↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪夢の魔女は星を宿す  作者: かなゑ
始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/28

13

「え、いつの間に扉…」

「アマリリスさんが考え込んでいる間に、ですね」

「そう、なの。これはどこに繋がっているの…?」


地獄へ誘う扉ではないかと、ふと考えてしまい、恐る恐る質問する。


「っふ、安心してください。アルスの記憶を移動するだけですよ」


扉を開けて潜り抜ける。質問攻めにしたい気持ちはあったが、精神的な疲労もあり、黙ってついていくことにした。

目の前に現れたのは、少し成長したアルスだった。


「なあ、ケイミー」

「なぁに〜」

「あいつら、今日こそ上手くいくかな?」

「どうだろ〜。二人ともモジモジして進まないからな〜」


話し終えると、二人はニヤニヤと顔を見合わせている。


「誰の話をしているのかしら?」

「……わたしはこの記憶をすでに、一度視ています」

「そうなの?じゃあこれは誰の話なの?」

「最初に言っておくと、ベラさんとレイさんです」

「あら、あの二人そんな関係になったの?」


二人は何も知らず、楽しそうに笑っていた。

その姿が、あまりにも無邪気で。


「お似合いね」


アマリリスの声に、シェイラは答えなかった。

やや引っかかりはあったが、二人が部屋から出たため、追いかける。

いくらか歩くと、探していた人物を見つけた。


「アマリリスさん、ここからは視るなら覚悟を」

「どういうこと?」

「ここから先は、人が死にます」

「え、それって……」


それが誰なのか、なぜなのか。問いを口にする前に、事態は動き出していた。


「あ、いたいた。ベラ姉〜!」

「ほんとだ。ベラー、今日こそモジモジせず──」

「二人とも!逃げなさいっ!!」


その声は、必死そのものだった。

遮られて見えなかった二人の姿が、はっきりと見える。

そこには、隠しているはずのサードアイを晒し、傷だらけの身体で立つベラがいた。

レイも片腕を失い、血を滴らせながら、ただ彼女を守るように前へ立っている。


「え、ベラ姉……?なに、それ……」


ケイミーが、やっとの思いで言葉を絞り出す。

アルスは、ただ立ち尽くしていた。


「みつけた」


突然、底冷えするような声が地を這う。

姿は見えない。だがこれは──人ではない。直感でわかった。

二人とも硬直していたが、ケイミーが一歩、前へ出ようとする。


「──っ!ベラ姉!!」

「来るなっ!馬鹿ガキ」


レイが叫ぶと、ベラはこちらを見つめ、静かに微笑んだ。


「生き延びて。大好きよ。あとは頼んだわよ」

「ベラね──」


後ろから口を塞いだのはアルスだった。無理矢理に身体を引き、走り出す。


「助けなきゃ!離してよ!アルス!!離し──」

「俺だって助けたいっ!!でも、あれは無理だ!」

「そんな……嫌よ、嫌、嫌……」


声を震わせながらも、足は止まらない。

用意などしている暇はない。とにかく、少しでも遠くへ行かなければならなかった。


「ねえ、助けられないの……」


二人を追いながら、アマリリスがぽつりと呟く。


「記憶に、干渉はできません。過去は変えられないんです……」

「あの二人はどうなったの」

「二人とも、あれに殺されてしまいました」

「そんな……あれは何者なの!?」

「わたしにも、はっきりとはわかりません」


初めて聞く「わからない」という言葉だった。

その瞬間、背後の空間が、わずかに歪んだ。振り返ってはいけないと、本能が告げる。


「どこへ行く」


じわりと汗が滲み出る。

まただ、またあれがいる。

ここに来たということは、あの二人がどうなったのかなど、考えるまでもなかった。その場にいた全員が、ゆっくりと振り向く。


「ベラ、姉……」


背後から、震えた叫び声が聞こえた。


「──おい、てめぇ。その汚ねぇ手を、ベラから退けろよ」


あれの手には、血に塗れたベラが掴まれていた。


「ほう。我を目の前にして、正気を保っているとは。やはりか」


まるで言葉通りに従うかのように、あれは無造作に手を離す。

支えを失ったベラは、そのまま地面に横たわった。


「何故」

「あ?」

「何故、殺した」

「あぁ、この女か?……これは、おまけだ」


空気が、凍りついた。


思わずアマリリスへ視線を向ける。彼女はシェイラの予想に反して、誰よりも怒りを露わにしていた。


「許せない……あいつ、絶対に、殺してやるわ……」


まるで自分に言い聞かせるように、あるいは誰かに誓うように、吐き捨てる。


「これ以上の会話は無駄だ。貴様らも、どうせ死ぬのだから」

「どうして、わたしたちなの……」

「無駄だと、聞こえなかったか?」

「答えてっ!」


気圧されてもおかしくない状況で、ケイミーは一歩も引かなかった。

だが、その必死さすら、赤子の首を捻るかのように、あれは嘲笑で返す。


「いいだろう。その度胸に免じて教えてやろう」

「っ──」

「貴様らが一番理解しているのではないか?思い当たることがあるだろう」

「俺らの力のことか」

「そうだ。そこまで分かれば十分だ。あとは知る必要もない。時間もない……お遊びは終わりだ」


アルスをちらりと見ると、あれはニヤリと得体の知れない笑みを浮かべた。

それは一瞬だったが、時間が引き伸ばされたかのように、鮮明に焼き付く。


「──アルス」


飛び出したのは、ケイミーだった。

抱きつくようにして、アルスの方へ倒れ込む。

静かに視線を落とすと、身体に空いてはいけない空洞が見える。

アマリリスは声も出ず、手で口を覆っていた。


「ケイミー?お前、なに、してるんだよ」

「にげ……な、さい……あなた、だけ、でも……はや、く」

「なに言ってんだよ!?お前を置いていけるわけ──」


「ほう、動きを見破るとは素晴らしい。ますます欲しくなった」


あれが、こちらへ歩み寄ろうとした、その時だった。

足が、止まる。


伸ばされた手が、あれの足を掴んでいた。

それは、紛れもなくベラのものだった。


「わたしの家族に……手は、出させない」


一瞬、目を見開いたあと、あれは薄ら笑いを浮かべる。やがて、ケタケタと笑い声を漏らし始めた。

アルスは、腕の中のケイミーを強く抱きしめながら、ベラを見る。

視線が交わり、ベラは微笑みながら、何かを告げた。

同時に、ケイミーも小さな声で、詠唱を始める。


「吾はケイミー。水よ、渡れ……継承者は、アルス……時至り、手助けとならん折りに、現れよ」

「おい、なにしてんだよ……」

「受け取り、なさい……最後の、プレゼントよ。馬鹿アルス……ふふっ」


アマリリスには理解できなかった。

あれを前にして、どうして逃げられると思えるのか。

どう抗っても、勝てる相手ではないはずだ。


だが、その考えを嘲笑うかのように、ベラが告げる。


「……間に合った。あなたの負けよ」

「小賢しい人間だ」


射抜くような、重苦しい視線。

それでもベラは、微笑んでいた。


「ざまぁみろ」

「実に腹立たしいが……今回は我慢してやろう。次は、必ず」


圧倒的に有利な立場にありながら、まるで退く理由ができたかのように、あれは身を引く。


「どこに行くんだい?僕が来たのに」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。