精霊王会議
良い子は寝てる、真夜中である。
「精霊王会議!」
火の精霊王エンが声を上げる。
他の精霊王達が嫌そうな目を向ける。
「クロクロ様から、ご褒美をずっと戴いてるズルい奴が居る!」
エンがいきり立つ。
「居るわねぇ・・・戦闘にも参加しませんですしねぇ」
水の精霊王カイが同意する。
「あいつかぁ、うむズルいなぁ」
地の精霊王ヘキが頷く。
「くそう俺が代わりたいぜ」
風の精霊も悔しそうな声を上げる。
「「「「あの闇精霊の野郎!!!!」」」」
闇の精霊王アン、彼の普段の仕事は聖女クロクロがいつも座る大鎌を持ち上げ運ぶ事であった。
移動椅子として。
可視化するとクロクロのお尻の下で、四つん這いになっている闇の精霊王見えるだろう。
・・・あれ魔法で浮いてるんじゃなかったのかよ・・・
つまり、移動中はずっとクロクロの下敷きにされてるのである。
業界では、ご褒美というやつだった。
「くっ・・・羨ましい」
ダメな精霊王達であった。
その大鎌はというと、クロクロが寝ているため、そばの岩に無造作に立て掛けてあった。
フクロウが柄の先に止まりホーホーと鳴いている。
ちなみに大鎌の名前は「カラミティ」
一応伝説級の武器のひとつだが、扱いは箒とかと同レベルの扱いだった。
他の精霊王の声を聞いたのか、闇精霊が大鎌からじんわり抜け出てくる。
フクロウはビックリしたのか慌てて飛び去る。
「いいっすかー、いいっすよねー、そもそも俺っちしか椅子役出来ないじゃん?」
闇精霊は、びみょうに軽い口調だった。
「まずエン、お前は熱すぎ。お前が椅子役だと、クロクロ様が火傷するじゃん」
「くっ・・・確かにおれの熱いパトスは止められない」
エンはうなだれる。
「がんばって暖かい程度に熱量下げれるようになれば、冬に湯たんぽ代わりにしてもらえるかもじゃん?」
「ぉぉおおぉおぁあ、闇精霊王様、それはいい考え!俺、頑張る」
様付けになっていた。
「次にカイ、お前がやるとクロクロ様が、びっちょりと水で濡れるじゃん」
「はぅ・・・でも濡れたクロクロ様も素敵よぉ」
カイは悶える。
「確かに萌えるじゃん・・・が、クロクロ様が風邪ひいてしまうじゃんよ!」
「風邪をひいて上気するするクロクロ様もいいでわすよぉ」
「いい加減、黙れじゃん」
変態相手は疲れる。俺っち学習した。
「ヘキ、お前は動きが硬くてしかもゴツゴツじゃん、クロクロ様も座り心地が悪くて嫌って言ってたじゃん」
「・・・のぉおぉおおお」
ダイレクトだった、ヘキは砂になって消えそうになっている。
「そ・・・そのうち、いい事もあるじゃん」
アンは何かフォローしようと思ったが、思いつかなかった。
「それからフウ、お前だとクロクロ様のスカートを風でめくり上げるじゃん、というかワザとやってたじゃん」
「・・・なんのことやら」
目線が泳いでいた。
「お前他の精霊王より見えづらい事をいいことに、こっそり色々しているの俺っち知ってるじゃん」
「そ・・・それは内密にしていただきたく・・・」
そういうと、フウは空間から何やら薄い布地をとりだしアン渡す。よほど大事な物なのかフウは血涙を流している。
「・・・これはクロクロ様の・・・おパン・・・く・・・くるしゅうないじゃん」
賄賂が成功したらしい。
「消去法で、俺がこの聖なる役目をしてるじゃん」
聖なるって・・・
「しかも俺っちの特性で、お肌の大敵、紫外線だって防ぐじゃん、クロクロ様の玉のお肌は俺っちが守ってるじゃん」
闇の精霊王はUV対策能力付きだった。全女性の味方だった。
「くっ・・・いいなぁああ・・・ちきしょう」
反論ができなくなった精霊王達が人を殺せそうな目でアンを睨らんでいた。
「みんなー僕のこと忘れてない?ハァハァ」
革袋の中から、脳天気な声が聴こえる。息遣いが荒いが大丈夫か?
そして、シュルっとという音とともに袋の閉じ口が開き中から光り輝く精霊が現れる。
「「「「・・・誰だっけ」」」」
全員がハモる。
「光の精霊王メイだってばー」
フルフルしながら反論する。
クロクロが使役する精霊王は全部で六柱であり、この光の精霊王が最後の一柱である。
「あぁ、ずいぶん見なかったから、忘れてたぜ」
メイは数カ月前、夜中にさんさんと輝いてたせいで、安眠できずキレたクロクロに革袋に詰め込まれ、そのまますっかり忘れられていたのだ。
「これが放置プレイなのですね、ハァハァ」
当の本人は逆に悶え歓喜していたのは、消したい事実である。
「アン君も素晴らしいご褒美を承ってるけど、僕なんか24時間ずっとご褒美中なんだよハァハァ、羨ましいだろうハァハァ」
どや顔をするメイ。
変態に下手なお仕置きはご褒美になるから注意だ。
メイを除く精霊王の全員がサングラスをしていた。
そして何故かプルプルしていた。
いつの間にかメイの後ろに、ゆらーりとクロクロが立っていた。目の下にクマがある。
「ま、ぶ、し、い、の、で、す、わ」
後ろからメイの首をきゅっと締めると、そのまま革袋に投げ入れ口を閉じた。
そして縄で厳重にぐるぐる巻きにする。
「あぁ、この縄の感覚・・・いい!新感覚!ハァハァ」
とかいう声が漏れ聞こえた気がするが、クロクロは無視した。
そしてクロクロはもぞもぞと寝床へ戻っていった。
「・・・あれ・・・いいなぁ・・・しかも今回は縛り付きだ・・・なんて高度なんだ・・・」
実は放置プレイにも憧れていた、精霊王達であった。
変態が増えてきたorz