転生先は悪役令嬢ですのよ!オホホ!ヒロインも攻略対象もそこ退けどこ退け、私が通りますわよ! 5
帰り道の馬車の中、お母様がふふふっと笑って私に聞いた。
「ミチル、あなたはララ様をどう思う?」
「んー・・・良い子だと思う。
可愛いし、王様に可愛がってもらってるみたいだし。
ちょっと変だけど。」
ララの身に着けていた服には吉兆紋が入っていた。
あれは王様が許した者だけが身に着けられる紋だ。
それをララは当たり前のように着ていた。
鼻血で汚れて着替えた服にも同じ紋があったのだから、恐らく何枚もあるのだろう。
ミチルは目ざとくそれを確認して使えると判断したのだ。
さすがは寵姫の子供、姫でも立場はそこらの側室の王子よりかは待遇が上らしい。
「王様の子供全員にあの紋は与えられないもの。
与えられるのはお気に入りだけ。」
「おほほほ!さすが私の子供だわ!
幼いのにそこまでちゃんと見ているのね!」
お母様があっぱれ!というように扇をパチンっと鳴らした。
私は窓から見える街を眺めながら
「お母様は私とララが仲良くしていたほうが嬉しい?」
「もちろん。
将来使える駒は多いほうがミチルのためになるもの。
想像してみて。
ハナ妃がもしさらに子を産み、もしその子が男の子だったら?
今の皇后には自分が産んだ子がいないし、今後出来るかもわからない。
だからね、その時は裏から手を回してハナを皇后にしても良いと思っているの。
あれは私に借りがあるからラブリーハート家をもっと大事にしてくれるわ。
そしてララをうちの嫁にしたらどう?
きっと楽しいわよ。
王家の仲間入りですもの!
うちはもっと安泰に簡単に力を得ることができるのよ。」
「お母様、私にそんなことまで言っていいの?」
「ふふふ。
ミチル、あなたも今日から立派にラブリーハート家の為に動いてもらうから良いのよ。
たくさん遊んで仲良くしておきなさい。
そうそう、あなたにもう一つお仕事を頼もうかしら。」
「なあに?」
「余力があれば皇太子とも仲良くなっておきなさいね。
たまに皇后様のところへご機嫌伺いにくるようだから、もしかしたら会う機会があるかもしれないわ。」
今の皇太子は皇后が腹を痛めて産んだ実子ではない。
皇后の姉の子だ。
姉妹で王に嫁ぎ姉のほうが愛されて皇后になったが、その姉のほうは二年前に突然死した。
その姉の遺言で妹のほうが現皇后となっている。
だがそこに愛はないらしい。
ナリーの教えを思い出しながら私は頷いた。
「どちらに転んでも良いように、ね。」
「その通りよ。呑み込みが早くて助かるわぁ、本当に良い子ね、ミーちゃん。」
にこりと微笑むお母様に私は目をそっと逸らした。
たまにお母様は二重人格じゃだろうかと疑ってしまう。
ゆったりと呑気に微笑むお母様と、計略を巡らせるお母様、ふり幅がありすぎる。
ころりころりと馬車が小石を蹴る音が聞こえる。
速度がゆったりとしてきた。
どうやらそろそろ自宅に着くらしい。