1. 異世界なのに、デジャブ
そこは、剣と魔法が支配する異世界「グラドニア」。
……のはずなのだが、立ち並ぶレンガ造りの建物の合間には、なぜか見覚えのある「自動販売機(魔力駆動)」が設置され、空を飛ぶワイバーンの背中には「ウーバー・ワイバーン」のロゴ入りボックスが背負われている。
「トール、まだ? お腹と背中がくっついて、もう魔法が使えそうだよ……」
広場の隅、キャンプ用の折りたたみテーブル(魔導式)に突っ伏しているのは、ライラック・トルマリン。宝石のような瞳を空腹で虚ろにさせながら、彼女は相方の背中に声をかけた。
「あと少し。今、オークの脂身をテフロン加工のフライパンでカリカリに焼いてるところだから」
トール・グシュタードは、使い込まれた現代風の包丁を鮮やかに操りながら、手際よく調理を進めていた。彼はこの世界では珍しい「料理を愛する冒険者」だ。
「よし、隠し味に……リーマル、例のやつはあるか?」
トールが振り返ると、そこには眼鏡をクイと押し上げ、分厚い手帳をめくる男が立っていた。
「もちろんです、トール。東方の島国から密輸……もとい、正規ルートで仕入れた『万能調味料・マキシマム』と、ついでに最新型のガストーチを用意しておきました」
リーマル・サンクスール。このパーティーの「参謀」であり、あらゆる物資をどこからともなく調達してくる謎の男である。
「助かる。リーマルがいなかったら、この世界の強火魔法だけでチャーハンを作る羽目になるところだった」
「お安い御用です。ちなみに今回の仕入れ値は合計で『15円』。経費で落としておきますね」




