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黒の聖女と白銀の騎士  作者: 赤葉響谷
第2章 『機械仕掛けの神』編
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エピローグ

「アイテム回収を優先するあまり防御が間に合わず、一歩間違えれば死ぬところだったと。なるほどな。お前は今回、もっと安全にあの危機を乗り越える手段を持っていながら、一歩間違えば命を落とす危険な行動を選択したと」


 現在、私は目を覚ましたあとに気を失った私をずっと看病してくれていたクロード神父に何があったかを説明し、その後自室のベッドの上で正座しながらクロード神父の説教を受けていた。

 どうやら、私が気を失った後に落下する私をクロード神父が助け出し、そのまま現場の混乱を収めるために後から駆け付けた教会関係者に指示を行った後で私を家まで運んでくれたらしい。

 因みに、私に何があったかを説明する前にユリちゃん達のことを教えてくれたのだが、結局カストルとポルックスの2人はユリちゃん、ジルラント様、ライアーくん、ドロシーちゃん、オルランド様、ミリアさんの6人を同時に相手しながらも互角の勝負を行い、ユリちゃん達が辛くも勝利を収めたが取り逃がしてしまったらしい。

 あと、その後もしばしの復旧作業を挟んで通常どおり年越しに向けたセレモニーが再開されたため全員まだ王城にいるらしい。


「いや、その……一応『不屈』で即死は防げるし、私の【竜皮(ドラゴンスキン)】があれば落下くらいじゃダメージを受けないかなぁ、と。それに、そっちがダメでも【神域】の影響で魔力を含まない攻撃は無効化されるから、たぶんそっちで落下ダメージは無効になったんじゃないかなぁ、って」


「だが、本当にその2つのスキルで落下による衝撃を無効化できるかは試したことなんて無いんだろ? それも気を失った瀕死の状態で。そんな状況でもしもがあった場合はどうするつもりだったんだ?」


「……そこまで深く考えていませんでした」


「いや、自分の命が助かる方法を最優先で考えるのが普通やろ」


 呆れたような口調でテーブルに腰掛けていたエルがそう発したことで、私は「はい、おっしゃるとおりです」と体を小さくしながら返事を返す。


「で? あの人型の魔道具を再び作っているだろうことは薄々気付いていたいから今更何も言わないが、その命を賭けてまで回収したアイテムはそれほど重要な物だったのか? と言うか、この際隠し持ってるああ言った魔道具について全部説明してもらうからな」


 その後、私はクロード神父に内緒で作っていたアイテムや装備、魔道具などを次々に『収納空間(アイテムボックス)』から取り出して(勿論、大きさ的に部屋に入りきらないやつは取り出さずに口頭だけで)説明を行っていく。

 その途中、エルは「これ、長くなりそうやしウチは屋根の上でパレードの花火でも見とくわ」と出て行ってしまった。

 そして、最後に今回命懸けで回収した『至高の宝珠ハイエレメントジュエル』の説明と実物を見せると、クロード神父は険しい表情を浮かべながら『解析技巧(アナライズ)』で『至高の宝珠ハイエレメントジュエル』を詳しく鑑定したあと、重いため息をつきながらそれを私に返すと同時に、険しい表情を浮かべたまま口を開く。


「お前、このアイテムのことは絶対他人に話すなよ」


「え? うん、元々誰にも話すつもりは無いよ」


「絶対だぞ。もし、そのアイテムの存在が世間に知られれば下手をするとそいつを求めて戦争が起きかねないからな」


「そんな大袈裟な」


 こんな時に冗談を言うなんて珍しいな、と思いながら私は笑顔を浮かべながらそう返したが、対するクロード神父の表情には一切の笑顔は浮かんでおらず、その表情を真剣そのものだった。


「大袈裟でも冗談でも無いからな。鑑定の結果、その『至高の宝珠ハイエレメントジュエル』に蓄積出来る魔力量は現在世界中で発見されている類似した古代の遺物(アーティファクト)と比べても桁違いの量だ。それに、そう言った大容量の魔力を蓄積出来るアイテムの製造法は遙か昔に失われているため、そのアイテムの半分程度の蓄積量である古代の遺物(アーティファクト)を巡って過去に何度か戦争が起こっていることを考えると、間違い無くその存在が知られれば帝国辺りが攻めてくる可能性が高いだろうな」


「ええ!? でも、これって(多少のずるはしたけど)普通に『道具錬成(アイテムクリエイト)』で作れたよ! だったら、同じスキルを持ってる人だったら誰でも作れるよね?」


「いや、勘違いしているみたいだから教えておくが、同じスキルを使えるからって必ずしも同じことができるとは限らないからな。そもそも、お前が作っている良く分からない魔道具の大半をほとんどのやつは作れないし、お前が普段装備しているドラゴンの素材を使った防具も普通は作れないからな」


 今更知らされる衝撃的な事実に、私は思わず言葉を失う。

 ただ、良く考えてみればドロシーちゃんが『相場の2倍の値段良いからアイテム作成をお願いできないか』と良く素材を持って来ていたが、あれはその依頼の品を私しか錬成できる人がいないからだったのかとようやく納得する。(因みに、ドロシーちゃんの頼みなので私は遠慮するドロシーちゃんに『相場の半額で良いよ』と全ての依頼を受けてきた。)


「とにかく、お前はもっと自分が特殊な存在であることを肝に銘じて迂闊な行動は避けるように。それに、もうどれだけ言っても妙な物を作るのは止めそうに無いからこれ以上は言わないが、それでもせめてどう言った物を作るかくらいは事前に報告するように」


「……私がどんな物を作ってても怒らない?」


「いや、流石にヤバい物を作ろうとしてたら止めるかなら」


「えー」


「えー、じゃない。と言うか、お前はそんなヤバい物をまだ作るつもりなのか」


 呆れたようにクロード神父はそう告げるが、別に私も好き好んでヤバい物を作ろうとは思わない。

 ただ、私はそこまで大した物では無いと思っていてもクロード神父的にはアウトなアイテムもあるだろうから、ロマンを追及する上である程度のところまでは容認してもらいのだ。


「もし、その条件が呑めないのなら国王陛下にお願いしてお前のダンジョン挑戦を全面的に禁止してもらうからな」


「うっ、それは困る。……はあ、分かった。でも、きちんと用途とかを説明して安全性が確保できるやつは許してね」


「分かった、約束しよう」


 こうして、年の終りに再び起こった大事件は特に人的、物的被害を出すことなく無事に解決を迎えるのだった。

 ただ、結局事件の首謀者であったエルキュールやその仲間であるカストルとポルックスの2人を捕えてわけではない。

 そのため、再び今回のような事件を引き起こす危険性は排除出来たわけでは無い。

 だからこそ、次にどんな事件が起こったとしても無事に切り抜けるため、今以上に力を付けることを密かに心に誓うのだった。




――――――――――――――――――




 その小さな影、パンダのぬいぐるみの姿をしたエルは1人屋根の上で打ち上がる花地に視線を向けていたが、やがてその背後に2つの気配が現れたのを察知して声を上げる。


「カストルとポルックス……いや、アオイとレンか」


 そう告げると同時、エルの背後に現れた赤毛の女性と青髪の青年は片膝を付いてエルに頭を垂れる。


「エルキュール様の命じられたユリアーナ達の足止め、無事果たしました」


 赤毛の女性、カストル改めアオイがそう告げるとその隣の青髪の青年、ポルックス改めレンも続いて声を上げる。


「しかし、事前に説明を受けていたにも関わらず、敵の戦力を見誤り危うく返り討ちに合うところだったことについては、お叱りを受けるほかありません」


「あー、別にそこは気にしてへんからええよ。そもそも、ユリアーナの方もアイリと同じく転生者らしいから、本来ウチが知ってるんよりいろいろと規格外の隠し球はもっとるやろからな。それより、アオイ達と一緒に眠っとった『数字付き(ナンバーズ)』はどの程度目覚めてるん?」


 レンの言葉に、エルは打ち上がる花火から視線を逸らさないままそう返すと、アオイが口を開く。


「現在、アインス様、ツヴァイ様、フィーア様、フュンフ様の4名が既に目覚めておられます。しかし、体内のナノマシンが現在の魔法体系に適合するためのアップデートを行っている最中であるため、戦闘を行えるようになるのはもう少し先かと」


「そっか。まあ、まだ今はそれほど戦力が必要なわけや無いからええか。ただ、やつがこの世界に再び降臨する前には他6人を含めて戦えるようにしといてな」


「「御意」」


 そう返事を返した2人にエルがヒラヒラと手を振りながら「そんじゃ引き続き頼むで」と言葉を掛けると、次の瞬間には背後の2人は姿を消していた。


「さて、ウチが囚われていた裏世界にあの2人が侵入できへんかったのは予想外やったが、おかげで想像以上の巡り合わせがあったんは怪我の功名やったな。ただ、あれは完全にイリアが見た未来に存在したアイリスとは別もんやし、そうなってくるとこれからの計画もどう進めるべきか迷うところやな」


 腕を組みながら、それでも花火から視線を逸らさないままエルはそう呟く。


「まあ、でもあの肉体には既にアイリと言う別の魂が入り込んでいるから、イリアがあの肉体を依り代にこっちの世界に戻るのはかなり難しいやろう。そうなると、上手く行けばあの戦闘力をこちらの戦力として活用できるかも知れへんし、どうやらツキが回ってきたみたいやな」


 エルがそう告げた直後、最後の一番大きな花火が夜空を明るく染め、やがて王都の夜空に夜の静けさが戻って来る。


「さて、あとは要がどちらに付くか分からんが、世界の調律者であるプロメテウスとしての役目を担っている以上、余計な手出しはしてこんやろ。そうなると、不安要素は他残り9柱の『十二使徒(アポストル)』がどう動くかだけやな」


 そう告げながらエルは腰を上げると、そのまま屋根の端に向かって歩き始める。


「ククク、女神アルテミスとしてイリアはこの世界を支配するつもりなんだろうが、そう上手く行くと思うなよ。この世界を真に支配するのは、イリアでも要でも無くこの紗夜花様なんだから」


 普段のエルからは想像出来ない低く威厳のある口調でそう告げると、そのままその姿は屋根裏部屋へと消えていく。

 そして、先程までの密会が嘘のような静けさが辺りを支配するのだった。

 これにて第2章『機械仕掛けの神』編は終了となります!

 私の拙い技術で紡がれた物語にここまでお付き合いいただきありがとうございました!


 さて、これからはこの世界の成り立ちに関わった存在による様々な駆け引きと、それに伴う様々な事件にアイリス達が巻き込まれていく、と言った形で物語が進んで行く予定となっています。

 本当は、かなり細かいところまで書いていくとあと8章くらい完結まで掛る予定ではあるのですが、恐らくそこまで体力が持たないのであと2章くらいでどうにか話を完結させたいと考えています!

 ただ、他にも書きたい物語がいくつかあるのでそちらを先に書くか、それとも優先してこの物語を終わらせるか考えるため、もしかしたら次の更新はもうしばらく先になるかも知れませんが、それでも引き続きこのアイリスの物語にお付き合い頂ければ幸いです。


 それでは最後になりますが、ブックマークや評価で私のモチベーション維持にご協力頂いた数多くの皆様に最大限の感謝の気持ちを胸に、ここで一旦筆を置かせて頂きたいと思います。

 本当に、ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました!

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