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迷宮探索者の憂鬱  作者: 叢咲ほのを
Phase 2 なぜか世界の命運を担うことになった迷宮探索者の憂鬱
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第79話 聖女レオーネ

 聖女に会いに来たロキとアルマには、いくつか確認したい目的があった。

 まず一つ目は、聖女レオーネがルナと同一人物かどうかだ。

 貧民街で偶然出会った女性ルナと、迷宮踏破記念式典に出席した時に見た聖女レオーネ。

 表情が乏しかったレオーネに対し表情豊かだったルナという違いがあるが、その人相は間違いなく同一人物であった。

 一卵性の双生児だとか、世の中には瓜二つの人間が三人いるとか、ドッペルゲンガーという悪魔は姿かたちを全く同じ姿に化けるとかいう話を聞くし、いろいろな可能性もあるが、でもやはりルナとレオーネが同一人物であると感じた。

 だとしたら不可解なことがいくつかある。

 まずなぜ聖女があんな貧民街で一人炊き出しをしていたのか?

 そしてなぜルナさんが迷宮踏破記念式典で、自分たちを無視したのかということだ。

 聖女は自分たちの敵である勇者と共に迷宮探索をしているという。

 不安に感じているのは、もしかしたらルナさんが自分たちにとって敵対する可能性があるということだ。

 だがロキもアルマもルナに対して、良い感情を持っている。ルナが敵ではないと信じたい。

 それを確かめるためにも、ロキとアルマは聖女と直接会って確認したいと考えていた。


「どうぞ、こちらの部屋になります」


 神殿内でもそれなりに立場の高い司祭に、ロキとアルマは一つの部屋に案内された。

 ロキが神殿に大量のお布施を納めると、神官たちの態度が激変し、そして当初門前払いをくらった聖女との面会もすぐにできる手はずとなった。

 そんな聖女の待つ部屋の扉をくぐると、ロキたちの顔を見て驚く聖女がいた。


「ロキさん……」


「ルナさんですよね?」


 開口一番ロキが尋ねる。

 すると聖女レオーネは、ロキたちと一緒に部屋に入った司祭に向かって一言伝える。


「司祭、席を外してもらえますか?彼らは私の知り合いです」


 一瞬少し難しい顔をした司祭だったが、それくらい良いだろうと考えて聖女の訴えを受け入れる。


「知り合いだとしても、彼らからは多額のお布施をいただいています。しっかりと治癒魔法を行うように」


「分かっています」


 ロキたちは聖女の治癒魔法を受けに来たわけではないが、話がこじれると面倒なので特に何も言わない。

 司祭が部屋から出てゆくと、聖女はロキたちに向けて頭を下げた。


「ロキさん、アルマちゃん、騙していたわけではないのだけど、黙っていてごめんなさい」


「やっぱり。でもなんで違う名前を名乗っているんですか?」


「ルナというのが私の本名なの。出家して、神殿からもらった戒名がレオーネ。今は本当はルナという名前は名乗っていないの」


「そうなんですか。ではなぜあの時は?」


「あの時の私は仕事のお休みをもらっていて、聖女であることを隠していたので……」


「ああ、なるほど。それにしても、なんでわざわざ一人で炊き出しなんてやったんですか?聖女様なら神殿に指示してもっと大がかりにできたんじゃないんですか?」


 ロキは思ったことをストレートに聞いただけだったが、その質問がルナを困らせる。 

 悲しそうな顔で下を向いたルナに対し、ロキは何か変なことを言ってしまったかと思い謝罪する。


「すいません、変なこと聞いちゃったみたいで……」


「いえ、ロキさんが謝るようなことは何もないんです。実は、私は聖女といっても、何の権限も持っていないんです。もし私が貧民街の炊き出しをしたいと言っても、誰も相手にしてくれないでしょう。それどころか、そんなくだらないことをするなと怒られると思います」


「え?何で?」


 これにはアルマが疑問を覚えた。この世界では神殿は人々を救う組織だと考えられているからだ。

 これまでの神官たちとの対応で、ロキは現在の神殿の体質を見抜いていた。


「金にならないからですね?」


「そうです」


 ルナは悲しそうな顔で答えた。


「神殿は、お布施という名目でお金を神殿に納める人を優遇します。逆にお金を出せない人には、一切の救いを与えません。大きな組織ですから、全く見返りを求めないまま活動をするのは不可能だと言うのは分かっています。でも、それにしても皆お金に囚われすぎていて、大事なことを忘れている気がするのです」


「なるほど」


「それで、私なりに貧しい人たちに何かできないかと思い、少しずつお金を貯めてあの炊き出しを計画したんです。ですがロキさんとお話して、本当に私は力不足だなと実感しました」


「え、なんで?すごく頑張ってたじゃないですか?それにあの炊き出しも大成功だったじゃないですか?」


「いいえ。ロキさんと出会わなければお金をだまし取られたまま何もできませんでしたし、炊き出しして食事を施すだけでは一時しのぎでしかないと思いました。ロキさんのおっしゃったように、公共事業や一般国民向けの学校の設立など、継続的に貧しい人たちのための力となることをしなければならないと分かりました」


「ああ!そんなこと言ったっけ。すっかり忘れてた。そうですね!それも国王に言っとくかな」


「え?陛下に?あの、レオンさんの事は申し訳ありません。でも陛下といざこざを起こすのは……」


「あ、ああ。そのことなんですけど、レオンのことであの後国王陛下と話して、この国の構造改革をするって話をしたんです。それで国王陛下に力を貸してもらう約束をしたんで、公共事業と学校設立くらいなら頼まれてくれるんじゃないかな?」


「そうなんですか?やっぱりロキさんはすごい……」


「いや別に俺は大したことはないですよ。ブラック体質が許せないだけで。ともかく勇者の影響力が強すぎるのを何とかしないと、レオンも牢から出してもらえないんで」


「本当にレオンさんの事は、見て見ぬふりしかできずすいませんでした。私にできることがあれば何でもするのですが……」


 ここまで話して、ロキは当初不安に思っていた聖女への不安は払しょくされていた。

 ルナ=聖女レオーネは、自分たちの味方だ。


「それじゃあルナさん、教えてもらえませんか?勇者がロードする前。ルナさんたちが前回の未来で何があったのかを。そしてロードして以降、今まで何があったのかを」


 ロキが知りたかった、敵側の勇者の事情をルナ、聖女レオーネはゆっくりと語りだした。

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