロンとベヒーモスの言葉にミックスが無事であるのか不安で仕方なかった。
今、自分がここでミックスの為に出来る事はない。
ただ、ここでミックスが試練を乗り越えて戻ってくると信じて祈る事しか出来ないのだ。
いてもたってもいられずに、ミックスが戦っている【獣王の試練】の洞窟の前でリザーナは両手を合わせてミックスが無事に戻ってくる事を信じて祈りを捧げるのであった。
だが、エルフ族の女神であるアルテミスに嫌われてしまったリザーナにアルテミスは決して幸運を送る事などはしないのはわかっている。
リザーナが祈っているのは女神への『神頼み』ではないのだ。
リザーナが信じているのは自分の事を愛してくれて、常に強くなろうとするミックスの信念や心構えを信頼して祈りを捧げているのだ。
例え、自分よりも圧倒的な力に撃ち勝ってくれると祈りを捧げ続ける事しか出来ないのだ。
だが、現実は残酷なものであり、リザーナの祈りは無駄にしてしまっている現状であった。
自分よりも遥かに強い三本角の怪物に圧倒的までの力の差を見せつけられたミックスの心は弱気になってしまっていたのだ。
レヴィアタンとジズから貰った魔力を纏った|戦技である 爆砕も 暴風も試したがまるで通じている様子が無いのだ。
既にミックスは何度も逞しい二本角で投げ飛ばされ大木の様な太い尻尾で吹き飛ばされてを繰り返しており既に身体は満身創痍であったのだ。
この圧倒的までの強さを誇る三本角の怪物にどう対処すればいいのかわからなくなっていたのだ。
全てにおいて、自分よりも圧倒的に強い存在の殺気は始めて出会った時のレヴィアタン以来であり実際には戦闘には成らずに済んだが次元が誓いすぎたのだ。
ミックスの持っている全てを嘲笑う何のような存在感と圧倒的な強者の力の前にミックスは自身の敗北を悟ってしまったのだ。
もし、この場にリザーナがいてくれたらリリスの力で何とかなったのかも知れないが、今はリザーナはいない。
三本角の怪物が角でミックスを宙に舞い上がって諦め掛けたそうになった時だった。
ミックスの脳内に微かだが、リザーナの声が聞こえた気がしたのだ。
だが、既に心が折れ掛けていたミックスにとってリザーナの微かな声は唯一の支えになり、傷だらけの身体を起こし、戦斧を杖がわりにして立ち上がったのであった。




