14
場所を店から母屋へ移し、二人はテーブルを挟んで向かい合って座っていた。張り詰めた空気には不釣り合いなアップルパイと紅茶の甘い香りが、ほんのりと漂っている。
「砂糖とミルクは?」
「いえ、いらないわ。それより」
「どうしてラグトさんを知っているのか、ですか?」
「えぇ」
聞きたいことは他にも山ほどあるはずだ。それでも、真っ先に口を衝いて出たのは、その名だった。
シェイラも、これ以上引き延ばす意味はないと判断する。一口だけ紅茶を含み、カップを静かにソーサーへ戻した。
「アマリリスさんはヴィラスの森から、どうやってこの店へ来たのか覚えていますか?」
「いいえ。気づいたら、あのお店にいたわ。特に違和感もなかった」
「あの鏡は、誰彼構わず選んでいるわけではありません。あれは人を選びます。選ばれる者には、おおよその共通点がある」
「選ぶ…つまり、鏡に意思があるということから?」
「その通りです」
一拍置いて、シェイラは言葉を続ける。
「共通点の一つ目は、生きている者であること。二つ目は、渇望するほどの想い人がいること。三つ目はその想い人が、死者であること。この三つです」
「……鏡が選んでいるなんて、信じ難い話だわ」
「それでも事実です。魔法契約が交わされた以上、虚偽を述べる意味はありません」
あまりにも断定的な口調に、アマリリスも理解したのだろう。嘘ではない、と。
それでも納得には至らず、ただ黙って、探るようにシェイラを見つめ続けていた。




