第36話 32階層の捜索
前回までのあらすじ
ロキたちは遭難したペドロの仲間たちを救うために32階層へ向かった
ロキに遅れ、ペドロ、ココロ、アルマの順に、四人は32階層へと降り立った。
その景色は、31階層と比べてもあまり変わりの映えしない洞窟のような場所だった。
降り立った場所は通路の真ん中で、先に来ているペドロの仲間たちを追うには、右か左かどちらへ行ったかを考えなくてはいけない。
「ココロ、遭難者たちがどっちへ行ったか分かるか?」
魔物がどこにいるか察知する能力の高いココロに、ロキが尋ねる。
ココロは感覚を研ぎ澄まし、辺りの気配を探った。
だが、今この場所では何も感じられない。
「うーん……わかんない……」
「そうか」
ロキはそれを叱責するとも残念がるともせず、一つの事実として受け止める。
ココロはそんなロキを見て、何かもっと自分に要求されているような気がして、さらに考えた。
「あ!分かった!」
「分かったか?」
「足跡!」
ココロは遭難者たちの足跡を見つけた。
この32階層のここらの地面には、あまり人が通った跡がなく土埃がたまっていたが、ロキたちが今立っている場所から数人の足跡が続いているのが見て取れた。
「なるほど……」
そんな二人のやりとりにペドロが感嘆する。
「あんたこいつをそうやって育てているんだな?」
「え?」
「足跡があることに自分は気づいていてもそれをすぐに言わず、ココロに考えさせたんだな?」
「え?」
「そうか、探索者として誰もが成功するわけじゃない。そうやって後輩を育てて一人前にしていくのか……。俺たちにはなかった発想だ……」
戸惑うロキの代わりに、ココロが自信満々に答えた。
「まあな!」
もちろんロキは足跡に気づいていなかったし、ココロに考えさせようという意図もなかった。
★★★★★★★★
足跡を確認しながら先へ進むと、足跡がバラバラと散らばっている場所があった。おそらく魔物との戦闘が行われたのであろう。
魔物の姿がないので、すでに倒した後だということが分かる。
ロキたちはその場所から続いている足跡を追って、再び歩き出した。
先頭を歩くロキが、隣に歩くペドロに話しかけた。
「ところでペドロ、お前の職業は何だ?」
「俺か?俺は基本的に荷物持ちだ。索敵や罠解除なんかもやるが、戦闘ではあまり役に立てねえと思う。得物はコレだけだ」
ペドロはそう言うと腰に差したナイフを指さした。
「なるほど」
背負った大きなリュックを見るに、戦闘で使う以外の荷物を運ぶ役をしているようだ。それは地図やポーション類、そして迷宮内で回収したドロップアイテムなどが含まれるだろう。
「それは合理的な役だな」
「そう言ってもらえるとありがたい。レギオンによっては非戦闘員は役立たずと言われることが多いんだ」
「分からんこともないが、役割分担だよな。俺は一人で全部やることもあるから、負担が減ることはありがたいと思うけどな」
「それはそれで大変だな。役割分担もいいんだが、今回に限っては後ろで戦闘に参加しなかった俺だけが取り残されちまって、仲間がアリジゴクに落ちちまった。帰還のスクロールも俺が持ってたもんだから……」
それによって31階層から32階層に落ちたペドロの仲間たちは自力での生還が必要となったということだ。
「あんま気負うな。とにかく仲間を助けりゃいいんだ」
「あ、ああ……」
ロキに励まされペドロは少し明るい表情となる。
そんな雑談をしながらもう少し進んだところで、彼らは再び足を止めた。
「ここでも戦闘をしたようだな」
そこには先ほどと同じように足跡がバラバラとなっていた。
散らばる足跡の中から、再び続く足跡を探す。
「ん?」
ロキは思わず声を漏らす。
他の三人もすぐにロキの声の意味を理解する。
足跡がどこにも続いていないのだ。
あるのは人間の足跡ではなく、魔物のものと思われる丸い足跡くらいであった。
「これは……」
32階層に出没する魔物のことを知っているロキとペドロは、何があったのかを察する。
逆にアルマとココロは遭難者たちがどこへ消えたのか分からず、不思議がっていた。
「まずいな」
「ああ……」
ペドロの顔が当惑の色を見せる。
そんな二人にアルマが質問する。
「どこに消えたんですか?死体も見当たらないし……」
そしてロキが答えた。
「31階層は蟻の巣だったが、この32階層は蜘蛛の巣なんだ。いろいろなタイプの蜘蛛の魔物が出没する。死体がないところを見ると捕獲されて食料として巣に持ち帰られたな……」
「捕獲する習性があるのはケイブスパイダーかピンクタランチュラか……。この階層のケイブスパイダーは麻痺性の毒を持つ上位種だし、猛毒を持つピンクタランチュラだとしたらすでに死んでいるかも……」
二人の説明を聞いてアルマの顔色が変わる。
「とにかく急ごう。ココロ、魔物がどっちにいるか分かるか?」
「ケイブスパイダーは壁を歩くから足跡は分からねえよ……」
ペドロが絶望の表情でそう言う。
だがココロは黙って意識を集中し、魔物の気配を探る。
「あっち!」
「よし行くぞ!」
ロキはココロ指さす方向へと、迷わず歩き出す。
「え?なんで?」
ペドロは不思議がりながらも、彼らと共に進んだ。




