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moderato.  作者: 奏多
51/56

#51 想い

私はただ、泣き続ける優也を抱きしめるしかできなかった。




「大丈夫だよ」



とか



「優也ならできるよ」



なんて言葉を、口にするのは簡単だけど、




そんなものを、容易に発するなんて、できなかった。




大人びているとはいっても彼はまだ学生で。




正直、まだ家族の優しさが必要な年齢なのに。




彼はそんな優しさに、甘えることが許されないなんて………。




「…優也、話したくなかったこと無理に聞いたのに………私、何にも言ってあげられない……。頼りなくて、本当にごめん………」




仕事のデスクワークはできるのに、




大事な人が困ってるとき、必要な言葉もわからない。




そんな自分がたまらなく嫌だ。






「……いぃ。……香帆さんが傍にいてくれたら、それでいぃ……」




そう言って、抱きしめてる私の背中に腕をのばした。




「本当に?私、何にもできない………」


「変に言葉をかけられるより、こっちのほうが全然いぃ……」




それから私たちは交わす言葉もなく、誰もいない店内で抱きしめ合っていた。






ふっと私の肩から顔をあげ、顔を覗き込んでくる優也。




「ゆぅや……?」




完全にもらい泣きで、目がうるうるの私。



格好悪いから見ないで………っ。




「わっ私……!////」


「俺……………













…………香帆さんが、好きです」

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