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黒の聖女と白銀の騎士  作者: 赤葉響谷
第2章 『機械仕掛けの神』編
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第14話 奇妙な出会い

 音が聞こえた方向に向かって歩き始めて少ししたところで私はその音の発生源を発見することができた。

 と言うか、見ず知らずの兄妹(150中盤くらいの背丈で短髪の中性的な顔立ちをした中学生くらいの子と、私とさほど背丈が変わらない肩の下辺りまで髪を伸ばして40cmくらいの大きいパンダのぬいぐるみを抱き抱えた小学生くらいの子)が5人ほどの黒い軍服のような服を着た男達に囲まれており、男達は拳銃をその兄妹向けて構えていたのだ。

 だが、そんな異様な光景を前に、私が真っ先に気を取られたのはその兄妹の髪色だった。


(私と同じ白銀の髪色だ! でも、大きい子の方は光の角度で若干赤っぽく見えて、小さい子の方は青っぽく見えるから微妙に私とは違う、かな)


 そんなことに気を取られている隙に兄妹を囲む男達の1人が再び拳銃を発砲し、それと同時に一瞬だけ炎が兄妹を守るようにドーム状に展開されたあと、拳銃の弾がその炎のドームを貫通しなかったことを示すように無傷の兄妹が姿を現す。

 だが、恐らく先程の魔法を発動させたと思われる大きい方の子はフラリと体勢を崩し、その場に片膝を付いてしまう。


「お姉ちゃん!?」


「大…丈夫。少し、ふらついただけ、だから」


 後ろにいる小さい方の子にそう声を掛けられた少女(姉と言うことは兄妹ではなく姉妹なのだとさっきの会話で悟った)はそう答えたが、恐らくあの感じはさっき発動した魔法で魔力切れを起こしているのだろう。


「諦めろ。既に限界なのだろ? 大人しくそいつを渡せ。それに、お前も大人しく実験室に戻るのであれば命だけは保証してやる」


 男達の中心に立つ1人がそう言いながら後ろの妹ちゃんを指差すが、お姉ちゃんは鋭い視線を男に向けながら「嫌だね!」と声を張り上げると、フラフラとよろめきながらも立ち上がり、後ろにいる妹ちゃんを守るように両手を広げながら言葉を続ける。


「どうせお前達に大人しく従ったところで、今までのようにあたし達を兵器にするための痛く苦しい実験を続けさせるだけなんだろ!? そんな生活に戻るくらいなら、ここであんた達と戦って死んだ方がマシだ!!」


 そこまで告げたところで、お姉さんは後ろ振り返ること無く「ここは私が引き留めるから、レンは先に逃げて!」と、後ろの妹ちゃん(レンちゃんと言う名前らしい)にそう叫ぶ。


「でも!」


「良いから! あたしも、こいつらやっつけたら直ぐに追掛けるから!」


 お姉ちゃんにそう言われてレンちゃんは迷うような表情を浮かべていたが、突如どこかからか聞こえてきた「迷ぉてる暇はあれへん! はよしぃひんと手遅れになるぞ!」と言う謎の少女のような甲高い声を聞き、ぐっと唇を堅く結びながらお姉ちゃんに背を向けて走り出す。


「逃げられると思っているのか?」


 だが、そんな彼女達の悲痛の決断をあざ笑うように男1人がそう告げると、レンちゃんの進行方向に2体のロボット(170cm程度の人型)が立ち塞がる。


「なっ!? 擬神兵まで連れて来てるのかよ!」


 背後を振り返りながらお姉ちゃんがそう言葉を発するの同時、再び火薬の弾ける音が響き渡る。

 そして、今度は先程のように炎のドームが出現すること無く、拳銃から放たれた弾丸はお姉ちゃんの右足を貫き、その衝撃と痛みでバランスを崩したお姉ちゃんはその場に倒れ込んでしまった。


「お姉ちゃん!?」


「ばっ!? 止まったらアカン!」


 更に、発砲音に振り返ったレンちゃんがその場で足を止め、再び謎の声が響いたと同時に2体のロボットがレンちゃんに襲いかかる。

 だが、事態に着いてけずにただ呆然と成り行きを見守っていた私もそこでようやく『とりあえず助けないと!』と言う考えが頭に浮かび、『空間転移(ディメンションムーブ)』でレンちゃんとロボットの間に割って入ると、神刀『三日月』を取り出す暇の無かったのでそのままロボットを殴り飛ばす。


「なっ!? キサマ、いったいどこから――」


 突然の侵入者に動揺しながらも、男達は直ぐさま私に向かって銃を構えようとするが、正直私にとってはその動きは呆れるほど遅すぎる。

 そのため、一息で男達と距離を詰めた私は流れるような動きで次々と男達に一撃を打ち込み、一瞬にしてその意識を奪い取って行く。

 そうして5人全員を気絶させたころ、先程殴り飛ばしたロボットが明らかに戦闘形態のような格好に変形しながらこちらに向かって来ていたが、先の一撃で大した強さでないことを察した私は素早く『聖なる矢(ホーリーアロー)』を発動させ、2体のロボットの頭と胸(大抵こう言った人型のロボットは動くための重要な部分がそのどちらかに収納されているイメージがあった)を撃ち抜き、軽く爆発を起こしながら動作を止めたことを確認して一息つく。

 そして、いったん落ち着いたところで私の心に浮かんでいたのは猛烈な不安の感情だった。


(ど、どうしよう! 思わず感情に任せて助けちゃったけど、これで良かったんだよね!? 流石に、実はこの姉妹が悪の組織の幹部とか、世界を滅ぼす力を持った危険人物、なんてことは無いよね!? 若干、この軍服っぽい服を着てる人達がこの世界の警官のような治安維持をする組織の人達っぽい気もするけど、こんな幼い姉妹を集団で襲うような人達は倒すべき悪役で間違い無いよね!?)


 そんな不安が次々に頭の中に浮かんでくるが、もはや動いてしまった以上どうしようないので必死に『幼い姉妹を助けるのは人として当然のこと! 私は何も間違ったことはしていない!』と自身に言い聞かせながら、突然の事態に呆気にとられて固まっている姉妹の下へと歩み寄る。


「ええと……いろいろと混乱してるだろけど、とりあえず――」


 そう言いながら私は『回復魔法(ヒール)』を発動させてお姉ちゃんの足の傷を癒やし、驚きで言葉を失う姉妹に「あの…ここにいると、さっきの奴等の仲間が来るかも。だから……ええと、場所を移しても良い、かな?」と尋ねる。

 すると、姉妹は戸惑いの表情を浮かべながら視線を交わし、やがてこちらに視線を戻すと無言で肯きを返してくれた。


 そして、私はとりあえず2人の見た目を『幻影魔法(イリュージョン)』で今の私と同じ黒髪黒目に偽装し、今着ている病院で着るような服では目立つので『収納空間(アイテムボックス)』から2人分の服(ほとんど効果を持たない布製の鎧ではあるのだが)を取り出し『道具錬成(アイテムクリエイト)』ここまで辿り着くまでに見たスーツ以外のこの世界での一般的な服装(モヒカン軍団が着ていた革のジャケットではない)に作り替えると2人に渡して木陰で着替えてもらった。

 その後、所々に設置されている監視カメラを警戒しながらも人気の無いある程度落ち着いて話ができる場所を求めてしばらくの間無言で歩き続けることになるのだが、姉妹は特に私に文句を言うことなく黙って後ろを付いて来てくれた。

 そうやって30分ほど歩いたところで大きな川の近くに辿り着き、丁度近くにベンチとテーブルが設置されているのに加え、周囲に人の姿も無かったのでそこで話をすることを決めた。


「ええと……先ずは、自己紹介をしましょう。私の名前は、アイリ…です」


 一瞬、『この世界の名前が日本に近いのか西洋に近いのか分からないから、先に2人の名前を聞いておけば良かった』と後悔しながら、とりあえずどちらとも取れる前世の名前を名乗る。


「……アオイ、です」


「……レン」


 2人は未だ私対して警戒の色を浮かべたままそう名乗る。

 そして、なぜかレンちゃんは抱きかかえていたパンダのぬいぐるみをテーブルの上に抱え上げると、驚くべきことにそのパンダのぬいぐるみは自身の二本の足でテーブルにしっかりと立ち、そのままポンと右手を胸に当てながら先程聞こえた謎の声と同じ声色で喋りだした。


「そんで、ウチがさ…エルや!」


 予想外の事態に、私はポカンと呆けた表情を浮かべながら言葉を失ってしまう。

 だが、そんな私などお構いなしにエルと名乗ったパンダのぬいぐるみは言葉を続ける。


「それにしても、どうしてあんたは魔法を使えたん? 見た感じ、普通の日本人に見えるんやけど」


 そう言いながらエルは私を観察するような視線を送ってくるが、今の私にはそんなことをはどうでも良かった。


「何でパンダのぬいぐるみが関西弁を喋るの!?」


 思わずそう声を上げると、なぜかエルは胸を張りながら「チッチッチッ、関西弁ちゃうで。これはただ関西弁っぽく喋っとるだけで、ウチは普通に東京生まれの東京育ちやからただのエセ関西弁や!」と謎の訂正を入れてくる。


「え? 何でわざわざ関西弁っぽく喋るの!?」


「だって、漫画やゲームでは関西弁で喋るキャラって基本的に強キャラやん。だから、主役級の器やないウチが存在感出すためにはこうやって口調でキャラを引き立てる必要があるやろ?」


「そうかなぁ。どちらかと言うと序盤や中盤で裏切るキャラとか、最初は強キャラだけど後半ボスキャラの強さを引き立てるために噛ませにされるキャラが多い気がするけどなぁ」


 ポカンとした表情を浮かべて私達のやり取りを見ている姉妹を置いてきぼりにしてそんな会話を交わしたところで、ハッと重要な言葉に気付いた私は慌てて再度口を開いた。


「ちょっと待って! 今、東京って言った!? それに、最初に私の見た目を日本人っぽいって言ったし、関西弁って言葉が分かるってことは、もしかしてここって日本なの!?」


「はぁ? あんた、何当たり前の事きぃとるん?」


 呆れたような口調でエルはそう告げるが、ふとその右手を顎に当てながら何か考えるような仕草を見せた後、何かに気付いたのか腕を組むと声色を真面目なトーンに変えながら再び言葉を発する。


「……よう考えれば、初めてここまで進んで来たとは言え、ここはウチの記憶から再現された世界である以上アイリのような存在がいるはずが無いわな。あんた、いったい何者や?」


 エルの真剣な口調に、姉妹も警戒の視線を強めながら私に視線を送ってくる。

 そのため、私は何と答えて良いものか必死に思考を回転させ、ここは下手に嘘つくと後々拗れることを察し、ある程度本当のことを話ながら話をぼかすことにする。


「実は私、転生者なんです」


「はぁ? 転生者!?」


 『こいついきなり何言ってんだ?』と言う感情がはっきりと分かる口調でエルはそう告げるが、私は構わず話を続ける。

 そして、日本で平凡な人生を送っていた私が異世界に転生したこと、それからいろいろとあって強大な力を手に入れる事になったこと、とある遺跡の調査中にここに迷い込んだことを簡単に説明していく。

 その後、とても信じられないと言う表情を浮かべる姉妹の視線に居心地の悪さを覚えながら、腕を組んだまま俯いて何かを考え込んでしまったエルが言葉を発するのを黙って待つことになるのだった。

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