始まりで終わり
今回がドラゴンボールみたいな作り方だったら、この話だけで3話は行ってた。
今回、三人称視点で始まります。
途中で翔視線に戻ります。
翔に刺さった木は、地面から水を吸い上げるように、翔の血を吸い始めた。
一秒ごとに200mlごと吸われている。
その光景を見て、イネラも、栞も、ノニケールも、動きを止めた。
信じられない。その思いが、思考と反応を遅らせた。
「なっ、息が……これじゃ……喋れな…い。」
翔は声を出そうとしたが、木によって肺に穴が空き、喋ろうにも肺から息が漏れ、ほとんど喋れなくなっていた。『俺はどんな状態でも喋れるし、この能力はどんな状態でも発動する』と、確かに言っていたのだが、この場合、一つ穴があった。
確かにこの場合、喋ることはできる。現に、今もわずかだが喋ることができた。
だが、『ずっと喋り続けることができる』とは言っていないのだ。
「どうした!まさかこれで終わりじゃないよなぁ!」
シラカバは、この翔の状況を全て把握している訳ではないが、翔が絶望的な状況に陥っていることを察知し、勝ち誇ったように言った。
「……まだ……だ。」
翔はイネラと栞を見ながら、そう言った。
ノニケールには、拳を出していた。
その目にも、その手にも、「信じてる」という意思がはっきりと感じ取れた。
そして翔は、血を3分の1以上を吸われて、目を閉じ、手が下がった。
翔の目を見て、イネラが駆け出した。いつぞや翔によって創り出された、『なんでも切れる剣』を構えて。
翔の手を見て、ノニケールが翔に向けて手の平を向け、呪文を唱える。
栞は、立ち尽くしていた。
「フハハハ!これを見て歯向かうか!お前らも同じ目に合わせてやる!」
一連の動きを見て、シラカバは嗤いながら木を伸ばした。イネラとノニケールに向かって。
シラカバの声など無かったことのように、イネラは剣で断ち切った。
翔に刺さった木を。
自分に向かってくる木を。
ノニケールに向かっていく木を。
だが、切った木とは別に気が伸び、翔もイネラもノニケールも狙われる。
「無駄だ!いくら切ったところで、木は無限に出てくるぞ!」
シラカバは嗤いながら勝ち誇る。
だが、シラカバはミスを犯した。
栞がノーマークだったのだ。立ち尽くしている栞を見て、シラカバは勝手に無害認定していた。つまりは油断したのだ。自分が有利だと思い込んで。
戦場において油断は禁物。油断したツケが、シラカバへ帰る。
シラカバが高笑いした直後の静寂。
その静寂を切り裂くように、栞が力強く言った。
「『天邪鬼の号令』」
翔の目を見て、栞は思い出していた。
自分が死んだ直後のことを。
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「分かったよ。恋する乙女を応援するのも女神の仕事だしね。希望する力とか物とか、二つまでならなんでもかなえるよ。」
女神ならさっきの口調で話したほうが……とも思ったけど、余計なことを言うのもよしておこう。
まずは確実に翔君に会わなくちゃ。
「私をその世界に送る時、私を翔君の隣に置いてください。」
「いや、そんなことは当然だから安心してもらっていいよ。さ、二つ力なり物なり言ってみて。」
ありがたい。
でもなぁ、特に欲しい物も無いしなぁ。
「翔君の支えになれる力を二つ下さい。」
その言葉を言った後、女神さまは笑った。
「栞ちゃんは賢いなぁ。さぁ、目を瞑って?」
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『天邪鬼の大号令』
栞は、無意識の中で言っていた。
言っている最中は、何を言っているのか、何故言っているのか分からなかったが、翔を支える力としての一つだと、すぐに気づいた。
天邪鬼
わざわざ人の心を読み、反対の行動をして人を困らせる。そんな日本古来の妖怪。
だが天邪鬼のルーツは、神だ。
人を困らせることだけに、事象を反転させる力を使っている。
だが今回、その力の使用用途が変わった。
事象の決定力は、反転させるということを考えても、天邪鬼が最強だろう。
そんな天邪鬼が、大号令を出した。
その結果は、字面だけでも分かるようなものだろう。
翔、イネラ、ノニケールに向かって伸びるその木は、全てシラカバに向かった。
今まで操っていた木が、自分に向かってきている。
その意味不明な状況に、シラカバはうろたえることしかできなかった。
「なっ!?来るな!来るなぁ!!」
シラカバは確かに木を創り出せる。木を操れる。だが木が無害な訳ではない。
だからこんなにもうろたえている。
「おいおい。自分がその状況に置かれたら、喚いて逃げるだけかよ。」
翔が、うろたえているシラカバを見て、シラカバを嘲笑した。
ありえない!といった表情で、翔の方を見つめていた。
「なっ!?翔!お前どうして!」
「ノニケールが回復してくれたんだよ。」
「神の使いを、舐めないでください!」
実際は、栞の『天邪鬼の大号令』によって「翔が死んだ」という事象が反転したのだが、栞も気付いていなかったので、栞は何も言わなかった。
「こっちはもう一回死んでんだ。お前も一回ぐらい死んどけ。」
翔は、当然だろうと言いたげな顔で、シラカバにそう告げた。
「辞めろ!なんでもする!なんでもするから!!」
シラカバは、木に刺されるのではなく括られていて、十字架に磔にされているような状態になっていた。
顔は汗と涙でぐしゃぐしゃになっている。
「なんでもできるんで結構。…‥じゃ、出血多量で死ね。」
そう言って、翔は磔にされているシラカバの両手首と両足首を切り落とした。
十数秒程は喚いていたシラカバも、三十秒程したところでがっくりと項垂れた。
「死んだ……よな。」
そう言うと、翔は躊躇なくシラカバの首を斬った。
——倒してくれてありがとう。あなたに今から贈り物をします。
気のせいか?今リロの声が聞こえた気がするんだけど。
やけに女神っぽい声なんだけど、いきなりどうしたよ。
「気のせいではありません!」
そんな声が背中から聞こえた。……まさかな。
「ふぇええ!!??リロ様ぁ!?な、ななななんでここにぃ!?」
ノニケールが、俺の後ろを見てそう驚きに満ちた声で叫んでいた。
……女神がこんな血生臭い場所に顕現してんじゃねぇよ。
「ロリ神様。仕事どうしたんですか?早く帰って下さいよ。こっちも早く終わらせますから。」
仕方なく後ろを向いて、そう言った。俺の目は今、物凄く冷え切っているだろう。
俺がきつく言ったにもかかわらずなぜだかリロは、顔を伏せてこう言った。
「……あの、能力ポンポン渡してたら、追放されちゃって……。……でも、ちゃんと女神の力はあるんですよ?」
「もう、あんたが世界救えば良いんじゃない?」
「そんなこと言わないでください!」
微妙な空気が流れて沈黙が流れたのだが、そんなものは無かった、と言わんばかりに、リロが次の言葉を発した。
「……できればでいいんですが、一人でいるのも寂しいですし、お供させてくれませんか?」
俺は少し悩んで、こう言った。
「イネラ、栞、ノニケール。悪い、これ以上増やさねぇから。」
「しょうがないですね。これで最後ですよ?」
「女神様入れないほうが凄いよね。」
「ちょっと私の肩身が狭くなりそうです……。」
イネラはため息交じりで、栞は当然だろうという感じで、ノニケールは露骨に肩を落としてがっくりと項垂れながら、反応していた。
「ありがとうございます!」
「気づくのおせぇよ。じゃ、次の大陸行くぞ。」
「「「「はい!」」」」
元気のいい4人の返事を聞いて、とりあえず野宿だけは絶対にしないようにしよう、と俺は心に決めた。
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その後、翔、イネラ、栞、ノニケール、リロ、の3人2柱というカオスな一行は、各大陸にいる、木を創り出す存在を倒していった。
各大陸に接する谷にいる、裏ボス的な「植物を従える者」を倒して、この世界に完全な平和をもたらした。
翔は、世界を救った「英雄」として。
イネラは、英雄を支えた「奴隷」として。
栞は、英雄を守った「賢者」として。
ノニケールは、英雄を導いた「天使」として。
リロは、英雄を召喚して「女神」として。
この世界に永遠と語り継がれていったという。
木を切ったら世界が救われるってどういうことですか?完
唐突ですが、これで「木れる」はお終いです。
翔の名前は、最初から「九」つの「地」と一「ヶ」の「谷」を「翔ける」ものとして考えていました。
栞は、世界に記憶を残すの者、みたいな感じで栞にしたんですがね……最後で綺麗にまとまんなくなったので「賢者」としました。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
もしかしたら、翔達に他の作品で出番があるかも…‥




