地下故に
この作品の略称は、
「木れる」
にします。
「見つけたぞ!あの家を焼け!」
気付けば、結構離れていた家の方向から、そんな野太い声が聞こえた。
その声が聞こえたほうを見ると、何やら重そうな鎧を付けた男たちが数十名いた。
中でも豪華な鎧を着た男が、「焼け」と命令したようで、下っ端が火のついた棒を持っていた。
学校の林間学校の時に使ったトーチ棒に似ている。
キャンプファイヤーの後、いいように騙されて、キャンプの場所と正反対に歩かされたことを思い出すよ。
冷静に状況を認識し、思い出を振り返っていると、イネラが走り出していた。
「ダメッ!その家は、私とカケル様の家!」
イネラは、走りながらそう叫んでした。
その声に反応した豪華な鎧をきた男がイネラに叫んだ。
「イネラ様!どうしてそんな者と一緒におられるのですか!昔のように私の元へと戻ってきてください!」
その言葉にイネラは足を止めた。
俺はある意味思考が一瞬止まった。
……いや、流石にそれは無いだろう。
「あなた、誰ですか?」
「……その服……は?」
お偉いさん?突っ込むところそこ?
「カケル様が着せてくれましたが……?」
「なっ!?まさか。……貴様あぁ!服を着せるという大義名分を使って、イネラ様の裸を見たな!燃やせ!この家を燃やせ!」
……お偉いさんは、小児女児的容姿愛好者だったようです。
誤解が甚だしいが、今はそんなことで文句を言っている場合ではない。
とうとう家が燃え始めた。
ログハウスだったこともあり、火の回りが早い気がする。
どうするべきなんだろうか。
火が消えろ、とでも言えば良いんだろうが、それではまた火種から火を点けられてしまう。だろう。
都合がいい何か……何か……あ、あった。
「『ゲリラ豪雨が今降る』」
ゲリラ豪雨に限る。
雨によって、火は消える。
地下に暮らしている奴が、雨の事を知っている奴は少ない筈だ。
このお偉いさんが雨を知っていたとしても、下っ端は知らないだろうから混乱は必至だろう。
とか思ってると、早速雨が降った。
「うわぁぁ!」だの「なっ、なんだこれ!」だの「ひいいい!」だの「避けれねぇよぉ!」だの、下っ端が騒いでいる。
そして、お偉いさんがこう叫ぶ。
「騒ぐな!ただ水が落ちてくるだけだ!」
だが、下っ端はその言葉に聞く耳を持てるはずもなく。
混乱に陥っていた。
火はちゃんと消えている。
「貴様!一体何をした!」
お偉いさんは俺に顔を向ける。
イネラは、俺の元へ走ってきて、雨が怖いのか、俺に抱き着いてきた。
俺に巻かれたイネラの腕は、僅かだが震えていた。
「さぁ。まぁ一応対策しておくか。『雷の影響を、俺とイネラは受けない』」
そう言った直後、ピカッと空が光り、その数秒後に轟音が辺りを支配した。
「な、なんだ今のは!?」
お偉いさんがそう叫んだ。
「ひっ!?」
イネラも小さく悲鳴を上げて、俺を抱きしめる力が増した。
役得である。
しかしまぁ、知らないだろうなぁ。
雨ですら限られた人しか知らないんだ。
「雷なんて、尚更だろうな。さぁて、次はどこに落ちるかなぁ」
そう。俺が起こしたのはゲリラ豪雨だ。雷が落ちてもなんら不思議はない。
雷がどんな所に落ちるか。
そんなことは簡単だ。
電気が通りやすい場所。
つまりは、金属な訳で。
お偉いさんも下っ端も、全員鎧を着ている訳で。
そんな鎧は、金属な訳で。
目の前が真っ白になったと同時に、轟音が響いた。
先ほど、『雷の影響を、俺とイネラは受けない』と言ったばかりなので、光のせいで眼が痛いとか、轟音のせいで鼓膜が破れたとかの被害は一切ない。
それでも条件反射で、眼はつぶってしまう。
そして、数秒経ち眼を開ける。
そこに、立っている者は俺とイネラ以外にいなかった。
イネラの俺を抱きしめる力が無くなっていたので、イネラの顔を見てみると目を瞑っていた。
雷の影響で失神でもしたんだろう。
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寝そべっている男たちは、地下につながる扉の前に積み上げた。
イネラは、制服のままベッドに寝かせている。
俺は隣で看病している。
しかし、制服姿で美少女が寝ているわけで、その美少女は抵抗できる状況ではないわけで、その美少女は俺の奴隷というわけで。
「……我慢できね。」
このあと、俺がしたことは、イネラを抱き枕にして俺も一緒に寝たことだ。
別に不純異性交遊はしてない。
するとしても、同意を得た時だけだ。
今回、ゲリラ豪雨に天気変えて、イネラ抱き枕にしただけ。